俺とあいつ




はじめから気にくわないやつだった・・・

何かとうるさく言う・・・

でも、気がつくと・・・・




僕とあいつが出会ったのは、

訓練学校の中等科進級式のときだった。

僕は、初等科から、あいつは中等科からの編入・・・

たまたま、同じクラスになり、

優等生のあいつはクラスをまとめようとがんばっていた。

クラス一丸となってなんていっていたけど・・・

僕には関係ない・・・

そう、僕はいわゆるはみ出し者・・

昔はこんな性格ではなかったはずなんだけど・・・

人とかかわりあうこと自体が苦手になってしまっていた。





そんな僕を仲間に入れようと根気よく話しかけてきたのもあいつだけだった。

グループに分かれるときも進んではいることはなかった。

人数の足りないところへ入って与えられた課題をこなすだけ。

そんな僕を見かねたのかいつも一緒のグループになるように

はじめから僕を引っ張っていく。

いつも同じメンバーで課題を行うようになってから

話しかけられれば返事をするまでになった僕に

「なぁ、古代。次の休みあいているか?」

突然の質問

「次の休み?何も予定は入っていないよ」

そう、次の休み、訓練生たちは自宅へ帰るやつらが多い。

「外泊許可とって家へこないか?」

突然の申し出になんと返事をしたらいいのか悩んでいると、

「嫌か?」

「別に・・・」

「じゃぁ、決まりだ。

寮監に外泊申請しに行こう」

そういって僕の手を引っ張っていく。




「外泊申請にきました」

窓口に立ち島が声をかける。

中から書類を持った寮監が、

「島に古代だな。

この書類に行き先を書いて提出するように」

書類をもらった僕たちは、書類に記入し始める。

外泊理由のところでペンが止まってしまった。

「どうした、古代?

ん?ああ、外泊理由は、俺のうちへ遊びに行くことにしておけ」

「そんな理由で許可出るわけないだろう・・・」

「いいから・・・住所はここだからな」

自分のを書き終わっていたらしく僕の目の前に書類を出す。

島にいわれた通り記入する。

「書けたか?

じゃぁ、一緒に提出してくるぞ」

返事も待たずに勝手に持っていく・・・

「ほら、古代の許可証・・・

いいか、金曜の午後ここを出るから荷物作って置けよ。

ま、下着ぐらいだけどな、持っていくのは・・・」






金曜の午後荷物を持ちそれぞれの家へ急ぐ訓練生の中に僕もいた。

「島・・・なんで誘ってきたんだ・・・」

「何でって言われてもなぁ・・・

ただ、宿舎に一人でいてもつまらないだろう?

だったらいっしょに来て弟の面倒でも見てもらおうかって思ったんだよ」

「何だ・・・それは・・・」

「そんなことするわけないだろう・・・

いつも寮の食事ばかりでは飽きてしまうだろう?

