Countdown



Chapter 6

後、4日


おかしい・・・進さんからのメールが来ない。

昨日は、島君と飲むと言っていたから忘れちゃったのかしら?先日の夢が気になっていたけど・・・

何かあれば連絡が来るはず・・・

子供たちも、いつも通り、変わらず、仲良く遊んでいる。

でも、時々どこかを見つめているようで・・・

「美希、美優、パパ、早く帰ってくるといいね」

遊んでいる二人をそっと抱き締め、まどろんでいると、インターフォンの音が聞こえてきた。




「ママ、いらっしゃい」

「どうしたの?何か心配事?」

「進さんからメールが届かなくて・・・ちょっと、心配になっちゃったの。

でも、防衛軍から何も言ってこないから大丈夫だと思うの、心配かけてごめんなさい、ママ」

「ユキが不安になっていたら、子どもたちも不安になってしまうのよ。

だから、進さんから連絡が来るのを明日まで待ってみるのもいいかもしれないわよ。

メール送り忘れたって、困った顔で連絡くれるかもしれないわね」

「もう、ママったら。今日はどうしたの?急に来るなんてこっちがびっくりするでしょう?」

「たまにはちびちゃんたちと遊ぼうと思ったのよ。買い物があるならいってらっしゃい、留守番しているから。

 美希ちゃん、美優ちゃん、ばーばと遊ぼうね」

「それじゃ、お願いしていい?色々と買うものが多くって、美希、美優、いい子にしていてね」




夜遅く、進さんからメールが届いた。

『ごめん、ユキ。心配かけちゃったかな?

ちょっとした事故があって、事後処理に時間がかかってしまったんだ。

日付が変わってしまったね。

後、2日で帰れる予定だったんだけど、1日延びてしまったんだ。

帰ったら、保育園の様子、教えてほしいな。

宇宙港に着いたら、電話するよ。

    お休み

                    進』


こんなメール送ってくることは今までなかったはず。何かあったのか明日、真樹に聞いてみる方が良いかな?






後、3日


午前中に真樹の家に遊びに行くことを伝え、いつもにこにこと笑っている双子が、おとなしい。

これは、何かあったのかも?


子供たちがお昼寝をしている間に、

「ねえ、真樹。島君から何か聞いていない?」

「帰還が遅れること?事後処理で遅れるとしか聞いてないわよ?」

「島君も、真樹に言ってないのね?」

「どうしたの?心配事?」

「ちょっと、変な夢見ちゃったから気になっているのかもしれないけど、美希と美優、この2日ばかりおとなしすぎるのよ。

そういう時に限って、進さん、怪我をしたり、何かに巻き込まれたりするから、真樹の所に島君から連絡来てないかなって思ったのよ」

「なにも変わったことは書いてなかったわ。

何かあったとしても、帰ってくればわかることだし。

ユキや私に心配かけないようになにも言ってこないのかもしれないわよ」

「その、可能性はあるかも。帰ってきてから確かめればいいのよね」

「そうそう。美希ちゃんと美優ちゃん、来月から保育園に通い始めるの?」

「そのつもり、1か月ほど様子を見て、私も仕事に復帰しないと、次に産休取る人が困っているから」

「出産ラッシュなのね、同じ時期に知っている妊婦さんがいるのは、心強いわ。

ここに、育児の先輩もいるし、旦那さまたちは、子育てに積極的に参加してくれそうだしね?」

「そういうこと、真樹と話が出来て良かったわ、また、時間を取って、遊びに来るわね」

いつの間にか起きて遊んでいた双子を連れて帰ってきた。



『 進さん

 怪我していない?無理しちゃだめよ。私たちの所へ帰ってくる約束、忘れないでね。
 
今日、真樹の所へ行ってきました。島君も満忌に何も言っていないのね。

心配かけないためだと思っていいのかしら?

家に帰ってくる前に、佐渡先生の所へ寄ってきてね。

もちろん島君も一緒によ。私たちに心配かけたのだからそれくらいいいでしょ?

