授業ノート-病理学06
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-LESSON1 腫瘍とは-
●腫瘍(tumor)とは
 細胞・組織が、
  1.自律的
  2.非可逆的
  3.無秩序な過剰増殖
 を示すようになった状態をいいます。

●腫瘍の組織構造
 ・実質:腫瘍細胞そのものをさします。
 ・間質:腫瘍細胞周辺の結合組織をさします。

●腫瘍の分類
 腫瘍は由来によって上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍に、生体に及ぼす影響の大小によって良性腫瘍と悪性腫瘍に分けられます。
腫瘍(tumor)の分類
良性腫瘍 悪性腫瘍(癌:cancer)
上皮性 上皮性良性腫瘍 上皮性悪性腫瘍(癌腫:carcinoma)
非上皮性 非上皮性良性腫瘍 非上皮性悪性腫瘍(肉腫:sarcoma)
混合性 混合性良性腫瘍 混合性悪性腫瘍

良性腫瘍と悪性腫瘍
良性腫瘍 悪性腫瘍
発育形式 膨張性 浸潤性
発育速度 遅い 速い
転移 少ない 多い
再発 少ない 多い
宿主への影響 少ない 著しい
脱分化(異形成) 弱い 強い
予後 良好 不良

●腫瘍マーカー
 腫瘍マーカーは腫瘍の増殖に伴なって血中に出現します。良性、悪性の判別はできませんが、免疫グロブリン、胎児性蛋白、ホルモン、酵素、ウイルス抗原、癌関連抗原などがあり、これらを測定することで診断の助けとなります。
-LESSON2 腫瘍の発生とその原因-
●腫瘍発生の要因
 (外因)
  1.物理的因子:機械的刺激、放射線、紫外線
  2.化学的因子:タール、有機系薬剤
  3.生物学的因子:パピローマウイルス(子宮頸癌)、成人T細胞白血病ウイルス、EBウイルス(バーキットリンパ腫)
 (内因)
  1.素因:人種、性、年齢、臓器別
  2.遺伝:遺伝が明白なもの(家族性大腸ポリポーシス、フォンレックリングハウゼン病)
  3.ホルモン:女性ホルモン(乳癌、子宮癌)、男性ホルモン(前立腺癌)

●発生機序(Berenblumの二段階説)
 1.イニシエーション:イニシエーターが働き、核(DNA)を損傷します。
 2.プロモーション:プロモーターにより、癌が発生します。
 3.プログレッション:癌細胞が増殖します。

●腫瘍の発育
 1.連続性:周辺組織への増殖
  ・膨張性発育:腫瘍細胞が周囲の組織を押し分けるように増殖する形式です。
  ・浸潤性発育:腫瘍細胞が周囲の組織の間にしみ込むように増殖する形式です。
 2.非連続性:遠隔組織への増殖
  ・転移:遠隔の臓器・組織に新たな腫瘍病巣を形成する現象です。

●転移の進展
 1.播種性転移:体腔内の組織液をただよい、種子をまいたように点々と広がります。
 2.リンパ行性転移:リンパ節への転移です。
 3.血行性転移:肺、肝臓、骨(骨髄)など、血流の多いところへ起こりやすくなっています。
 4.管内性転移:気管、尿管におこります。
 5.接触性転移

●TNM分類:癌の程度の表現
 ・T(Tumor,0〜4度):原発病巣の大きさ
 ・N(Node,0〜4度):所属リンパ節への転移
 ・M(Metastasis,0〜1度):遠隔臓器への転移
TNM分類
T N M 予後
stageI T1,T2 N0,N1 M0 予後良好
stageII T1〜T3 N0〜N2 M0
stageIII T2〜T4 N0〜N2 M0 予後不良
stageIV T4 N2 M0,M1

-LESSON3 腫瘍の組織学的分類-
●上皮性良性腫瘍
 1.乳頭腫:乳頭状の腫瘍です。(被覆上皮:皮膚、口腔、咽頭、食道)
 2.腺種:腺管構造をとり、ポリープともいいます。(腺上皮:唾液腺、甲状腺、乳腺、胃、大腸、卵巣)

●上皮性悪性腫瘍(癌腫):癌の発生した臓器名をつけます(胃癌、肺癌など)。
 1.扁平上皮癌(SCC):扁平上皮由来の腫瘍です。
 2.腺癌:腺由来、腺管構造を示し、粘液が見られるものです。
 3.未分化癌(退行性癌):分化を示さない未熟な細胞からなるものです。

●非上皮性腫瘍
非上皮性癌
非上皮性良性腫瘍 非上皮性悪性腫瘍(肉腫)
線維組織由来 線維腫 線維肉腫
脂肪組織由来 脂肪腫 脂肪肉腫
筋肉組織由来 平滑筋腫 平滑筋肉腫
横紋筋腫 横紋筋肉腫
脈管由来 血管腫 血管肉腫
リンパ管由来 リンパ管腫 リンパ管肉腫
軟骨組織由来 軟骨腫 軟骨肉腫
骨組織由来 骨腫 骨肉腫

●特殊腫瘍
 1.造血器系腫瘍
  ・白血病:未分化な白血球・リンパ球の増殖します(骨髄性白血病、リンパ性白血病)。
  ・骨髄腫:形質細胞(抗体産生細胞)の増加です。
  ・悪性リンパ腫:リンパ球そのものの増加です。
 2.神経系腫瘍
  ・中枢神経:脳、脊髄、髄膜におこります。
  ・末梢神経:神経節、神経線維におこります。
 3.メラニン組織の腫瘍
  ・良性:色素性母斑といいます。
  ・悪性:悪性黒色腫といいます。