星を見る人(8)


「父さんはね……。仕事が忙しくて、私が子供の頃は、ほとんど家にいなかったのよ。なのに老後はこんな……」
 と、母が横で呟き、涙を拭いた。
 ハイネは母の肩を抱き寄せた。もう、母よりも背が高い。
「でも、僕、おじいさんは幸せだったと思うよ」
 真実の闇に光るカプセルは宇宙船だ。散らばせた宝石のような星の海に船出して、今、見えなくなる。
 宇宙に漂ってゆく白い棺を見送りながら、ハイネは思った。
 やはり、トロゥは幸せな人生を送ったのだ。あの晩年ですら――
 少年時代の夢を叶え、宇宙に人生を費やしたトロゥ。

 ――おじいさんは、老いて少年時代の憧れを取り戻したんだ。


メモリー

〜終わり〜


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