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四神の封印と四神の贄巫女

「ははは・・・正直、魔法使いの僕に、君みたいな接近攻撃してくる相手は分が悪いね・・・」

ウィザードもなかなかのスピードの持ち主だ。当然、ファイに呪文を詠唱させる時間は与えない。

(なんとかしないと・・・)

ファイはウィザードの攻撃を何とか避けながら、今はいているブーツに忍ばしてあるナイフを取り出し、ウィザードに投げつけた。

それを避けるために引いたウィザード。その隙にファイは短い詠唱を唱える。

「『氷の粒子よ 敵の動きを封じよ』」

ウィザードの足下には氷が発生し、地と彼の足を繋いだ。

「やった!」

ファイが喜んだのもつかの間、鈴はすぐに猫を嗾けてきた。

「痛ぅ・・・くっ。」

氷で捕らえられているウィザードをもとの人形に戻すことは出来ず、鈴は4体同時戦闘を行うこととなった。先ほどのように、一瞬ならば良いが、今回は長く続きそうで、鈴は体力と魔力の消耗が激しかった。

(もう本当に時間がない!これで決める!)

鈴は何かを決意したように、新たな人形を鞄から取り出した。

(6体同時戦闘はしたことないけど・・・大丈夫!一瞬で勝負をつける!)

「『意志なきモノよ 我の魔力を捧げよう 意志あるモノとなり 命の律動を響かせ』・・・鈴鹿、もうケルベロスはいい、貴方はヒカルと共に桜を!白姫は小狼を、アリス・・・貴方はあの『守護者』を倒して。」

