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四神の封印と四神の贄巫女

屋上での話は切り上げて、帰る途中にスーパーに寄り食材を買って、5人は桜の家へ到着した。

「どうぞ。」

桜は玄関の扉を開けて、4人を招き入れると、2階からものすごい勢いでケロちゃんが飛んできた。

「お帰り〜お腹減ったぁ!!桜、昼飯・・・やぁ!?」

ケロちゃんは、桜や小狼達の他に人がいることに初めて気づき、自分の犯した失態をどのように誤魔化そうかと考えていた。

「・・・わい、人形?」

私たちに聞かれても・・・というように、桜は苦笑いを浮かべた。

「ボク達の事は気にしなくていいですよ〜初めまして『封印の獣』ケルベロス。ボクはファイ・D・フローライト。彼は・・・」

「白鷺黒鋼だ・・・。」

その名前に心当たりがあるのか、人形のフリをやめ、2人の側まで飛んで寄った。

「『フローライト家』に『白鷺家』・・・『封印の守護の一族』か?」

ケロちゃんは招かれざる客と対峙したように、緊張した雰囲気で聞いた。

「そうだ・・・。俺が『青龍』こいつが『朱雀』だ。」

「最近、東と南から嫌な気配があると思っとたら、封印が解けかけとったんか。」

「ちょっと待って!ケロちゃんは彼らのこと知ってるの?」

完全に彼らのことを理解したうえで会話をしているケロちゃんに、桜は驚きを瞳を向ける。

「当たり前やろ・・・『四神の封印』を張ったんはクロウやからな・・・わいもその場におった・・・」

ケロちゃんは当時を思い出す。クロウと共に封印の中のモノと戦った。今まで戦ったどのような敵よりも凶悪で強敵だった・・・。あのクロウさえもが苦戦するほどに。

「桜の家に来たっちゅうことは、協力でもしてもらおと思ったんか?話によると、再封印を邪魔する奴らがおるて聞いたけど。」

「違う。木之本と大道寺が『贄巫女』に選ばれたからだ。今日はその説明をしに来た。」

「何やて!!桜と知世が『贄巫女』!!」

ケロちゃんは瞳を大きく見開く。

「何でや!何で2人が!!」

怒鳴るようにケロちゃんはファイと黒鋼に詰め寄った。

「僕らが選んだ訳じゃないから聞かれてもな〜でも、桜ちゃんは、正統なクロウ・カードの継承者だし。桜ちゃんのお父さんはクロウの魂の持ち主じゃない、納得できない事はないんじゃない?大道寺さんの事は『朱雀の守護者』であるオレは知らないけど・・・」

ファイは黒鋼に目を向ける。知世が選ばれた理由は『青龍の守護者』である黒鋼のみが知っているから・・・。

「私が選ばれた理由・・・?」

知世も答えを求めるように黒鋼を見つめた。

「・・・・。」

黒鋼は言いにくい理由があるのか、口を開こうとはしない。

「理由も聞かずに協力はできませんわ。教えて下さい、白鷺さん。私は桜ちゃんのように魔力を持っているわけではないのに・・・」

「・・・大道寺は魔力がない訳じゃない。」

「・・・え?」

桜や小狼、ケロちゃんや知世本人もその言葉に驚いた。

「大道寺は・・・『初代青龍の贄巫女』の子孫だ。」

「!!」

「何やて!『初代贄巫女』の子孫・・・まてや、それやったら知世とお前は・・・」

ケロちゃんが言葉の続きを紡ぐことは出来なかった。黒鋼が鋭い眼光でケロちゃんがそれ以上話すことを、止めさせた。

「・・・し、しかし、知世に魔力はないやろ!?もしあったらわいが気づかんはずない!!」

「私も魔力を感じとることは出来るけど、知世ちゃんからそれを感じたことはないよ?」

「大道寺の魔力は普通の人間とは少し違う・・・肉体という殻が、体内にある魔力を閉じこめているだけであって、ちゃんと魔力は持っている。」

黒鋼の言葉に知世は返す言葉もない。自分に魔力があるなどと思ったことはなかった。

「殻に魔力がこもっとる・・・『先祖返り』か?」

「そうだ。」

「先祖・・・返り?」

知世はケロちゃんに尋ねた。

「先祖に強い魔力を持ってる奴がおった場合、何代も後の子孫にその魔力が現れる場合がある。知世の場合は『初代贄巫女』の魔力やな。」

「魔力がこもるとはどういうことだ?」

質問したのは小狼だった。

「普通、魔力を持った人間は、お母さんの腹の中で魔力と一緒に肉体が成長する。しかし『先祖返り』の場合は、先に魔力が成長して、その魔力を囲むように肉体が成長する。せやから、せっかくのおっきい魔力が肉体で蓋をされてしまうんや。」

