033 叶わぬ恋
初めて僕は恋をした。
それも真剣に・・・
ヤマトに乗ることになった。
あこがれ続けていたヤマトに。
配属先はちょっと不満はあるけど・・・
だけど・・・だけど・・・
班長は素敵なひとなんだ・・・
わからない事を優しく教えてくれたりする・・・
いつの間にか僕は班長と行動をすることが多くなっていった
僕が、生活班炊事科だからかもしれないけど・・・
班長と一緒に仕事をすることがこんなに楽しいなんて・・・
この航海が無事終わってから絶対班長に僕の思いを伝えたい・・・
そう思いながら班長を見つめている時間が長くなっていく。
休憩時間になると必ず班長を探してしまう。
今日も班長を探していると、班長が寂しそうな瞳であるひとを見つめている。
班長の目線の先には、島副長となにやら話しこんでいるこの艦の艦長・・・
班長は、艦長のことが好きなんだろうか?
艦長室の備品の補充も班長か進んでやっている。
艦長は知っているのだろうか?
ねぎらいの言葉一つかけているところを僕は見たことがない。
夜遅く班長が一人展望室へ入っていくのが見えた。
僕は班長の後を追って展望室の入り口でじっと班長の後姿を見詰めていた。
寂しそうな班長の後姿があまりにも可愛そうになり展望室へ入ろうとしたとき、
もう一つの入り口から艦長が入ってくるのが見えた。
僕はあわてて今までたっていたところへ戻り展望室の中を見回した。
展望室の中央に位置に一人分の隙間を開けたつふたりのシルエットが見える。
班長と艦長、最初の航海からずっとヤマトに乗っていたと言う。
どちらかともなく寄り添っていくふたりの姿を僕はじっと見つめていた。
どのくらい時間がたったのかわからなかったけど後ろから肩をたたかれ振り向いた。
「島副長・・・」
「しっ・・・土門なに覗いているんだ?」
展望室をそっと覗き込んで
「あぁ・・・やっとふたりだけの時間が取れたんだな」
「え?ふたりだけの時間って?」
「何だお前、知らなかったのか。
あのふたりは婚約中だ。ほんとだったら今頃は・・・」
「今頃は?なんなんですか」
島副長の思わせぶりに僕の声が少し大きくなったようだ。
「まったく・・・もう少し小さい声を出せないのか。
今頃は結婚の準備を始めているころだったんだよ。
やっとその気になったと言うのに・・・」
大きなため息をつき僕に
「お前も早く休め。明日も訓練あるぞ」
そういって島副長は行ってしまった。
もう一度展望室の中を覗いたとき、二人のシルエットが重なって行った・・・
僕の恋は始まったばかりで叶わぬものになってしまった。
でも、班長は素敵なひとだし、あこがれているだけなら艦長も何も言わないだろう・・・
僕の真剣な思いをいつか班長に告げられると言いのだけれど・・・
初めて真剣に恋をして、思いを告げられないまま僕は班長のそばで仕事をしている。
艦長と一緒にいたときの班長の顔はけして忘れることの出来ない。
あんな微笑みは僕たちには見せてくれないから・・・
FIN
2003/10/1
さとみ