牡丹亭還魂記 (通称:牡丹亭)

プロローグ 春香鬧学 遊園 驚夢 尋夢 写真 離魂 拾画 叫画 幽媾 掘墳 吊打 圓駕

1598年ごろ成立
作者:湯顕祖

……概要……
(プロローグ)
 時は南宋の頃。
 柳夢梅はかの柳宗元の子孫というれっきとした家柄でありながら、今は身寄りもなく下男に樹を植えさせ、果物を売って生業とする身の上であった。ある夜、夢に一人の美女が梅の花の下に立ち、「柳さま、私たちは赤い糸で結ばれています。そしてあなたはいつか出世しますよ」と話し掛けるのを聞き、もともと柳春卿という名前だったのを柳夢梅と改めたのであった。
 

(春香鬧学)
一方、南安の太守の一人娘、杜麗嬢は花嫁修業のため家庭教師の陳最良に学問を習っていた。
そんな杜麗嬢を見ていた侍女の春香は陳最良をからかい、ふざけまわる。

しまいには杜麗嬢に叱られるが、春香は「後花園に行くときれいな花が咲き乱れていますよ」といい、杜麗嬢に気晴らしに後花園に行ってみるようすすめる。

(遊園)そしてある日、杜麗嬢は勉強に疲れ、春香に連れられてこっそり花園へ遊びに行った。

時あたかも春爛漫で百花咲き乱れる中に、杜麗嬢は春の訪れを喜ぶが、今年の春はいつもと違い、思春期に入った彼女はふと慕春の情を抱き、自分に良き伴侶の現れないことを嘆くのであった。

(驚夢)そして、杜麗嬢は疲れたため、自室でうとうととまどろんでいると、夢に一人の青年が出て来、柳の枝を手にして(柳夢梅であることの暗示)
嬉しくも恥らう杜麗嬢の手をとり牡丹亭の近くにある太湖石のほとりへと連れて行き、契りを交わしたのであった。
そんな二人を花園の神も祝福していた。
去ってゆく青年を呼び止めようとする杜麗嬢は、母に夢を覚まされた。


(尋夢)これより杜麗嬢は日に日に夢の中の青年を恋焦がれるようになり、ある日、夢の場面となった花園を一人で訪れ、夢の中の青年との思い出に浸る。すると何となく花園の中の梅の木に心惹かれ、自分が死んだ時にはここに埋めてもらいたいと思うのであった。

(写真)恋煩いの果てに杜麗嬢は日に日に痩せ衰えていった。思いをかなえるすべもない杜麗嬢は、衰えてゆく我が身を悲しみ、せめてもの記念にと、自分の姿を掛け軸に描き、さらに、詩を一遍書き付けておいた。「近く見て分明、厳然たるに似たり 遠く見て自在、飛仙のごとし。 他年蟾宮の客(進士試験に合格した者)に添うを得ば 梅辺にあらずんば柳辺にあらん」 将来自分の夫になる人は「梅」か「柳」の文字のある名前の人ではないかという意味であった。
(離魂)それからまもなく杜麗嬢は息をひきとり、父母は悲しみにひたりつつ遺言に従って花園の梅の木の下に葬り、そばに梅花庵を建て、石道姑という尼にその守を託した。

(冥判)杜麗嬢の魂は、冥土に行き、そこで裁判を受けることになった。判官は色を慕って死んだから、と追求したが、花園の神が現われて、夢の中のことだから、ととりなし、許されて再生がかなうことになった。

(拾画一方、柳夢梅は科挙に応ずるため都へ向かっていたが、厳しい冬の最中、病にかかり、あやうく行き倒れとなるところを杜麗嬢の元家庭教師の陳最良に助けられ、梅花庵で養生することになった。そんなある日、柳夢梅は花園を散歩しているうちに太湖石の下に掛け軸があるのを発見した。

(叫画)それこそ、かつて杜麗嬢が描いた自画像で、密かに侍女春香にいいつけ、ここに埋めさせたものであった。
杜麗嬢の絵姿を見た柳夢梅は、すっかり心を奪われ、画中の人にしきりと呼びかけた。

(幽媾)冥土から帰ってきた杜麗嬢の魂はそれを聞きつけ、見れば、あの恋しい人である。たいそう喜び、隣の家の娘と偽って柳夢梅に近づき、毎晩のように訪れ、情を交わすようになった。

(掘墳)しばらくたったある夜、杜麗嬢は柳夢梅に、実は自分はこの世の者ではないと打ち明け、再生の手助けを頼んだ。柳夢梅は驚いたものの、杜麗嬢を妻にできるなら、と石道姑に話して協力を得、杜麗嬢の墓を掘り返した。棺を開くとはたして杜麗嬢は蘇生し、数日の養生ですっかり元気になった。
 
(吊打)かくして、二人は仮祝言をあげ、柳夢梅は都へついて試験を受けた。そして彼は杜麗嬢の頼みで彼女の父、杜宝の様子を見に、ちょうどその頃戦争中だった賊軍と和平の宴が開かれているところへ訪れてきた。しかし、女婿と名乗る柳夢梅が杜宝から信用されるわけはなく、詐欺師として土牢に放り込まれてしまう。そのため都では、状元に及第した柳夢梅が行方不明となって大騒ぎになり、方々へ使者がつかわされていた。その一人が杜宝のもとへ来た時、柳夢梅は墓暴きの犯人としてさんざん打ち据えられていた。

(圓駕)使者は柳夢梅と知り、助け出そうとしたが杜宝が信じようとしないため、ついに皇帝に上奏し、裁きをあおぐことになった。父杜宝はあくまでも柳夢梅を婿と認めず、その場には、すでに母と侍女の春香と出会い再生を祝福された杜麗嬢もいたが、杜宝は杜麗嬢までも「化け物」と罵り、信じようとしない。しかし、たまりかねた杜麗嬢が悲しみのあまり倒れるに及び、さすがの杜宝も「麗嬢!」と叫んでかけより、ようやく父の心は解けたのであった。かくして杜麗嬢と柳夢梅は晴れて結ばれることとなり、牡丹亭に始まる恋は実を結んだのであった。

●現代語訳
 ・『還魂記』岩城秀夫訳(中国古典文学大系・戯曲集・下)平凡社