079 やきもち
防衛軍の本部で流れている噂・・・
私の耳にも入ってくる・・・
古代くんが私の知らないところで、私の知らない女性(ひと)と、公園で話をしていたと・・・
それもとっても楽しそうに・・・
古代くんが休暇でどこへ行ってなにをしていようと関係ないけど・・・
だけど・・・だけど・・・
今日帰ったら古代くんを問い詰めなくっちゃ・・・
でもなんていって聞き出そう・・・
古代くんが迎えに来てくれるというメールが入っていたけど・・・
迎えになんて来てもらわなくてもいい・・・
重い足取りで官舎のドアを開ける。
部屋の中から古代くんの声が聞こえてきた。
「ユキ?帰ってきたの?連絡くれれば迎えに行ったのに・・・」
いつもの優しいまなざしで玄関まで迎えてくれた。
いつものように抱きしめてくれたけど私は・・・
いつもの私ではないときがついた古代くんが、
「ユキ?何かあったの?仕事うまくいかなかったの?」
心配そうに聞いてくるけど・・・
答えないで黙っていると、
「とにかくここに座って、なにがあったか話してくれないと・・・」
心配そうに覗き込んでくる。
古代くんに言われたとおりソファーへ座ったけど・・・
「雪?何か心配事?」
やさしく聞いてくる古代くんに、
「・・・・していたって・・・」
小さくつぶやいてみる。
「え?なにをしていたって?」
のんきに聞き返してくるから、我慢が出来なくなって
「古代くん、デートしていたって・・・」
「ええっ!!誰がそんなこと言ったの?」
「本部ですごい噂になっているのよ。古代くん2,3日前公園で誰と会っていたの。
とっても楽しそうに話していたって・・・」
そこまでいったら涙がこぼれてしまった。
なかないで聞こうと思っていたのに・・・
「なんだよその噂・・・2,3日前・・・公園で・・・」
ちょっと考え込むようにしている古代くんを睨みながら・・・
「誰と・・・会っていたの・・・」
涙が後から後からこぼれてくる。
そんな私にびっくりしたのか、そっと抱きしめてくれた。
「あのね、僕は噂されるならユキとのこと噂されたいんだけど・・・」
耳元でそんなこといわれたって・・・
しばらく黙っていたら古代くんが抱きしめてくれている。
なんだかほっとしている私がいる。
そんな私に気がついたのか、
「ユキ?・・・落ち着いた」
古代くんの胸の中でコクンと小さく頷いた。
「それじゃ、話すよ。
この前公園であっていた女性(ひと)はね、平井悠子さんといって僕の幼馴染の子なんだ。
ほら、訓練航海の後イスカンダルまで兄さんたちを救助に行ったとき、
兄さんにからかわれてこと会っただろう・・・」
「古代くんがおままごとの相手をしていたこと?」
「そう、おままごとの相手、というより僕の後をいつもくっついてきていた女の子。
ちょっぴりおしゃまな女の子だったんだけど、
今ではフラワーデザイナーの資格を持っているんだって・・・
僕たちのことも時々見かけるといっていたよ。
それでね・・・」
いいよどむ古代くんに
「ないか言われたなの?何でも話してくれる約束よ・・・」
「う・・・ん・・結婚式を挙げるときにね、ブーケをプレゼントしてくれるって言われたんだ。
それでお願いしちゃったけどよかったかな?」
「古代くん、ドレスのデザインも知らないのに?」
「そう言われてみれば・・・まだ見せてもらってないね。
それにしても・・・」
クククとおもい出し笑いをしている古代くんに
「なにを思い出しているのよ・・・」
ちょっぴり睨んでみると、
「ユキのやきもちを焼いた顔って・・・」
「なによ・・・」
「うん、とっても可愛いなって・・・」
「そんなこといっても何にもありませんよ」
「やっといつものユキに戻ったね。
明日はユキも休みだから今夜はゆっくり出来るかな」
「そんなこと・・・・わからないわよ・・・」
心配した分いっぱい愛してね、古代くん・・・
この後ふたりが何をしていたかは皆さまのご想像にお任せします。
2003/9/29
さとみ
(背景:Anemone' room)