Fanfic

四神の封印と四神の贄巫女

黒鋼達が家に着き自宅の扉を開けると、中からは人の気配がした。

一瞬敵かと身構えたが、感じたことのある気配に緊張が解かれる。

「おかえりなさい。」

案の定、2人を迎えたのは『白虎の守護者』鳳凰寺風その人だった。

「どうやって入ったんですか?」

マンション玄関と各階には暗証番号を入力しないと開かない扉になっているし、玄関の扉だって、しっかりと鍵がかかっていたはずだ。

「それは企業秘密ですわ。」

風は楽しそうに、手に持ったお玉を振って見せた。企業秘密と言われたが、だいたいのことは想像がつく。暗証番号はマンションの管理システムにハッキングをかければ入手できるだろうし、風の器用な手先なら、ピッキングくらいお手の物だろう。

「不法侵入だぞ。」

黒鋼は不機嫌そうに風を睨んだ。

「怖い顔しないで下さいな。せっかく夕食の準備をして差し上げたというのに。」

「わ〜ありがとうございます。」

いつもは黒鋼とファイが交代で家事をするのだが、ハッキリ言って2人とも料理の腕は微妙だった。食べれないこともないが、それほどおいしいとはお互いに感じていない。

「お〜おかえり。」

黒鋼の眉間に刻まれた皺はさらに深さを増す。リビングには我が物顔でフェリオがくつろいでいた。

「なんでお前までいる。」

あからさまな迷惑声を投げかける。

「俺は風の『近衛』だぞ、ぞばについていなくてどうするんだ。」

「こいつは『守護者』としての任務を終えただろう。もう敵にも狙われない。そうでなくてもこの女に『近衛』など必要なものか。」

黒鋼はブレザーを脱ぐと、ソファーに投げ捨てた。風はそれを拾い、ハンガーに掛ける。

まるで母親と息子のような様子だ。

「あら、失礼ですわね。私にも『近衛』は必要ですわよ。か弱いですもの。」

自分でいいながら、か弱いという言葉には含みがあった。

「神弓の鳳凰寺風が良く言う。」

神弓とは風に与えられた称号で、『鳳凰寺家』の中だけでなく、他家の誰よりも弓術に優れた風にはピッタリの称号だった。

「で?用事というのはなんなんだ?」

風が用意した豪華な夕食を箸でつつきがら黒鋼が尋ねた。

食事が終わってからでもいいのに、と風は呆れたような顔をしたが、お箸を机に置き、答えた。

「『時空神の騎士』が動きを見せています。」

黒鋼とファイは一瞬だけ動きを止める。そろそろ動き出すだろうと思っていたので、今日の帰りに探り(さぐり)をいれてみたのだが、敵が行動を始めた形跡はなかった。

「上から命が下ったかは分かりませんが、見知った顔を友枝高校の近くで見かけましたわ。」

「見知った顔?」

「はい。5年前。私が『白虎の再封印』を行ったときに、何度かお会いしました。」

そのたびにそれらを打ち負かしたであろうことは、風とフェリオの笑顔が語っていた。

「随分と大きくなられていたので、初めは分からなかったのですが・・・」

「そんな話はいい。一体誰だ。」

敵が誰だかは知りたいが、そいつの過去の話や成長ぶりはどうでもよかった。

「藤之杜(ふじのもり)高等学校をご存じ?」

「藤之杜・・・?ああ!都内でもトップクラスの超難関進学校。」

ファイは心当たりがあるらしいが黒鋼は表情から察するに、知らないようだ。

いつも全国模試で上位を占めるのは、藤之杜の生徒。偏差値70越えの名門中の名門校だ。

「ちなみにこれが、前回行われた模試の結果です。」

風がポケットから取り出した紙には、模試の結果がコピーされていた。上位10人を藤ノ杜で埋められている。

「これがなんなんだ。」

「一位の人の名前を読み上げて下さる?」

漢字だらけでファイにはとても読めそうになかったので、黒鋼が一番の者の名前を見る。

「有間・・し・・ぐれ、か?」

「そうですわ。有間紫呉(ありましぐれ)。現在藤之杜高等学校3年。生徒会長で、過去にあったテストは全て学年トップですわ。」

「・・・で?」

だから彼がどうしたと言うのだ、と黒鋼は頭を悩ます。

「まだ分かりませんの?彼が5年前に私達と対峙した『時空神の騎士』の一員ですわ。」

「こいつが!?」

