授業ノート-解剖生理学08
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-LESSON1 呼吸-
●呼吸器系:空気と血液との間でガス交換を行なうための系統です。
 ・細胞には好気的代謝と嫌気的代謝があり、主に好気的代謝でエネルギーを獲得します。

●呼吸とは
 生体が生命維持のために、(1)外界から酸素を取り込み、(2)組織細胞でエネルギー産生に利用し、(3)エネルギー代謝の副産物である炭酸ガスを体外に排出する過程です。
 1.外呼吸(肺呼吸):肺における、大気と血液との間のガス交換です。
 2.内呼吸(細胞呼吸):体内における、組織細胞と血液との間のガス交換です。

●構造と仕組み:胸郭と横隔膜の運動で肺胞が膨らむことにより、外気を肺胞に取り込みます。
呼吸器系
上部呼吸器系 上気道 気道
鼻腔 外鼻孔
鼻前庭
上・中・下鼻道
副鼻腔 上顎洞
前頭洞
篩骨洞
蝶形骨洞
咽頭 咽頭鼻部
咽頭口部
咽頭喉頭部
喉頭 下部呼吸器系
気管 下気道
気管支 主気管支(1次気管支)
葉気管支(2次気管支)
区域気管支(3次気管支)
細気管支
呼吸細気管支 終末細気管支
肺胞

●気道上皮
 ・咽頭の下部、細気管支、肺胞を除く気道全域は、多列線毛上皮からなります。
 ・粘液腺と杯細胞(さかずきさいぼう)によって粘液を産生します。
   →上皮を潤わせ、ゴミや病原体を付着させます。
 ・上部呼吸器系では付着したものを消化器系へ送ります。
 ・下部呼吸器系では付着したものを線毛の運動によって咽頭へ運びます。
-LESSON2 上部呼吸器系-
●上部呼吸器系は空気を浄化、加温、加湿します。

1.鼻腔
 (1)外鼻孔:外鼻孔から入った空気は鼻腔に達します。
 (2)鼻前庭:鼻腔の入り口で、毛があり、異物の侵入を防ぎます。
 (3)鼻中隔:鼻腔を左右に2分し、鼻背と鼻尖を支持します。
 (4)鼻甲介と鼻道:上・中・下鼻甲介は上・中・下鼻道を形成し、吸気を加温・過湿します。

2.副鼻腔
 (1)上顎洞:上顎骨にある空間で、中鼻道に抜けます。
 (2)前頭洞:前頭骨にある空間で、中鼻道に抜けます。
 (3)篩骨洞:篩骨にある空間で、上・中鼻道に抜けます。
 (4)蝶形骨洞:蝶形骨にある空間で、下鼻道に抜けます。

3.咽頭
 (1)咽頭鼻部:後鼻孔と接する部分で、軟口蓋によって口腔と隔てられています。
 (2)咽頭口部:咽頭鼻部・口腔後方とつながっています。
   ・咽頭鼻部との境界部で気道上皮から口腔上皮に変わります。
   ・口蓋垂付近から2対の口蓋弓があり、その間に口蓋扁桃が存在します。
 (3)咽頭喉頭部:舌骨と食道入口部との間です。
-LESSON3 下部呼吸器系-
1.喉頭
 (1)喉頭の構造
  ・第4、5〜第7頸椎の高さにあり、声門を取り囲み保護しています。
  ・3つの軟骨(喉頭軟骨)により形成され、靱帯や骨格筋により支えられます。
 (2)喉頭軟骨
  ・甲状軟骨:裏側に声帯があります。
  ・輪状軟骨
  ・喉頭蓋軟骨:気道に液体や食塊が入らないようにします。
 (3)喉頭筋:外喉頭筋群と内喉頭筋群があります。
  ・内喉頭筋群の役割
   a.声門ヒダの制御:輪状甲状筋、甲状披裂筋
   b.声門の開閉:外側輪状披裂筋、後輪状披裂筋、横披裂筋、斜披裂筋
   c.喉頭の入口の閉鎖:披裂喉頭蓋筋

2.気管
 ・直径2.5cm、長さ11cmですが、交感神経が興奮すると内径が大きくなります。
 ・第6頸椎の前方から始まり、第5胸椎の高さで左右に分岐します。
 ・肺胞までに合計23回分岐します。
 ・内面は多列線毛円柱上皮です。
 ・気管軟骨が輪状靱帯でつながって、気管を補強しています。

