Fanfic

四神の封印と四神の贄巫女

考えてみると割と友枝町の中心に位置する友枝高校から、月峰神社は東に。ペンギン公園は南にある。

青龍、朱雀が守護する方角と同じだ。

黒鋼達に尋ねると、他の2つの封印もそれぞれの方角にあるらしい。

特にこれといった会話もなく、友枝高校から10分ほど歩くと、月峰神社に着いた。

月峰神社の1人娘の観月歌帆はイギリスに行っているため、今は日本にはいない。

「ここは桜ちゃんが最後のカードである『地』を封印した場所ですわ。」

少し得意げに知世は説明する。

「知ってる。」

「え?」

「木之本がどこでカードを手に入れたか。クロウカードを、その・・・サクラカードか?に変化させたかも、カードに関する全ての情報は本家の『リード家』から与えられた。」

カードに関する知識は黒鋼達よりあると思っていた知世は少し拗ねたような気持ちになる。

そんな知世の様子に気づいたのか、黒鋼は苦笑を漏らす。

「まぁ前にもいったが、俺たちは情報だけあってその場にいた訳じゃねぇ。俺たちよりお前の方がカードのことをよく分かってると思うぜ?」

黒鋼の何気ないフォローに知世は気を良くしたのか、小さく鼻歌を歌いながら大きな月峰神社の鳥居を通った・・・・その刹那。

「大道寺!!」

知世の耳に黒鋼の声と爆音が届いたのはほぼ同時だった。

「・・・え?」

知世は自分に何が起きたのかまだ理解出来ていなかった。

黒鋼が自分を呼ぶ声と爆音が聞こえたかと思うと、いつの間にか自分が黒鋼に抱きかかえられ、先ほどまで立っていた場所から数メートル移動していた。

そして目の前は白い煙と砂埃が立ちこめていた。

「大丈夫か。」

知世に怪我がないか確かめるが、知世には特に怪我はなく、黒鋼はホッと安堵のため息をつく。

今立っている所から、鳥居から離れるように数歩後ずさる。

今日は風か少しでていて、数秒すると知世達の視界を悪くしていた煙と砂埃が消え去る。

知世は自分がさっきまで立っていた鳥居の下に目をやると、そこは何かが焼けこげたかのように黒く色づいていた。

そして、黒鋼がそうしているように、知世は目線を上に移す。

「貴方達は!」

鳥居の上に立っていたのは、昨日自分たちに接触してきた『時空神の騎士』の有間紫呉・・・そして、彼のパートナーと言われている水戸絵里花だった。

「私は初めましてかしら?もう知ってると思うけど、紫呉のパートナー、水戸絵里花よ。よろしくね。」

雪のように白い肌に咲く薔薇のように紅く色づく唇が可愛らしく微笑みを作る。

薔薇・・・とは絵里花の為にあるような花だ。

綺麗な花には何がある?

