星を見る人(5)


 ――宇宙に浮かぶ空き缶。

 それが若かりし頃、トロゥがたとえたスペース・コロニーの姿だった。
 現在は、そんな『空き缶』が7個ほど、地球の周りを回っている。
『空き缶』は、中央に貫かれた軸を中心に回転することで重力を生み出している。
 人々は、そんな『空き缶』の内側にへばりついて暮らしているのだ。

葬儀

 オタル・シティは、この『空き缶』……いや、スペース・コロニーのS極に近い位置にある。つまり、宇宙に飛び出すには一番近い場所にあるのだが、他のコロニーとの交易ステーションがあるN極の表玄関とは違って、科学省の小さな施設だけがある、いわば裏玄関だった。対岸の地には華やいだリゾート地もあるのだが、ここは寂れた田舎都市である。
 宇宙開発関係者以外の要人がこの地に集まるのは、コロニー・オープニング・セレモニー以来のことだろう。
 オタル・シティの一番大きなミーテング・ホールに、コロニー中の名ある人々が集まった。もちろん、コロニー対岸の人たちも多数出席している。
 若かりし頃のトロゥの功績を称え、大統領が演説をする。静かな空間に、もったいぶった咳払いがこだました。
「トロゥ・プリウス氏は、宇宙開発に多大な功績を残し、このコロニー建設にも携わった偉大なる人物です。そして、ふるさと地球を知る最後の人でもあったわけです。彼の死は、我ら人類の大いなる損失であり……」
 黒い衣装に身を包み、トロゥじいさんの遺影を抱えながら、ハイネは苦笑する。

 ――その偉大な人も歳をとり、すっかりもうろくしてしまったら、誰も見向きもしなかったくせに。よく言うよなぁ。


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