3.気管支
 (1)主気管支
  ・気管から左右に分岐後、主気管支となって肺に入ります。肺外気管支ともいわれます。
  ・右気管支は左気管支より直径が大きく、より急激な傾斜で肺に向かいます。
   ※このため、気管内異物は、左より右主気管支へ入りやすくなっています。
 (2)肺門
  ・主気管支、肺動静脈、気管支動静脈、リンパ管、神経が肺に出入りする部分です。
 (3)肺根
  ・気管支、脈管、神経などが全体として結合組織で包まれて束状になったものです。
  ・肺根が肺門に入るのは、右が第5胸椎、左が第6胸椎の高さにあります。

4.肺
 (1)肺について
  ・胸腔内にあり、先が鈍な円錐状をしています。
  ・上方の先端部分を肺尖といい、第1肋骨の上方に位置します。
  ・肺の下面は肺底と呼ばれ、横隔膜上に載ります。
 (2)肺葉と葉気管支
  a.右肺
   ・斜裂と水平裂によって、上葉、中葉、下葉の3葉にわかれます。
   ・左肺より短く、幅があります。
   ・主気管支が、上葉気管支、中葉気管支、下葉気管支にそれぞれ分岐します。
  b.左肺
   ・斜裂によって、上葉、下葉の2葉にわかれます。
   ・右肺より長く、幅がありません。心臓や周囲の臓器などの圧迫による溝があります。
   ・主気管支が、上葉気管支、下葉気管支にそれぞれ分岐します。
 (3)肺区域と区域気管支
  ・右葉気管支は10本(上葉3、中葉2、下葉5)の区域気管支に分かれて、肺区域に分布します。
  ・左葉気管支は8〜10本(上葉3〜5、下葉5)の区域気管支に分かれて、肺区域に分布します。
 (4)呼吸細気管支:終末細気管支に肺胞がついたものです。
  a.終末細気管支
   ・粘膜上皮:クララ細胞(円柱状)、単層線毛立方上皮
   ・粘膜固有層:ラセン筋(平滑筋)
  b.肺胞:呼吸上皮細胞(単層扁平上皮細胞)によって、ガス交換を行ないます。
   ・肺胞管:肺胞への空気の通路で、肺胞に囲まれる壁の弾性線維、膠原線維、平滑筋に支えられています。
   ・肺胞前胞:肺胞嚢が肺胞管に開く部位です。
   ・肺胞嚢:2〜4個の肺胞からなる、肺の末端部です。
 (5)肺胞
  ・肺胞中隔:結合組織や血管を間質と呼び、その表面を呼吸上皮が覆った構造です。
  ・肺胞孔:肺胞中隔にある小孔で、隣り合う肺胞を連絡します。
  ・毛細血管:体内で最も密に存在し、呼吸上皮との間でガスが交換されます。
  ・肺胞上皮
 (6)肺胞上皮細胞
  a.呼吸上皮細胞(扁平肺胞上皮細胞、1型肺胞上皮細胞)
   ・薄く延びた細胞質で、毛細血管の内皮細胞を覆います。
    →両細胞の基底膜と細胞質を越えてガスを交換する、血液空気関門を形成します。
  b.大肺胞上皮細胞(2型肺胞上皮細胞)
   ・立方状の大型細胞で、層板小体をもち、表面活性剤を分泌して表面張力を低下させます。
    →この細胞(または表面活性剤)が欠乏すると呼吸困難症候群になります。
  c.肺胞大食細胞(塵埃細胞 じんあいさいぼう)
   ・空気中の小さなゴミを処理します。
-LESSON4 O2・CO2の輸送-
●酸素(O2)について
 1.空気(大気圧)は760mmHgで、そのうち酸素は159mmHg(空気の21%)含まれます。
  ※この状態を言い換えると、「大気中の酸素分圧が159mmHgある」と言います。
 2.159mmHgの酸素は、気管を通り、肺胞に入ったときには100mmHgまで減少します。
 3.肺胞から動脈血に取り込まれると、酸素は80〜90mmHgになります(動脈血酸素分圧,PaO2)。
 4.細胞内のミトコンドリアまで到達するときには、数mmHgまで減っています。
  ※すなわち、吸った酸素すべてを取り込めるわけではないということです。

