030.おままごと





結婚式の延期からどれくらい立ったのかしら?

いつの間にか私たちは一緒に暮らし始めている。

お互いの肌のぬくもりを求め合うように、そっと寄り添って・・・





古代くんとの結婚が決まって、ママから料理の特訓を受けてたけど・・・

まだまだ上手には出来ない・・・

一人暮らしの長かった古代くんの方が、料理の腕は上みたい・・・

それでも毎日一生懸命作っているけど、失敗するほうが多い・・・

昨日も玉子焼き、焦がしてしまったし・・・

古代くん、何にも言わないで食べていたけど大丈夫かな?

今日の夕飯はいつも手伝ってくれる古代くんが残業・・・

一人で料理をするのも数えるくらいしかない・・・

失敗の少ないカレーライスを作る予定なんだけど・・・

大丈夫かなぁ・・・





何とか、古代くんが帰ってくる前に仕上げることが出来た。

時計を見るともうすぐ9時。

カレーを作るだけで3時間・・・

ほぅっとため気をついた瞬間玄関のドアが開く。

「ただいま・・・」

「お帰りなさい・・・」

玄関まで迎えに出ると

「いいにおいだね。今日はカレーを作ったの?」

「あまり上手ではないけど・・・着替えてきて。

食事の準備しておくから・・・」

「このまま食べたいけど・・・着替えてくるか・・・」

寝室に向かうのかと思ったら突然振り返って、

「忘れ物」

と言って頬に口付けをしてくれた。

照れ屋の古代くんが、ふたりだけのときに少しずつ見せてくれる年相応の顔。





古代くんの着替えをしている間に、サラダをテーブルの上にだして、ご飯を・・・

キャー・・・

大きな声を出してしまった。

寝室からあわてて古代くんが出てる。

「ユキ?どうしたの?」

キッチンに立っている私のところへ来る。

「ユキ?」

「あのね・・・古代くん・・・笑わないでね」

「うん、だからどうしたの?」

「炊飯器のスイッチ入ってなかったの・・・それだけじゃなくてお米も・・・」

「・・・入れてなかったんだね・・・ユキらしい・・・」

笑いを押さえている古代くんに

「もう・・・笑っちゃいやだって・・・言ったのに・・・」

「わははは・・・ご・・めん・・・ごめん・・・

今からご飯をたくのだといつ食べられるかわからないから、パンがあったよね」

「ええ、昨日かってきておいたバケットならあるわ。それでいいの?」

「うん、いいよ。おなかすいているから早く食べよう・・・」

古代くんのやさしさに救われたけど・・・

家事を担当する身としては・・・





食事を済ませて寛いでいる古代くんの隣へちょこんと座ってみる。

そっと肩を抱き寄せられて

「お疲れ様。今日の料理結構時間かかったでしょう・・・」

「そんなことないわよ・・・どうしてそう思うの?」

「いや、なんとなく・・・キッチンの惨状を見るとね」

(いつの間に見たのォ〜〜〜)

黙ってうつむいていると

「最初は誰でも時間はかかるものだよ。

おままごとみたいに手探りだけど、一緒にがんばろうね」

コクンと小さく頷いてから古代くんの肩にもたれかかる。

抱きしめられている肩に古代くんの手のぬくもりを感じながら・・・


                                 END


                                                     2003/9/22     
         
                                                                                                                           さとみ
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(背景:HEAVEN'S GARDEN)