014  記念写真




誰もいない休日。

あの人も、子供たちも今日は予定があると言って出かけていった。

誰もいないのをいいことに部屋の片づけを始める。

まずは、子供部屋。

女の子ふたり淡いピンクと淡いブルーの壁紙。

ふたりで好きなように使っている。

両端にベッドと机、真ん中を広く空けて二人で何かをしている姿を時々見る。

きちんと整理されている部屋のところどころにぬいぐるみが置いてある。

そして、もひとつの部屋。

こちらは男の子らしく、ちょっとシックに・・・

壁いっぱいに自分で撮った飛行機の写真。

パパと一緒に作ったプラモデルは棚の上に。

二人で一生懸命作っていたのを思い出す。

子供部屋の掃除を簡単に済ませ、書斎の整理を始める。

机上は片付けるとどこに何があるかわからなくなると言うことで崩れないように整える。

「もう・・・進さんったらお仕事持ち帰りすぎ・・・」

そういいながら机の上の整理をしていると

「あら?こんなところに・・・

仕事で疲れるとすぐ持ち出すんだから・・・」

クスクス笑いながらそっとそれを持ち上げる。

ふたりが出会ってから今までの思い出が詰まっているもの。

これからもいっぱいになって行くはずのもの・・・





掃除をしているのを忘れてそれに夢中になってしまっていた。

いつの間にか背後に立っている。

「ただいま・・・」

と後ろから声をかけられてびっくりして後ろを振り向く。

「あっ・・・お帰りなさい・・・

気がつかなくてごめんなさい・・・」

「何をそんなに真剣になって見ていたんだ?」

背後からそっと抱きしめられてしまった。

「うふふ・・・これよ・・・」

「なんだ、アルバムか・・・」

「そう、片づけをしようとしていたらこんなものが出てきたからつい懐かしくなって・・・」

「書類整理ばかりしているとどうしても疲れてしまうんだよ。

息抜きに写真を眺めているんだから・・・」

「息抜きなの?仕事はかどっているのかしら?」

机の上の書類を見つめてみる。

「もう終わっているよ。後は本部に送信するだけ。

それより、子供達まだ帰らないのかい?」

「そうねぇ・・・もう少ししたら帰ってくるわよ。

それより、この写真覚えている?」

ページをめくって進さんに見せると

「あぁ・・・パパとママの青春の思い出の一枚だろ?」

「そうよ、この時進さんったら突然肩を抱き寄せるんですもの・・・

びっくりしてあなたの手をはたいてしまったわ・・・」

「あの時は・・・まぁいいじゃないか・・・

それより、僕の一番のお気に入りがこれと・・・」

ページをめくり、指を刺した写真は満面の笑みを浮かべた彼の顔。

その視線は自分の腕の中にすっぽりと納まっている二つの宝物。

「うふふ・・・始めて二人を抱いたときのあなたね。

美希も美優もこんなに小さかったのね」

「僕の手の中にすっぽり入ってしまうくらいね」

一枚ずつページをめくり小さかった子が少しずつおおきくなって行くのを楽しんでいるみたい。

「それともう一枚。僕の味方になってくれる・・・」

そういって、一人息子を抱き上げている写真。

「うふふ・・・このとき、美希たちともめたわね。

誰が最初に抱くかって・・・」

「そうだね」

「進さんったら、あの子達が来る前に抱いてしまったのよね」

「ばれたときは『ずるいと』二人が膨れたっけ・・・」

数年前のことを思い出して笑っている。

「進さんの小さかったころの写真がないのは寂しいけれど、これから何かあるたびのこうやって記念写真を撮っていきましょうね」

そういって彼の大きな背中を抱きしめた。

しばらく黙っていた彼が小さな声で

「ありがとう・・・」

と言うのが聞こえた。

これから起こる楽しい一瞬を記念に・・・


                                    FIN



                              

2003/9/29
さとみ

2004.7.27
一部加筆

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