授業ノート-病理学05
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-LESSON1 炎症とは-
●炎症とは
 傷害性の刺激(侵襲)に対する防衛反応のことです。
 形態学的には、次の3点の総和の形で表現されます。
 1.退行性変化:起炎刺激による細胞や組織の傷害がおこります。
 2.循環障害と滲出
  ・循環障害:微小循環系の動脈性充血(細動脈、毛細血管)に始まり、静脈性充血に及びます。
  ・滲出:血管壁の透過性が亢進して、血液成分が血管外へ出ることです(滲出物=膿)。
 3.細胞・組織増殖:組織の傷害、循環障害・滲出に続いて、増殖・修復・再生が起こります。

●炎症の原因
 1.病原微生物:細菌、真菌、原虫、ウイルス、リケッチア、クラミジア
 2.物理的刺激:機械的刺激、温熱、寒冷、電気、放射線
 3.化学的刺激:有機物質、無機物質

●炎症の過程:多くのケミカルメディエーター(化学的伝達物質)が関係しています。
 1.侵襲
 2.血管拡張:侵襲された部分に栄養を送るため拡張します。
 3.内皮細胞収縮、血管透過性亢進:ケミカルメディエーターによっておこります。
 4.滲出
 5.浮腫

●炎症の5大徴候
 1.疼痛:充血や浮腫によるもの、疼痛性起炎物質(ブラジキニン)などによるもの。
 2.腫脹:滲出と組織浮腫による。
 3.発赤:充血(血流の増加)による。
 4.発熱:充血(血流の増加)による。
 5.機能障害:腫脹と疼痛による。

●炎症に関与する細胞(「解剖生理04-白血球」参照)
 ・好中球:リソソーム(分解酵素)を多く持ち、抗原・異物を貪食します。
 ・好酸球:蛋白を出して寄生虫を傷害します。また、アレルギー反応も引き起こします。
 ・好塩基球(肥満細胞):ヒスタミンなどを放出し、即時型のアレルギー反応を引き起こします。
 ・単球:免疫性貪食とともに、抗原提示を行ないます。血管外ではマクロファージに変化します。
 ・リンパ球:免疫の抗原抗体作用を担います。T細胞は細胞性、B細胞は液性免疫に関与します。
ケミカルメディエーター(化学的伝達物質)の発生源と機能
(ケミカルメディエーター) (発生源) (血管拡張) (透過性亢進)
ヒスタミン 好塩基球
セロトニン 血小板
ブラジキニン 血漿
アナフィラトキシン 血漿
プロスタグランジン 白血球
ロイコトリエン 好塩基球、好酸球

-LESSON2 炎症の分類-
●変質性炎:刺激に対して退行性変化の目立つものです。

●滲出性炎:滲出を主とする炎症です。
 1.繊維素性炎:繊維素(フィブリン)を滲出物に含む場合です。
 2.化膿性炎:好中球が多く滲出するものです。
  ・膿瘍:好中球が限局的に集まり、変性・壊死したものです。
  ・蜂窩織炎 ほうかしきえん:好中球がびまん性(全体的)に存在するものです。
  ・蓄膿症:好中球が腔内に貯留したものです。
 3.出血性炎:赤血球を多く滲出した場合です。
 4.壊疽性炎 えそせいえん:組織の壊死が目立つ場合です。

●増殖炎:増殖性病変の強い炎症のことをいいます。

●肉芽腫性炎:肉芽腫を形成する炎症です。
 1.結核:乾酪壊死(結核の壊死)がおき、結核結節を形成します。
  ・増殖性結核:生体の防衛力が菌力より大きい場合で、結核病巣は鎮静化します。
  ・滲出性結核:生体の防衛力が菌力より小さい場合で、病巣は拡大します。
 2.梅毒:スピロヘータによって引き起こされ、弾性のある肉芽腫を形成します。
 3.サルコイドーシス(類肉腫症)