「何をしに来たか分かるわね?青龍の『守護者』に『贄巫女』さん。」

再びつくった笑みは先ほどの微笑みより毒々しく紅くみえた。

どうやら綺麗な花には棘だけでなく毒が含まれているようだ。

「俺たちの邪魔をしに来たのか。」

抱きかかえていた知世をおろし、自分の後ろに庇うように移動させ、紫呉達をにらみ付ける。

「その通りです。」

答えるのは紫呉。丁重な声音で返事を返す。

「それが私たちの仕事なんだもの。当然でしょ?」

身に纏っている制服のスカートを少しだけあげると、黒いホルダーが覗いた。

「さぁ〜て、どちらが先に私たちの相手をしてくれるの?」

絵里花はホルダーから銃を抜く。紫呉は空中に描いた魔法陣から杖を取り出した。

戦闘のスタイルは絵里花がガンナー。紫呉は魔法使いのようだ。

「っち!!」

絵里花は鳥居の上から黒鋼達めがけて銃を撃つ。

黒鋼は再び知世を抱きかかえると、数歩飛び退き、近くにあった大木へと身を隠した。

「ここでじっとしてろ。」

黒鋼はその大木に知世を残し、布を巻いて背中に担いでいた銀竜を抜いて、絵里花達に向かっていった。

「黒鋼さん・・・。」

知世は心配そうに顔を除かせるが、少しでも木から体をだすと、容赦ない絵里花の弾丸が飛んでくる。

「『来たれ!飛妓(ひぎ)』」

黒鋼がそう唱えると、宙に現れた紋から、鳥の姿をした魑魅魍魎が姿を現した。

「『憑依』」

飛妓は空中に弧を描くように羽ばたいた後、黒鋼の中に吸い込まれるように消えていった。

いまだ鳥居の上から動かない2人めがけて黒鋼は勢いよく地を蹴った。

地上から鳥居の上までは10メートル近くある。その高さを、黒鋼は飛び上がった。

「な!」

さすがにそれには絵里花も驚いたのか、気の抜けた声をだした。

紫呉は予想の範疇(はんちゅう)だったようで、表情を変えず、鳥居の上から絵里花の腕を引いて飛び降りた。

鳥居の近くにあった木をクッションにし、地上と足を付くと、黒鋼の次の攻撃に警戒する。

「『来たれ!檎熔(ごよう)』」

黒鋼の手に握られた数珠のようにつなげられた勾玉の一つが光り、飛妓の時のように、宙に現れた紋より、大蛇が現れた。

黒鋼が手で合図をすると、檎熔は絵里花と紫呉めがけて突進をする。

それを絵里花は上へ、紫呉は左へと避けると、絵里花は重力に従って落ちていく途中で銃を何発も打ち込み、紫呉も攻撃魔法の呪文を唱えた。

「『優麗に吹く風の眷属 煌めく刃となりて敵を刻め』」

詠唱が終了すると、辺りの風がかまいたちとなって檎熔に襲いかかる。

絵里花の攻撃も同時にうけて、檎熔は朱い血を纏い地に伏した。

「ちっ・・・やっぱり檎熔じゃ駄目か。」

黒鋼は奥歯をかみしめぴくりとも動かない檎熔を勾玉へと戻す。

基本的に主のいる魑魅魍魎に死はない。大きな傷を受けたので回復にだいぶ時間がかかるが、檎熔は死んだ訳ではない。

檎熔は黒鋼が使役する魑魅魍魎の中では中堅クラス。それでも、並大抵の人間相手ではかなうものはいなかった。

それが、あっというまに倒されてしまった。

この2人は強い・・・・黒鋼はそう確信する。

「・・・黒鋼さん。」

知世は自分を押さえるかのように、服の胸元を強く握った。

そうでもしなければ、今にも自分はその場から駆けだしてしまいそうだからだ。

1対2。どう考えても黒鋼が不利だ。いくら黒鋼が多くの魑魅魍魎を使役していても、その全てを同時に召還することは不可能だ。

知世はここに来る途中に黒鋼が漏らしていた言葉を思い出す。

『確かに俺はこの勾玉の数だけの魑魅魍魎を使役しているが、こいつらをいっぺんに召還はできねぇ・・・強い魑魅魍魎であるほど召還に時間と魔力がかかる。中堅クラスであっても、同時に扱えるのは3体・・・かなり無理をして5体が限界だろうな。』

黒鋼はそう言っていた。

もし、彼らが中堅レベルの魑魅魍魎を凌駕する実力の持ち主であれば、黒鋼はそれ以上の魑魅魍魎を喚(よ)ばなければならない。それには時間が必要だと言っていた。

それがほんの数秒であったとしても、1人で2人の敵の相手をしている黒鋼に、そのような時間はない。

(もし・・・私が戦えたのであれば・・・)

相手にならなくてもいい・・・黒鋼阿が魑魅魍魎を喚ぶ時間稼ぎさえ出来ればいいのだから。

知世はポケットに入れてある勾玉を、スカートの上から握りしめた。

「やめろ。」

黒鋼は檎熔に続き、新たな魑魅魍魎を召還し、紫呉達に嗾ける(けしかける)。そして、まるで知世が考えていることが分かっているかのように、知世がとろうとしている行動に制止をかける。

「どうしてですか?数の上で不利な今の状況で、貴方は強い魑魅魍魎を喚ぶ必要がある。そのためには時間を稼がなくては!」

知世は必死に訴える。これではただ守られているだけだ。

「駄目だ!アイツらはお前が戦えないと思っているから手を出さねぇ。だから、邪魔な俺を2人がかりで先に倒そうとしてるんだ。俺が倒された後なら、おまえを楽に始末できるからな。だが、お前が少しでも戦えると判断した瞬間、お前も狙われるぞ!この状況で、絶対にお前を守れるか分からない。だから、ここで静かに待っていろ、そのほうがやりやすい。」

自分が動くとかえって黒鋼の邪魔になる。知世は納得したように、勾玉を握ったまま。

その大木に身を潜めた。

「さすが忍者の末裔だけあってスピードはピカイチね・・・」

絵里花がそうぼやいた。

実際、黒鋼のスピードは、『時空神の騎士』内でもトップクラスのスピードの絵里花にさえも勝っている。

絵里花が正確に狙い定めて放つ銃弾も、黒鋼には当たらない。そこだけ見れば、黒鋼が有利にだろう。しかし、相手は2人。普段からパートナーとして一緒に行動している紫呉は、こういった相手と対峙した場合、どのように戦えばいいのかを理解していた。

「僕が足を止めます。しっかりと仕留めて下さいね。」

「わかったわ。」

絵里花の返事を聞くと、紫呉は手に持っていた杖を前に掲げ詠唱を始めた。

「『剛なる大地の眷属よ 彼の者を射抜く剣となれ』」

黒鋼がたっている辺りの土が、地震でも起きたかのように揺れる。

黒鋼がその場から飛び退くと、今し方まで黒鋼が立っていた地面が、下から貫くように鋭くもりあがった。

「くそっ!!」

紫呉の攻撃はそれだけでは留まらず、黒鋼を追うように地面はけたたましく襲いかかる。

それから逃げる黒鋼は、逃げ道を紫呉に誘導されているとは気が付かない。

紫呉の意志通りに逃げる黒鋼に、絵里花はねらいを定め、発砲する。

発砲を耳だけで感じ、とっさに適当な方向に逃げた黒鋼は、急所こそは外れたものの、絵里花の銃弾を足に受けてしまった。

「外した!?」

「いえ・・・足に当たりました。これで、スピードはかなり落ちるはずです。」

黒鋼は膝をつくことはないが、太ももからは、大量の血が流れ、制服を朱く染めた。

「くっ・・・」

痛みに顔を蹙める(しかめる)が、気を抜いている暇はない。

紫呉と絵里花の攻撃は、やむことなく自分に向けられている。

少しずつ・・・だが、確実に、黒鋼のダメージはたまっていく。逃げるのがやっと・・・そういう状態だ。

「『轟々と燃え上がる火の眷属 我が敵を焼き払え』」

紫呉が放った火系攻撃魔法は、攻撃範囲が広く、今の黒鋼では避けることが出来ずに、その攻撃をほとんど受けてしまった。

黒鋼は耐えることが出来ずに、その場に伏してしまった。

▲Page Top(T)

←Back(B)

© 2003-2006 sarasa