049.あこがれ
兄さんが操る飛行機を見たとき、ただ感動したのを覚えている。
僕の家は飛行気乗りがたくさんいる。
父さんを始め三人の兄さん達も・・・
みんなそれぞれ自分にあったところで自分の分身といえる飛行機を操縦している。
中でも一番かっこいいと思うのはすぐ上の三郎兄さん。
ガミラスから攻撃されているときも艦載機に乗るために訓練学校へ進んでいた。
真っ青な空を思いっきり飛ぶためにって言っていた。
訓練学校へ入った三郎兄さんから、艦載機に載る楽しさを聞いたと僕も艦載機載りになりたいと兄さんに言った事があった。
兄さんは嬉しそうに
「そうか、四郎も艦載機に乗るのか?
一緒に空を飛べるのが楽しみだよ」
嬉しそうに笑った兄さんの顔がまぶしかった。
未知の彼方にあるイスカンダルに兄さんがヤマトに乗ると聞いて、報告のために帰ってきたいて兄さんにヤマトの艦載機の話を聞きだした。そういって1年後の約束をした。
「ヤマトの艦載機?何だ、四郎興味があるのか?」
「うん、だからどんな艦載機なのか教えてよ、三郎兄さん」
「ヤマトには2種類の艦載機を載せていくんだ。
一つは俺が乗る『ブラックタイガー』,もう一つはちょっとクセがあるけど機動性の優れている『コスモゼロ』。
コスモゼロは俺も手を焼いたんだ。それなのにあいつは意図も簡単に手なずけやがった・・・・
オレは、ゼロよりブラックタイガーのほうが相性が良かったからな」
「ふ〜ん、でも、ブラックタイガーって"エビ”がモデルになっているの?」
「あのなぁ・・・いくらなんでも"エビ”がモデルな分けないだろう。
タイガーといえば“トラ”だよ。艦載機の両サイドに鋭い目がかかれてあるんだ。
機種の下側には牙もな。
オレがブラックタイガーの隊長で、山本が副隊長なんだよ。
他の奴原逆じゃないかなんていっているけど・・・」
「うん、山本さんのほうが隊長に向いたいるのかもよ」
「こら、四郎お前まで・・・いいんだよ、山本が副隊長で。
なんていったって、オレのほうが飛行機を操るのが巧いんだから・・・」
「なら兄さんだってゼロを操縦できるんじゃないの?」
「あのなぁ・・・さっきも言っただろう?ゼロは癖が強いじゃじゃ馬なんだよ。
あんな艦載機操縦できる奴なんかいないと思っていたんだけどな。
一人、いたんだよ。それも砲術科の奴が・・・
まったく、畑違いにもかかわらずな。
ま、宇宙空間でどんな操縦技術見せてくれるのか今から楽しみでもあるんだけどな。
だから、四郎、帰ってくるまでに腕磨いておけよ」
「うん、帰ってきたら一緒に青空の下飛ぼうよ、兄さん」
イスカンダルから帰ってきたヤマトの乗組員は、軍の人手不足も手伝って帰還後たった3日で次の任務へと出かけていった。
三郎兄さんも新しい艦載機の製作プロジェクトに参加するため月基地への赴任していく事が決まっていた。
出発までのわずかな時間イスカンダルへの旅とゼロを愛機としている古代さんの話をしてもらった。
イスカンダルへの航海は初めてのことばかりで大変だってけど充実していた事を・・・
「なぁ・・・三郎。古代がゼロを操縦するとまるで蝶のように舞うんだ。
ブラックタイガーも機動性は充分あるんだけどな」
「ふ〜ん、でも、兄さんはブラックタイガーを選んだんでしょう?」
「ああ、あんなじゃじゃ馬古代一人が相手をすればいいんだよ。
俺も山本もブラックタイガーに愛着あるし、今度作る艦載機は四郎たちも使う艦載機になるんだから楽しみにしていろよ」
「うん。兄さん達が参加して作る艦載機だからきっと操縦しやすい艦載機になるね。
イスカンダルに行く前は古代さんのことあまりよく思っていなかったのにね」
「あのころはな。砲術か出身の奴が、艦載機に載る、それもじゃじゃ馬のゼロと聞いてブラックタイガーチームはできるわけはないって、はじめから相手にしなかったよ。あのワープ直前のあの時までは・・・
火星までのワープテストを行うとき、ガミラスからの攻撃を受けたんだ。
ヤマトはワープ準備のため攻撃できないから、俺たちブラックタイガーチームで攻撃してワープ時間までにヤマトに帰還するはずだったんだ。
前期帰還したと思ってら山本のブラックタイガーが被弾していたんだ。ワープの時間は変更できないって言うし、俺たちも山本もヤマトには帰還できないと諦めていたんだよ。それなのに古代は最後まで諦めるなと着艦口に降りてきて山本機の誘導をはじめたんだよ。
何度も体制を整えて何とかヤマトへ帰還できたけどそのとき機体は炎上を始めていたんだ。誰も動けないでいると古代が機体に駆け上がり山本を救出してきたんだ。自分もやけどをすることなんか気にしないように。
このとき、コイツにならついていけると思ったんだよ。その場にいたブラックタイガーチーム全員でな。
途中から艦長代理なんていう肩書きをもらってしまっていたけど、遊ぶときは遊ぶ、仕事をするときは厳しい上司になったけどな。
イスカンダルへの航海を思い出すように、遠くを見つめながら反してくれてことを思い出す。
初めて古代さんに会ったとき、なんとなく三郎兄さんの言っていた事がわかった気がするよ。
ぼんやりと展望室で星を眺めていたら
「加藤、ミーティング始めるぞ」
「はい、いまいきます、艦長」
コスモタイガーチームが集まる部屋へ歩き始める。
「何か悩み事か?」
「いえ、兄のことを思い出していたんです」
「そうか・・・」
ポツリと呟いた古代さんの横顔が寂しそうに変わった。
「艦長を攻めているんではありませんよ。兄に憧れて艦載機載りになりましたが、兄のほかにも艦載機をうまく載りこなす人に出会えてとても嬉しいんですよ。
兄との約束は守ってもらえなかったけど、代わりに艦長と飛ぶことができましたから」
「そうか・・・時々俺も三郎と一緒に飛んだことを思い出すよ。お前の兄貴には無理なことばかり注文してしまったけどな」
遠くを見つめる古代さんに
「三郎兄さんに憧れて艦載機に載る事を決めましたけど、実際僕をここまで引っ張ってきてくれたのは、古代さんですよ」
恥ずかしそうに照れ笑いをする艦長も見ながらミーティングルームへと足を運ぶ。
大きな目標になってもらていますよ、古代さん。
2005.10.26