二人の魔女(1)
昔々、はるか昔。
七つの海を越え、五つの大地の果て、三つの湖を渡った向こう、二つの山に囲まれた一つの国がありました。
ほんの小さな国ですから、当時の地図を見てもきっと見つけられないかもしれません。
この国を囲む二つの山には魔女が住んでおりました。
西の山には善いことをする『満月の魔女』。東の山には悪いことをする『新月の魔女』。
二人は双子の姉妹でしたが、たいそう仲が悪く、顔をあわせれば嫌な思いをするので、めったに会うこともありませんでした。
お互いに強い魔力を持っていましたので、二人の魔女が本気になって争いをしたら、間にはさまれた小さな王国は、巻き込まれて簡単に滅んでしまうことでしょう。
しかし、この国の王様はどちらの魔女も大切にして、新月と満月に祈りをささげておりました。
ですから魔女たちはたいそう気分を良くし、お互いを牽制し、争わなかったので、王国はとても平和でした。