●二酸化炭素(CO2)について
 ・ヒトの動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)は、約40mmHgを保っています。
 ・PaCO2が高値の場合、肺胞換気量が不足しているということを示します。

●輸送の原則
 1.酸素分圧の高いところから低いところへ
 2.二酸化炭素分圧の高いところから低いところへ
吸気(5)
↑→→ 肺胞(1) →→↓
右心(4) 左心(2)
↑← 細胞(3) ←←↓
 (1)肺動脈:O2分圧=159、CO2分圧=0.2(mmHg)
 (2)動脈血:O2分圧=97、CO2分圧=40(mmHg)
 (3)細胞呼吸(内呼吸):O2分圧<40、CO2分圧>46(mmHg)
 (4)静脈血:O2分圧=40、CO2分圧=46(mmHg)
 (5)吸気:O2分圧=100、CO2分圧=40(mmHg)
   ※(1)〜(5)は上表の(1)〜(5)の部分に対応。

●酸素解離曲線:酸素とヘモグロビンとの結合の程度(酸素飽和度)を示す曲線です。
 ・酸素は肺胞から毛細血管に入り、血液中のヘモグロビンと結合することで輸送されます。
  (いくら酸素を吸っても、ヘモグロビンと結合しないと意味がありません)
 ・ヘモグロビンは酸素分圧が高いほどよく結合し、低いほどよく解離します。
 ・酸素飽和度は、体温とpHの影響を受けて変化します。
酸素解離曲線(酸素飽和度)の主な数値
動脈血酸素分圧(動脈血の酸素の量, mmHg) 20 30 40 60 100
ヘモグロビン酸素飽和度(酸素と結合した率, %) 30 60 75 90 97.5

-LESSON5 呼吸の方法と調節-
●呼吸筋
 1.吸気筋
  ・外肋間筋:肋間神経支配、肋骨の挙上
  ・最内肋間筋:肋間神経支配、肋骨の挙上
  ・肋下筋:肋間神経支配、肋骨の挙上
  ・肋骨挙筋:第8頸神経〜第11胸神経後枝支配、肋骨の挙上
  ・上後鋸筋:第2〜5肋間神経支配、肋骨の挙上
  ・横隔膜:横隔神経支配、胸郭の縦径の増加
 2.呼気筋
  ・内肋間筋:肋間神経支配、肋骨の下制
  ・胸横筋:肋間神経支配、肋骨の下制
  ・下後鋸筋:第9〜12胸神経前枝支配、肋骨の下制

●呼吸法
 1.胸式呼吸
  ・浅くて速い呼吸の原因です。横隔膜はほとんど使わずに胸の呼吸筋を主に使います。
  ・胸のまわりの呼吸筋は肋骨の下にあるので、動かしにくく、肺もあまり膨らみません。
  ・胸部(肺)を横に広げるため、胸が圧迫され、周囲の筋肉が動かなくなり、血行が悪化します。
   ※浅い呼吸になり、酸素が脳や心臓に行き渡りにくくなります。

 2.横隔膜呼吸(腹式呼吸)
  ・息を吸うとき、横隔膜が下がり、おなかが出ます。
  ・息を吐くとき、横隔膜が上がり、おなかがへこみます。
  ・胸部(肺)を縦に広げるため、横隔膜が自律神経を刺激し、血行を促進します。
   ※内臓が活発化し、冷え性や肩こりなどが改善されます。

●ストレスと呼吸
 ストレスを感じると呼吸数が増加します。それが重なると過呼吸になります。
   →さらに、呼吸性アルカローシス、過換気症候群になります。

●呼吸の調節
 ・脳幹にある呼吸中枢のニューロン群から信号がきて調節されます。
 ・呼吸は通常、16〜20回/分です(新生児では40回/分)。
 ・血液中のCO2濃度が上昇すると、呼吸は深くなり、回数も増加します。
 ・化学的調節(頸動脈小体と大動脈小体の化学受容器によるもの)と反射性調節があります。
 ・ヘーリングブロイエル反射(自家調節反射):肺の拡張によって機械受容器が刺激され、吸息中枢を抑制します。
中枢性制御 1.上位中枢による制御:大脳皮質の随意的な呼吸運動の制御です。
2.体液性制御:間質液、脳脊髄液のpHによる換気の促通です。
(呼吸運動の制御) ・持続性吸息中枢:橋にあり、吸息中枢を促通します。
・呼吸調節中枢:橋にあり、呼息中枢を促通します。
・吸息中枢:延髄にあり、呼息中枢と相反的に働きます。
・呼息中枢:延髄にあり、吸息中枢と相反的に働きます。
末梢性制御 3.固有感覚器による制御:頸動脈小体と大動脈小体による呼吸の促通です。