●アレルギー性炎:反応までの時間によって即時型と遅延型に分けられます。
 ・即時型:フィブリノイド変性など、滲出性炎による組織変化がおこります。
 ・遅延型:細胞性免疫反応が主体です。
-LESSON3 免疫とアレルギー-
●免疫(「解剖生理学04-免疫とアレルギー」参照)
 1.免疫の機能
  ・認識:自己か非自己かを区別します。
  ・排除:非自己(抗原)を排除します。
  ・記憶:一度体内に入った抗原を記憶します。
 2.細胞性免疫:細胞主体の免疫作用で、Tリンパ球、マクロファージが直接異物を攻撃します。
 3.液性免疫:Bリンパ球の産生する、免疫グロブリンが主体となって異物を排除します。
  ・完全抗原:それ自体が抗原となるものです。
  ・不完全抗原(ハプテン):蛋白と結合することで抗原となるものです。
   ※免疫グロブリン(γグロブリン)は、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEの5種類があります。

●免疫に関与する細胞(「解剖生理04-白血球」参照)
 1.幹細胞:T、B細胞(リンパ球)の源です。
 2.T細胞(リンパ球):抗体産生の調節と、細胞性免疫を行ないます。
  ・ヘルパーT細胞:抗原により活性化して、他のリンパ球(T、B細胞)の活性化をします。
  ・サプレッサーT細胞:他のリンパ球の働きを抑制します。
  ・キラーT細胞:抗原を攻撃します。
 3.B細胞(リンパ球):分化して形質細胞となり、各種の免疫グロブリンを産生・分泌します。
 4.ナチュラルキラー(NK)細胞:原始的な生体防衛機構に関係し、傷害性を持ちます。
 5.マクロファージ:貪食を行ない、リンパ球に抗原提示を行ないます。

●サイトカイン:細胞を活性化させる因子の総称です。
 ・糖タンパクが主体で、リンパ球やマクロファージなどから産生、放出されます。
  ※例:インターロイキン(IL)、インターフェロン(IFN)、抗腫瘍因子(TNF)
 ・リンホカイン:サイトカインのうち、リンパ球によって作られるものです。

●アレルギー(「解剖生理04-免疫とアレルギー」参照)
 免疫反応が生体にとって不利に働き、組織が傷害される反応です。主に免疫グロブリンによって引き起こされます。
 1.I型アレルギー:抗体によって引き起こされる反応です。(例)アナフィラキシーショック
 2.II型アレルギー:自己の細胞が非自己として認識され、攻撃されてしまいます。
 3.III型アレルギー:抗原抗体結合物(免疫複合体)が血管壁などに付着して炎症を起こし、組織を傷害します。
 4.IV型アレルギー(遅延型アレルギー):主にTリンパ球によって引き起こされ、免疫グロブリンは関与しません。
-LESSON4 感染と感染症-
●感染(「病理学01-病因論(外因)」参照)
 微生物が体内に侵入して、定着・増殖することです。
 1.細菌:外毒素(細菌が放出する毒素)と内毒素(菌体内に含まれる毒素)があります。
 2.ウイルス:核酸蛋白からなり、細胞の核内(DNA、RNA)で増殖します。
 3.真菌(カビ):表在性(皮膚に限局するもの)と、深在性(臓器をおかす場合)真菌症があります。
 4.原虫(単細胞からなる、アメーバなどの動物)
 5.リケッチア(ウイルスより大きく細菌より小さい微生物)
 6.マイコプラズマ(ウイルスと細菌の中間にあたり、細胞壁のない微生物)
 7.クラミジア(ウイルスとリケッチアの中間の微生物)
 8.プリオン病(プリオン蛋白が病因となり、脳が萎縮・海綿状となる)

●ちょっと整理。
  ・大きさ: 細菌 > リケッチア、マイコプラズマ > クラミジア > ウイルス
  ・抗生物質は細菌に効くが、ウイルスには効かない。
 こんな感じでしょうか?