古代のこと話たらつれて来いっていわれたんだよ」

「別に・・・そんなことしてもらわなくったって・・・

食べられるだけいいんだ・・・

今までのことを思えば・・・」

「だからひさしぶりに手料理食べさせてやろうと思っただけだよ。

それにな、みんなで食べれば、楽しいだろう?」

「・・・・・」

黙ってしまった僕に

「ま、気にするな、親父やお袋も楽しみにしているんだ、お前が来ることに」

「楽しみ?」

「ああ、休みの度にお前のこと話していたら一度つれて来いっていわれたんだ。

お袋なんか、お前の事が気になってしょうがないみたいなんだよ。

もう一人子供が出来た、見たいな感じなんだろう」

「そんな風に思われても・・・」

「あまり気にするな、親戚の家にでも遊びに行くつもりでいいんだから・・・」






1時間ほどエアトレインに乗り、島の自宅近くの駅で降りる。

「ここらか歩いてすぐなんだ・・・」

幾分足取りの軽い島と、少し遅れ気味に歩く僕・・・

しばらく歩いていくと小さな男の子が走りよってくる。

「にいちゃぁ〜ん。お帰りなさい。

お父さんとお母さん待ってるよ」

「次郎、久しぶりだな。また少し背が伸びたのか?」

「うん、にいちゃん。この人が古代さん?」

「ああ、そうだよ。兄ちゃんの友達の古代進。

で、古代。弟の次郎だ」

「次郎君・・・よろしく・・・」

「はい。古代さんって言いにくいから・・・

進兄ちゃんって呼んでいいですか?」

次郎君の申し出にびっくりしていると

「進兄ちゃんか・・

次郎、兄ちゃんも名前をつけて読んでくれ」

「いいよ。大介兄ちゃん進兄ちゃん、お母さんたちが待ってるから早く行こう」

元気に走っていく次郎君の背中を見つめていると

「そういう顔も出来るじゃないか」

「別に・・いいだろう、学校でどんな顔していようが・・・」

照れくさくて横を向いてしまった・・・

「ま、ここにいる間はしかめ面しないでほしいとおもってね。

待たせるとうるさいから行こう」

島の後をついていく。




「ただいまー。

母さん、古代連れてきたよ」

玄関を開けたとたん、島が大声を出す。

奥の部屋から出てきた母親が

「お帰りなさい、大介。

こちらが古代君ね。自分の家だとおもってゆっくりして行ってね」

「はじめまして・・・

お世話になります・・・・」

「さぁ、上がってちょうだい。

お茶の用意してあるから・・・」

玄関先でじっとしていた僕に

「ほら、遠慮しないで上がれよ。

母さんの入れるお茶、うまいぞ」

そういってさっさと行ってしまった。

それでも中々上がらない僕に、

「進兄ちゃん、早くおいでよ」

次郎君に手を引かれてリビングへ入っていく。






美味しいお茶と楽しい会話。

あっという間の時間・・・

もう、何年も経験できなかった家族の暖かさ。

「たまにはいいかな・・・」

ポツリとつぶやいた声が聞こえたのか、隣に座っている島がニヤリと笑ったのがわかった。

「たまになんていわずに、次の休暇のときもつれてきていいよね、母さん」

「ええ、またいらしてくださいね。

次郎も楽しみにしていたんですよ、古代君に会えるって」

ニコニコ笑いながら次郎のほうを見て言う。

その次郎君に

「進兄ちゃん、向こうで僕の宝物見せてあげる」

そ言うと僕の手を引いて隣の部屋へ。

「おい、次郎。あまり無茶なこと言うなよ」

「大丈夫だよ。僕の宝物見せるだけだから・・・」





一通り次郎君の宝物を見せてもらったところへ

「古代・・・悪かったな、次郎のやつ・・・」

「いや・・・昔を思い出したよ。

僕も小さいころ、次郎君と同じように兄さんが帰ってくると見せていたんだ、宝物。

今思うと兄さん、よく付き合ってくれたなと思ってね」

「そうか、古代守さんって古代の兄さんなんだったよなぁ・・・

兄貴に負けないように立派な宇宙戦士になろうぜ」

パンと思いっきり背中をたたかれる。

「いってぇ〜。何しやがる」

文句を言おうとしたら

「そう、その顔。しかめ面ばかりしてないで少し肩の力抜いてがんばろうぜ」

「ったくぅ・・・島、ありがとう。

いい気分転換になったよ」





気にくわないやつだったけど・・・

気になり始めたらいつも一緒にいた・・・

訓練学校、寮の部屋、火星基地。

最後はヤマトの第一艦橋メンバー・・・

いつまでも続く

おれとあいつの人生。

これからは違った形で付き合っていくことになりそうだな。

遠い未来へどんな風にかかわりあっていくのかも面白いかも知れない・・・

いつまでも続く友情に・・・







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(背景:HEAVEN'S GARDEN)