-LESSON6 呼吸スパイログラム-
スパイログラム
全肺気量(TLC) 肺活量(VC) 最大吸気量(IC) 予備吸気量(IRV) :最大吸気レベル
1回換気量(TV) :安静呼気位
機能的残気量(FRC) 予備呼気量(ERV) :最大呼気レベル
残気量(RV)
●スパイログラムの見方
 1.基礎的気量:表の赤字の部分です。すべて、V(volume)であらわします。
  ・1回換気量(TV, tidal volume):安静時の1回の呼吸量です(500ml)。
  ・予備吸気量(IRV, inspiratory reserve volume):安静吸気レベルからさらに吸入しうるガス量です。
  ・予備呼気量(ERV, expiratory reserve volume):安静呼気レベルからさらに吸入しうるガス量です。
  ・残気量(RV, residual volume):最大呼気レベルで肺中に残存するガス量です。
   ※残気量は、肺がしぼまないように圧をかけるための空気です。

 2.二つ以上のvolumeを含む項目:すべて、C(capacity)であらわします。
  ・最大吸気量(IC, inspiratory capacity):安静呼気レベルから、最大に吸入されるガス量です。
  ・機能的残気量(FRC, functional residual capacity):安静呼気レベルで肺中に残存するガス量です。
  ・肺活量(VC, vital capacity):最大吸気レベルから強制努力で肺から呼出できるガス量です。
   ※肺活量は、座位に比べて臥位では7%減少します。
  ・全肺気量(TLC, total lung capacity):最大吸気レベルで肺中に含まれる全ガス量です。

●死腔(約150ml):気道の容積分です。
 ・肺胞換気量(約350ml) = 1回換気量(約500ml) − 死腔(約150ml)
 ・死腔は気道の容積なので、最大吸気を行なったりしても変動しません。

●残気率 = 残気量 ÷ 全肺気量
 ・全肺気量に対する残気量の割合で、呼吸の効率を示します。
 ・35%以下が正常値です(60歳以上では、40%以下が正常)。

●1分換気量 = (1回換気量 − 死腔量) × 1分間の呼吸数
 1.浅くて速い呼吸:死腔換気量が増え、呼吸が苦しくなります。
  ※例えば、1回換気量300ml、呼吸数20/minの場合、
   肺胞換気量は、(300ml−150ml)×20回=3000mlとなります。

 2.深くてゆっくりした呼吸:肺胞換気量が増え、呼吸が楽になります。
  ※例えば、1回換気量600ml、呼吸数10/minの場合、
   肺胞換気量は、(600ml−150ml)×10回=4500mlとなります。
-LESSON7 呼吸障害・疾患の指標-
●指標
 1.比肺活量
  ・肺活量の予測値に対する、実際の測定量の割合(測定値 ÷ 予測値)です。
   ※肺活量予測値は年齢と身長で決定されます。
  ・正常値は75〜80%で、50%以下では開胸手術が適応とされます。

 2.1秒率
  ・肺活量に対する、1秒間で吐き出される量の割合です。
  ・正常値は、75%以上です(年齢に伴なって低下します)。

●閉塞性障害と拘束性障害
 1.閉塞性障害:1秒率が70%以下の場合。
  ・炎症などで気管が狭くなって、呼気しづらい状態です。
  ・原因疾患:気管支喘息、慢性気管支炎、肺気腫など。

 2.拘束性障害:比肺活量が80%以下の場合。
  ・肺の容積が減少した状態です。
  ・肺や胸郭の動き(コンプライアンス)の低下が考えられます。
  ・原因疾患:肺線維症、胸郭の変形(漏斗胸・側彎症など)、脊髄損傷など。
閉塞性障害と拘束性障害の判別
(比肺活量)
80%以上 閉塞性障害 正常
80%以下 閉塞性(混合性)障害 拘束性障害
0% 70%以下 70%以上 (1秒率)