Fanfic

四神の封印と四神の贄巫女

夕日は沈み、辺りは闇に包まれ始める。その中で、黒鋼から流れる血は朱く輝いて見える。

「黒鋼さん!!・・・いやぁ!」

知世は目の前で、大量に血を流し倒れている黒鋼に駆け寄った。

「・・・酷い。」

知世は絵里花と紫呉をにらみ付ける。

「そんな怖い顔しないでよ。私たち『時空神の騎士』の目的は、再封印を阻止すること。そのためには、『封印の執行人』である彼か、『贄巫女』である貴方に死んでもらう必要があるの。彼が嫌がるだろうから貴方には手を出さなかったのに・・・感謝して欲しいわ。」

絵里花は冷酷な笑みを知世に向けた。

「・・・絵里花さん。」

あまりの物言いに、紫呉は非難の目を向ける。絵里花は紫呉を軽く睨むと、顔を背けてしまった。

「まぁ、どちらかに死んで頂かなくてはならないのは事実。・・・怪我をしたくないのなら、さがっていて下さい。」

「嫌です!!」

知世は血まみれの黒鋼を抱きしめ、その場を動こうとはしない。

「どけと言ってるんだ・・・。」

先ほどまでの温和な雰囲気はどこかへ消え、鬼のように鋭い視線を知世に投げかけた。

知世はビクッと肩を振るわせたが、いまだにその場を動こうとはしない。

「紫呉はキレると怖いわよ〜さっさと退きなさい。綺麗な顔に傷が付くのは嫌でしょう?」

知世は首を横に振る。

「もう!!面倒だわ!2人仲良くいかせてあげる!」

知世の頑な(かたくな)な態度にしびれをきらしたのか、絵里花は銃口を2人に向けた。

紫呉に同意を求めるような視線を送ると、紫呉も仕方がないと言うように、首を縦に振った。

「・・・さようなら。」

2発の銃声が辺りに響く。絵里花の銃から放たれた銃弾は、真っ直ぐに知世と黒鋼めがけて飛んでいった。

知世は覚悟を決めるように、堅く目を瞑った。

しかし、銃弾はいっこうに自分に届かない。不思議に思い知世は目を開くと、自分たちの周りに盾になるかのように風が渦巻いていた。

「・・・これは。」

紫呉はその風の盾を見て、何か言葉を発しようとしたが、自分たちに飛んでくる何かに気づき、すぐにその場から飛び退いた。

「絵里花さん!!」

その声で、絵里花も異変に気づき、すぐに飛び退く。

先ほどまで紫呉達が立っていた場所に、数本の矢が突き刺さった。

紫呉達を追うように、暗闇から次々と矢が放たれる。その矢は紫呉達を黒鋼達から遠ざけるように放たれる。

「っくそ!!『この世に存在する大地の眷属 我が身を守る盾となれ』」

紫呉は矢を避けるのが面倒になったのか、大地の盾を作り、暗闇からの攻撃から身を守った。

「一体なんなのよ!!」

状況の理解が全く出来ずに、絵里花が癇癪(かんしゃく)をおこす。

「・・・もしかして。」

絵里花の態度には慣れているのか、特になだめる事もせず、自分の思考を巡らせる。

正体を確かめようと、紫呉は杖を持つ手に力を込める。

「『追尾の魔力を宿す風の眷属 我が敵を捕らえよ』」

紫呉がそう唱えると、紫呉の周りに発生した風は、矢が飛んできた方向に伸びていった。

「・・・・捕らえたの?」

矢が静まったので、絵里花が大地の盾から顔を除かせた。

刹那・・・・辺りの風が一瞬凪いだ。

「駄目だ!絵里花!!」

紫呉は絵里花の腕をひっぱると、再び盾に身を隠した。絵里花が顔を引っ込めた瞬間、突然、辺りの木々を強く撓らせる(しならせる)程の暴風が2人を襲った。

「大丈夫ですか?」

自分の腕の中で顔を埋める絵里花に声をかける。

「あ、ありがとう・・・平気よ。一体なんなの?あの矢といいこの風といい。」

さすがの絵里花も今のには驚いたのか、顔からは冷や汗が流れている。

「・・・多分。」

「・・・多分?」

それだけ言うと、紫呉は絵里花に小さく耳打ちをした。絵里花は訳の分からないまま、紫呉に言われた通り、再び銃を構えた。

狙うのは矢の飛んできた暗闇ではなく、倒れたままの黒鋼と、それを支える知世・・・

「きゃあぁぁぁ!!」

再び自分たちに向けられた銃口に知世は叫び声をあげる。