保育園の話は、帰ってきてから相談に乗ってほしいことがいっぱいあるの

無事帰還することを祈っています。
                      ユキ』





後、2日

ユキからのメールを読んで、どこまでばれたのか・・・

帰還報告後、佐渡先生の所へ行くことはよることになっていた。




「島、訓練生たちの帰還ルート大丈夫か?」

「ああ、大丈夫だ、このまま予定通り、口を出さずに見ていられるだろう」

「捻挫した足で動き回っていたら邪魔になるし、帰ってからおっかない先生と、看護師さんが待っているしな」

「そういうこと、おっかない看護師さんからうまく逃げられる計画でも立てるかい?」

「いや、止めておく、今回はおとなしくしているつもりだよ」




『ユキ、無事火星基地を飛び立ったよ。心配かけなように言わなかったけど、捻挫と軽い火傷。

家に帰る前に佐渡先生の所へ寄ってから帰るよ。


                     進』







後、1日




もう、心配して損しちゃったわ。でも、捻挫と火傷?どこからか飛び降りたのかしら?

そんなこと思っていると、サークルの中の子供たちがまた、なにやらお話し中。

隠し持っていたカメラをそっと向けてみると

『ママ、良かったね』

『パパって無茶するのね』

カメラを通して聞こえてきた声は夢の中で出会った美希と美優。

録画していたものを見返しても、先ほど聞こえた声は入っていない。

仲良く、おもちゃで遊んでいる子供たちをしばらくカメラに収めていった。




三人で過ごす最後の夜、また、あの空間へ

『ママ、おきて』

『パパ、明日帰ってくるのよね?』

「予定通り帰ってくるわよ」

『あのね、澪お姉ちゃんがね、教えてくれたの』

『パパ、捻挫と、火傷だけじゃないんだって』

 交互に話をしてくる子供たちの後ろから

『ユキさん、おじさまね、脱臼もしたみたいなの。

島さんがうまくはめてくれたみたいだけど、佐渡先生に報告しておいた方がいいと思うの。ね、お父様』

『心配させた分、お説教は、ユキに譲ったらしいから』

「ありがとう、守さん、サーシャちゃん。お説教は任せていただきますね」

懐かしい方たちとの再会も、子どもたちのおかげなのかしら?




帰還



『ユキ、訓練艦《あかつき》が、無事、宇宙港へ着いたよ』

「おかえりなさい、美希と美優、お昼寝中で迎えに行けなくてごめんなさい」

『いいよ、無理しなくて、この後、訓練学校へ報告してから帰るよ』

「佐渡先生の所へ行ってね。もう、連絡済みだから、それと、帰ってきてからゆっくりと話を聞かせて頂戴ね」

『まいったなぁ・・・どこからばれたんだ』

「内緒、帰ってきてから教えてあげるわ」




「ただいま」

「おかえりなさい、進さん」

サークルの中にいる子供たちへ

「美希、美優、パパ、帰ってきたわよ」

「ぱ〜」「ぱ?」

「いい子にしていたか?美希、美優」

子供たちを抱きかかえようとして

「パパ、着替えてきてからにしてね」

「わかった、すぐ着替えてくるよ」

左足をかばうように歩く後ろ姿に、溜息をこぼす。




着替えを済ませ、リビングへ戻ると、子どもたちは、絨毯の上で楽しそうに遊んでいた。

「パパは、ソファーに座っていたね。色々と詳しく聞きたいから。その前に、左足はここに乗せておくこと」

小さめのオッドマンを置く。

「えっと、ユキ?」

「佐渡先生から連絡が来ているの、無理して歩いているから家の中ではおとなしくしていること、

火傷は薬を付けていれば自然と治ることも聞いているわ。でもね、脱臼のことは教えてくれなかったでしょ?」

「あー、落ちた時方で捕まったからかな、体重と装備の重さでね。

訓練学校時代からよくあることだから島が入れてくれたけど?」

「それも聞いたわ、だから、子供を抱き上げるの禁止、座っていれば子供たちからよってくるから2、3日おとなしくしていてくれる?みんなに心配かけるんだから」

「了解、おとなしくしているよ、特別休暇もらったし、処置はユキに任せるって、佐渡先生にも言われてし・・・」

「いい心がけね、でもね」



ユキのお説教が始まるまで・・・

    カウント 

       ゼロ

Chapter 5


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