星を見る人(3)


 おじいさんの名前は、トロゥ・プリウス。
 かつては宇宙開発の仕事に携わったエリートである。リタイヤしてからは、このオタル・シティの田舎に引きこもり、少年時代のように夜な夜な星を見て過ごす日々が続いていた。
 望遠鏡は、今となっては骨董品物の屈折式。ものすごい価値がある品物だ。とはいえ、接眼部分が老人の目にはやや辛いサイズである。
 覗き疲れたのだろう、トロゥは望遠鏡から目を離し、ふと空を見上げて、腰を伸ばした。
 
その瞬間――。

ハイネとおじいさん3


「おお! 見たかい? ハイネや。今、流れ星が流れたよ」
 孫のハイネは、空を見上げることもしない。
「じいちゃん、それはねぇ。向こうの人たちの乗り物のライトなんだ」
 ハイネがため息交じりに返事をするのは、今のトロゥの悲鳴にも似た声で、ゲームをミスったからである。
「わしもおまえと同じ年齢の時はな、あの星には誰かが住んでいるのかと思ったこともあった。昔の人は星を線で結んでな、神様の姿を思い浮かべたものさ。だがな、星というのは、実はガスが燃えているものなんだよ」
 そんなことなんか知っているさ……と言いたかった。
 が、ハイネは言葉を飲み込んで、ゲームの中であとひとつ残った命を失わないように意識を集中させた。

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