星を見る人(2)
「ほら、ハイネや。見てごらん。これはオリオン大星雲といってなぁ」
ゲームは、ちょうどひとつめの命を消化してしまい、一段落ついたところだった。
ハイネは、ふうっと大きな息をはいて、やれやれと立ち上がった。
「じいちゃん、違うよぉ。あれはねぇ、向こうに住む人たちの映画館の明かりなの!」
「子供にかかれば動物も会話をするし、花も笑い出すもんさ。あげくのはてに、夜空の星もそんなものかねぇ」
おじいさんは微笑んだ。
その言葉に答えることなく、ハイネは方向と気分を変えて、再びゲームにチャレンジした。
原っぱの向こうで虫が鳴く。向こうの池では蛙がゲコゲコいっている。
ほんの少し車で走ると都会だというのに、ここには自然がいっぱいだった。夜空を見るのにはちょうどいい。
しかし、ハイネにはつまらない。自然だって、望遠鏡だって、夜空だって、全然興味がないのだから。
楽しいのはゲームだ。
たぶん、ゲーム機の液晶の光は、望遠鏡を見るおじいさんにとっては迷惑な明るさだろう。でも、おじいさんはハイネに注意することもなく、再び望遠鏡を覗き込んだ。