星を見る人(7)


 トロゥの棺は、コロニー吹奏楽部の葬送行進曲に送られて、宇宙の闇を旅立ってゆく。宇宙葬は、トロゥという偉人に与えられた特別な葬儀である。家族も見送るために、普段は立ち入り禁止のコロニーの外側を向くスペースにいる。
 長い間、痴呆症であったとはいえ、トロゥの顔は穏やかだった。ハイネは棺の中に花を添えた。
 幼い頃、知ったかぶりなどせずに、トロゥの話を聞いてやればよかったと思う。世界なんて知らないふりをすればよかった。あれは、星だと嘘をつけばよかった。
 トロゥの棺がコロニーから吐き出された時、ハイネは初めて宇宙空間を見た。底の無い深い闇の向こうに、青白いオリオンの姿が見えた。

葬儀


 ――ああ、きれいだ。
 ハイネはそう思った。トロゥが憧れたものをはじめて知った。
 ――本物を望遠鏡で見せてもらいたかったなぁ。

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