責任 


イスカンダルのふたり




捕虜を乗せたガミラスの艦が事故を起こしイスカンダルの近くを漂っていた。

その艦をイスカンダルから誘導電波で無事着陸させたスターシアは、艦の内部で虫の息の守を発見した。

ゆっくりとした動作ではあるがカプセルの中に眠る守を宮殿の医療設備が整っている部屋へ運び入れた。

「遠い地球からココまで良くもったこと・・・」

小さくつぶやいたスターシアは治療のため昏々と眠る守の顔を飽きることなく見つめていた。

日に日に介抱へ向かう守は、治療カプセルから医療設備の整った部屋へ移ることが出来た。

ココまで守るが回復するのに数ヶ月の月日が流れていた。

ベッドに横たわっていた守がふと意識を戻した時、見慣れない部屋にいることに驚きと緊張で体が強張る。

その時静かにドアが開きスターシアが部屋に入ってきた。

「やっと目覚めましたね。気分はいかがですか?」

スターシアに声をかけられた守は

「からだが重い・・・」

と小さく応えた。

「仕方がありません、貴方は2ヶ月もの間意識がなかったのですから。今は体を元に戻す事だけを考えてゆっくりとお休みなさい」

「2ヶ月・・・・一つだけ聞かせてくれないか?」

「なんでしょう?」

「ココはどこですか?」

「ココは、貴方の惑星から14万8千光年離れたイスカンダルという惑星です。信じられないかもしれませんが・・・」

「・・・・」

何も言う事のできなくなった守に

「今日はコレを飲んでゆっくり休んでください。明日詳しい話をしましょう・・・」

スターシアから渡された薬を飲むと守の意識は次第に闇の中へ落ちていった。

守の寝顔を見ていたスターシアは守の目元から一滴流れる涙をそっと指でぬぐう。

「明日、本当のことを話します。だから今日はゆっくりとおやすみなさい」

スターシアの顔にも寂しい影が落ちていた。





眠りに落ちた守は懐かしい光景を目にすることになる。

今は亡き両親と小さな弟と楽しく食卓を囲む風景や故郷の友人、訓練学校で知り合った親友の顔が次々に浮かんでは消えていった。

翌朝の守るの目覚めは爽やかなものではなかったが体の重さも幾分がすっきりとしていた。

ベッドの上でぼんやりと過ごしていると、音もなくドアが開きスターシアが入ってくる。

「お加減はいかがかしら?」

「昨日より体は楽になってきています」

「そうですか・・・昨日詳しい話しは今日といいましたが・・・」

「・・・聞かせてください。私がどうしてこの星にいるのか、地球は今どのような状態なのか・・・」

「そうね、その前に、私はイスカンダルの女王スターシアと申します。貴方は?」

スターシアに名前を聞かれて守は

「地球艦隊所属、駆逐艦『ゆきかぜ』艦長、古代守といいます」

「守・・・ですね」

「はい」

「貴方がこの星にいる理由は、ガミラスの艦が故障してこの星の近くを漂っていたのを誘導電波でこの星へ着陸させました。

艦の中には貴方のほかにも生命維持ポットにいた方がいましたが、艦が故障してしまった時にそのポットも影響を受けてしまったのでしょう・・・

守、貴方のポットだけが無傷でした」

「・・・・私だけが・・・」

シーツを強く握り締めた守の手にそっとスターシアの手が重なる。

「守、自分を責めることはないのですよ。この星は貴方の故郷の地球に良く似ている星です。今は体を治すことだけを考えましょう。

さぁ、これを飲んで少しおやすみなさい。夕方海岸線を散歩しましょう?」

スターシアから渡された飲み物、地球のハーブティのような心か安らげるような香りをゆっくりと吸いこむ守を見ていた。

「なんだか懐かしい香です」

「そう・・・このお茶は、心と身体を休ませてくれる効果があるの。貴方の疲れきっている身体と心を癒してくれるわ」

スターシアの話を聞きながらゆっくりとお茶を飲み下した守は

「ごちそうさま」

小さく呟いた守の手からカップを受け取ったスターシアに

「さぁ、少し横になって、後で宮殿の中を案内します。その後で海岸へ出て見ましょう」

「ありがとうございます、スターシアさん」

ベッドに横になった守の寝顔を静かに見つめながら

「いいえ、ありがとうというのは私のほうです。妹のサーシアが地球へ向かってからはこの星には私ひとり・・・

貴方と過ごす日々はきっと私にとって楽しいひと時になる事でしょう・・・

それまで、側にいさせてくださいね?」

守の寝顔を見ながら小さく呟いてから部屋を出て行った。




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