確かに『時空神の騎士』の者は天才肌の者が多い。紫呉もその中の一人のようだ。

「お前がこいつに会ったのは5年ぶりか?」

「そうです。再封印を終えてからは一度もお会いしませんでしたからね。」

「じゃあ、この情報はどこから・・・」

風は机の上に何枚もの紙を広げる。

紫呉の全てのテストの成績に、家の住所から友人関係まで全てがそろえられていた。

「私の情報網なら、これくらい集めるのには1時間とかかりませんわ。」

風は得意げに、もう一束の紙を机に出した。

「これは?」

「今日、有間さんとご一緒におられたかたの情報ですわ。多分彼女も『時空神の騎士』の一員でしょう。」

「黒鋼・・・これなんて書いてあるの?」

漢字が苦手なファイは全てを黒鋼に任せる。少しなら読めなくもないが、読んで貰った方が楽だからだ。

「水戸絵里花(みとえりか)。私立白鳥女学院2年A組。出席番号36番。生徒会副会長。容姿端麗才色兼備、父親はゲーム会社社長、母親は・・・・!!」

黒鋼は絵里花の母親の事が書かれた欄で目をとめた。

「どうしたの?何が書いてるの?」

急に読むのを止めた黒鋼を不思議そうに見上げる。

「母親は・・・現東京都知事。」

「東京都知事!?凄い人の娘さんだね〜」

一番最初の紙に張ってある写真の絵里花は、確かにニースで何度か見かけた、東京都知事の水戸紀里華(きりか)と雰囲気が似ていた。

「東京都知事まで『時空神の騎士』なのか?」

政治面で影響力が強い者が敵にいるのは正直あまり良くない。いろいろと面倒なことがある。

「それはわかりません。私の情報網がいかにすばらしくても、『時空神の騎士』の内部には潜入できませんの。一般の情報ならともかく、『時空神の騎士』としての情報はほぼ皆無ですわ。」

くやしいがそれが現実だ。過去に一度、『時空神の騎士』内部のコンピューターにハッキングをかけた風は、危うく罠にはまりかけ、逆にこちらの情報を盗まれそうになった。それ以来、『時空神の騎士』内部には手を出さないでおいたのだ。

「もしかしたら、水戸さんのほうは『時空神の騎士』とは無関係かもしれませんが、有間さんのほうは絶対です。彼には注意なさい。」

「・・わかった。」

「ラジャ〜。」

写真の顔を頭に焼き付けておく。いざ本人を見かけたときに、素早く対処ができるようにと。

「一つ言い忘れていましたわ。」

玄関で靴を履き、扉に手をかけたときに風は何かを思い出したように黒鋼達を振り返った。

「近々、元『玄武の守護者』が友枝町に来ますわ。」

「・・・あいつが?」

「はい。本来は他家の封印に私達が関わるのはあまりないことですわ。ですが、それほどまでに今回の再封印は大切なのです。だから、『時空神の騎士』達と戦う戦力として、来て下さいます。」

黒鋼は表情を暗くする。風はとくにどちらの再封印が大切なのかは言わないが、言われなくても自分の方だと分かっているからだ。

「あまり暗くならないで。私達はつねに貴方達の味方です。些細なことでも構いませんわ、何かあったら相談なさい、いつでもちからになりますから。」

風は優しい笑みを浮かべ、ファイと黒鋼の頭を優しく撫でた。

「ありがとうございます。」

「それじゃあな。」

「はい。お気をつけて。」

風とフェリオは帰っていた。扉が閉まり、オートロックがかかったのを確認すると、2人もお部屋の中へと戻っていった。

「まさか彼女まで出てくるとはね〜やっぱりあの人もついてくるのかな?」

黒鋼とファイは向かいあうようにソファに座った。ファイが持ち出した話は、『玄武の守護者』の事だ。

「『近衛』なんだから当然だろ。」

「全ての『守護者』が大集合だね。『時空神の騎士』もこれじゃあ手出しできないんじゃない?」

「あまり楽観的に考えるな。協力してくれるのはありがたいが、あくまで俺たちの『封印』だ。非常時いがいは力を借りるつもりはない。」

黒鋼はそれだけ言い残すと、ソファーから立ち上がり、部屋へと戻っていった。

「ぶ〜ぶ〜相変わらず堅いな〜黒鋼は。」

そう言ってファイも部屋へと戻っていった。

▲Page Top(T)

←Back(B)

© 2003-2006 sarasa