「『防りの風』」

辺りに優しい声が響いたと思うと、先ほどと同じような風の盾が知世達を守った。

それを見た紫呉は、何かを確信したように、その場に立ち上がり、大地の盾を地に戻した。

「・・・やはり貴方ですか。」

風の盾が消えたかと思うと、そこには先ほどまでは無かった人影が存在した。

「『白虎の守護者』・・・鳳凰寺風。」

そこに立っていたのは、紛れもなく知世達の担任である鳳凰寺風だった。

「・・・鳳凰寺・・・先生?」

信じられないというように風に声をかけた。しかし、振り向いた女性は確かに風だった。

「・・・どうして?」

「説明は後です・・・黒鋼は酷い怪我ですわね・・・『癒しの風』」

風がそう唱えると、温かい風が黒鋼を包む。すると、みるみるうちに、黒鋼の傷が塞がっていった。

「・・・っ!!何するのよ!」

折角ここまで追いやったのに、再びスタートラインに戻された気分だった。

絵里花は怒鳴り散らし、紫呉は冷ややかに風をにらつけた。

紫呉の手は、今にも風に襲いかかりそうな絵里花の腕を掴んでいた。

「どうして止めるの!?」

「貴方を傷つけたくはないからです。」

「この至近距離で弓矢が何の役に立つって言うのよ?魔法だって、近づけば自分も巻き込まれる可能性があるから使えないでしょ!?」

絵里花の武器も銃なので接近戦には向かないが、護身用のナイフを装備していた。訳の分からない!と紫呉をにらみ付ける。紫呉はそんな絵里花に困ったように笑顔を向けると、再び風を睨んだ。

「本当に、彼女一人なら貴方に任せたでしょう・・・彼女一人ならね?」

「・・・どういう意味?」

絵里花に質問され、紫呉は風から少し離れると杖を構えた。

「『この地に住まう大地の眷属 矢となって我が敵に降り注げ』」

紫呉の足下の土は。硬度を増し矢となって風に襲いかかった。

風は守りの魔法を唱える気配はない。絵里花はいける!と心の中で思ったが、紫呉はそういった風には考えず、ある人物の登場を待った。

大地の矢は風に届くかと思われたが、風の少し前で、何者かの剣撃によってぼろぼろに砕かれてしまった。

「やはり、鳳凰寺風がいるのに貴方がいない訳がありませんね・・・『近衛』のフェリオ・マクシミリオン。」

身の丈ほどの大剣を軽々と構え、風達を庇うように紫呉達に牽制をかける。

「俺の奥さんと生徒を傷つけられちゃ困るからな。」

フェリオは威嚇するように不適に微笑む。

「・・・フェリオ先生まで!?」

目の前で何がおこっているのか、頭が追いつかない。風にフェリオと自分たちの学校の先生が当然のように現れ、敵と対峙している。

「とりあえずこの場を離れろ。」

「あなたは黒鋼から虞虞を預かっていますわね?その子で黒鋼を運んで下さい。」

知世と黒鋼を庇うようにして2人は立ち、風は視線を知世に向けそう指示する。

「・・・わかりました。」

知世は自分のポケットから紅い勾玉を取り出す。黒鋼に教えられた、魑魅魍魎の召還の方法を思い出す。

「『使役の紋によって門の内に封印されし者よ。我が呼び声によって開かれた門より出でて我の力となれ。来たれ!虞虞。』」

勾玉は知世の手の上で発光し、空中に一つの紋が浮かび上がる。

その紋より、獅子の姿をした虞虞が現れた。

「《我に用か・・・主の巫女よ》」

虞虞は知世の前に頭を垂れる。

「私と黒鋼さんをここから運び出して下さい。」

「《御意》」

指示するとおり黒鋼を虞虞の背中へと乗せる。知世も虞虞の背に乗る。すると虞虞は空高く飛び上がりその場から姿を消した。

「邪魔をしないでよ!よくも・・・・」

絵里花は怒ったように銃を握る手に力をいれ、2人に銃口を向ける。

「絵里花さん・・・2人は強いですよ。気をつけて下さい。」

「言われなくても!」

絵里花は引き金を力強く引き、一発の銃弾が2人めがけて飛び出した。

それが戦闘開始の合図であるかのように、風とフェリオは左右にとびその銃弾を避けると、2人に向かっていった。

▲Page Top(T)

←Back(B)

© 2003-2006 sarasa