四肢がバラバラになるような痛みと、頭が割れるような頭痛が鈴を襲う。だからこそ速く決着をつけたいのだ。

鈴鹿はすでに地に伏しているケルベロスから離れると、鈴の命令通り、ヒカルと交戦中の桜へ攻撃を仕掛ける。

「きゃあぁ!」

スピードの速い2対からの攻撃を避けられるはずもなく、桜は倒れる。

「桜!!」

小狼は目線だけを桜に向ける。海斗の攻撃を防いでいるせいで、駆け寄ることは出来ない。

防ぐだけで精一杯の小狼は、横からくる白姫の攻撃を避けられずに、彼女の蹴りを腹に受け、数メートル吹っ飛んだ。

ファイも、何とか猫だけは防いでいたが、その攻撃にアリスも加わり、防御も長くは持たなかった。

桜達4人は、皆地に伏して動けなくなった。

「くはぁ、はぁ。」

鈴はペンギン大王に座り込み、喘ぐように息継ぎを繰り返す。海斗に氷を砕いて貰ったウィザードも含め、全ての人形を、もとの姿に戻す。

「大丈夫か?鈴。」

「うん・・・大丈夫。こんなきつい戦闘初めてだから疲れちゃっただけ。」

海斗に心配かけてはいけないと、鈴は笑顔で返事をする。

「そうか・・・でも、もう終わりだぞ。とどめを刺してくる。」

海斗ははじめに、『守護者』であるファイの前に立ち、手に握っていた剣を大きく振り上げた。

海斗が高々と上げた剣を振り下げようとした手に力を込めた・・・その時。

「海斗!!逃げて!」

風を切り、大地を砕くような音と、鈴の叫び声が聞こえる。

海斗は何がなんだか理解できないまま、反射的にその場を退いた。

海斗が今ままで立っていたその場を、黒い大きな鎚(つち)が激しく回転しながら通り過ぎる。

アレに当たっていたら、海斗はひとたまりもなかっただろう。

「何だ!」

ブーメランのように、弧を描き、その鎚は持ち主の手に戻る。

見るからに重そうな金属製の鎚を投げたのは、華奢な少女だった。年は高校生か大学生・・・海斗達よりは年上だろうが、それでも若い女性だ。

その少女の隣には、この人が鎚を投げたと言われれば納得してしまいそうなほどがっちりとした体格の男性だった。

「誰だてめぇら!!邪魔するな!」

海斗は鈴のそばまで戻ると、2人をにらみつけ、怒鳴った。

「邪魔するなって言われても、仲間がやられそうなのにほっとけないでしょ?」

少女は小さく微笑むと、倒れているファイ達に近づいた。

「・・・仲間?」

「そうだよ。はじめまして『時空神の騎士』さん。私たちの事を知らないかな?」

尋ねる少女に、「知らない」といったふうに海斗は首を横に振る。しかし、鈴は心当たりがあるようだ。

「彼らの仲間・・・もしかして。」

鈴は自分たちにとって、あまり良くない答えにたどり着いてしまった。

「多分貴方が考えているとおりだよ。私は元『玄武の守護者』の猫依譲刃(ねこいゆずりは)そして彼が、私の『近衛』の志勇 草薙(しゆうくさなぎ)さんです。」

草薙と紹介された男は、譲羽の隣で海斗達に小さく会釈した。

(最悪・・・私、もう戦えない。)

最後の6体同時戦闘で全ての魔力を使ってしまった。人形を操るのはおろか、動くのすらつらい状態だ。

「そっちの女の子はもう戦えないよね?諦めて退いてくれるなら、見逃してあげるよ。」

「ふざけんな!!」

海斗は剣を構えると、譲羽に向かってかけだした。

「うおっと!」

譲羽を庇うようにして草薙は立ち、海斗の振り落とした剣を両手で挟んだ。『白羽取り』というやつだ。

草薙は海斗の剣を手に挟んだまま、片足を蹴り上げて海斗の腹に命中させる。

剣を握っているせいでろくな防御も出来ず、海斗はそのまま後ろに吹っ飛んだ。

「ぐぅ・・・。」

「海斗!!」

鈴は駆け寄ろうと試みるが、体が思うように動いてくれない。人形を使おうにも、魔力はほぼからで、動く気配はなかった。

「私たちは貴方たちと戦いに来たんじゃないよ・・・ファイ君たちを無事に返してくれればそれでいいの。」

譲刃は言う。そこには皮肉もなければ挑発の色も見られない。ソレが本心である証拠だ。

「・・・私たちがひけば手を出してこない?」

「うん。・・・草薙さんもそれでいいよね?」

譲刃は同意を求めるように草薙を見る。

「嬢ちゃんがそれでいいなら、俺には文句を言えんざ。」

譲刃の意志だから・・・そうは言うが、草薙とて鈴達のような子供との戦闘は望まない。

「・・・分かりました。今日の所は退きます。・・・海斗。」

動けないから運んで。そういうように海斗にむかって手を伸ばす。

海斗はその手を受け取るが、納得いかないと顔に書いてある。

「いま無理をして戦っても怪我をするだけだよ・・・今日はいったん退こう・・・ね?」

疲労の酷い鈴の体の心配もあってか、海斗は渋々頷くと、鈴に肩を貸し、譲刃達を睨んだ。

「今日は退くが、あきらめないぞ!今度はお前達も倒す!!」

そう吐き捨てて、海斗と鈴はその場から去っていった。

「さて、と。風さん達と合流しましょうか?私たちは回復はできないからね。」

譲刃はポケットから携帯電話を出すと、風に公園に来るようメールを送った。

自分たちが向かえたらいいのだが、あいにく草薙と2人ではここにいる全員は運べなかった。

「《『時空神の騎士』達は退きました。ファイ君達が酷い怪我です・・・ペンギン公園に来て下さい。   譲刃》」

風は携帯に届いたメールを読むと、とくに返信はせず携帯を閉じてポケットに戻した。

「あちらも終わったようですわね。ファイ達が怪我をしているようですので、急いで向かいましょう。」

風達もとっくに戦闘は終わっており、今は神社から少し離れた場所で、知世達と合流していた。

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