「じゃあ、私の中には本当に大きな魔力があるのですか?」

「そういうことなんやろ・・・白鷺黒鋼。」

知世は自分に魔力があることが嬉しいのか、期待の眼差しを向ける。

「・・・そうだ。」

黒鋼のほうは知世とは対照的に、まったく嬉しくないような雰囲気を纏っていた・・・

玄関での会話もそこそこに、場所を桜の部屋に移した。

「どうぞ。」

桜は途中で買ってきた材料を使って、パスタを作り、みんなに出した。

「ありがとう。」

みんなはお礼をいって桜から皿を受け取った。

「さっさと話の続きをしんかい。」

桜と知世が『贄巫女』に選ばれた事が気に入らないのか、ケロちゃんは不機嫌そうにパスタをフォークに絡ませて口に運んだ。

「クロウの封印はこの友枝町を中心に施してある。だが、封印は一つで成り立っている訳じゃない。四方の四神の力を借りた四つの『四神の封印』によって中心にある『クロウの封印』が守られている。」

「ボク達はその『四神の封印』を守る『守護の一族』だよ。『四神の封印』がある限り『クロウの封印』は崩れない。だが一つでも『四神の封印』が崩れると、全てがドミノ倒しみたいに壊れちゃうんだ。だから崩れかけている二つの『四神の封印』を再封印しなくちゃいけないんだ。面倒だよね〜一つの封印を守るために四つの封印を守らなきゃならないなんて〜」

ファイは本当に面倒といったように肩を上下させる。

「仕方ないやろ・・・そんくらいせんと『アイツ』は封じられんかってんから・・・。」

ケロちゃんはファイと黒鋼をにらみ据えた。

「そう言えば封印には何が封印されてるんだ?」

当然の疑問を小狼は口にした。

「それは・・・。」

その質問にファイと黒鋼はおろか、ケロちゃんも口を閉ざしてしまった。

「??どうしたの?」

「あそこに封じられてるもんはお前らは知る必要はない。」

「どうしてですか?」

今言ったことだけでは納得がいかなかった。

「それは・・・。」

ケロちゃんは再び言葉を濁す。

「あそこに封じられてるものが、俺たちにとっちゃ悪もんでも、アレを正義という者がいるからだ。」

『贄巫女』になってもらうには、納得してもらわないといけない。

黒鋼は仕方なしに言った。

「どういうことですか?」

まだ意味を理解できず続けて質問する。

「ある一つの事を全員が正義と思う訳じゃない。たとえば戦争時、ある国で無敵を誇る英雄を、その国の者達は崇める(あがめる)が、敵国にしてみればそいつは、最も憎むべき相手じゃないのか?」

もっとものたとえに知世は頷かざるを得なかった。

海沿いや大きな河の近くに住む住人にとって、激しい雨は洪水を引き起こす災源(さいげん)だが、枯れ果てた地の住人にとっては地を潤す恵みの雨だろう。

一人の人間の死によって得をして喜ぶ者もいれば、大切な人を失って悲しむ者もいる。

この世には一つ物事にたいして+という者がいれば−という者がいる。

だからこそ世界は成り立つのだ。どちらにも傾かず均衡がとれた世界が。

「クロウは『アイツ』を悪と判断した。しかし正義と判断した者達がいる・・・。」

「それは誰?」

知世達は話題をそらされてしまった事に気づいていない。黒鋼はうまい具合にさきほどの知世達の質問をかわしたのだ。

「『時空神の騎士(クロノスナイト)』という連中だ。」

「『時空神の騎士』って・・・!」

知世は何か心当たりがあるのか驚いたように、瞳を大きく見開いた。

「知世ちゃん知ってるの?」

「最近母の会社と肩を並べる大手会社です。ここ半年で急成長して、先月の電子機器の売上高がうちより高いと、漏らしていました。」

「会社なのか!?」

日本でもトップクラスの大道寺グループに並ぶことを驚くよりも、クロウに敵対する者達が会社を開いている事に驚いた。

「会社の重役に『時空神の騎士』の幹部さんがいるだけで、彼らが僕ら『守護の一族』に対抗するために会社を開いた訳じゃない。」

「会社運営もそこそこに、本業は裏の世界の殺し屋集団って噂もあるがな。」

黒鋼は物騒な事を口にする。

「殺し屋とは穏やかじゃないな。」

穏やかじゃないのは小狼の心の中だった。正直、殺し屋が関わっている事に桜や知世を関わらせたくなかった。

「何を考えてるの?小狼君。僕らだって2人を危険な目にあわせたくはないよ。だから君にもこの話をするんだ。」

ファイはまるで小狼の心を読んだかのように話す。

「『時空神の騎士』と戦える人手が一人でも多く欲しい。君は『李家』の者だから、戦闘訓練を受けてるよね?」

肯定するように小狼は首を縦に振る。

ケロちゃんはなんだか納得のいかないと言った様子で口を開いた。

「お前らに『近衛(このえ)』はいいひんのか?」

「『近衛』?」

またも知らない単語に桜は首を傾げる。

「『守護者』や『贄巫女』はそう簡単に生まれん・・・だいたい50年に一人の割合でしか生まれん。まぁ、50年ごと位にに再封印は行われるから、その割合で生まれてくれればええねんけどな・・・。『守護者』と『贄巫女』はなによりも大切な存在や・・・絶対に死なされん。せやから2人を守る『近衛』がおるんや。お前らの『近衛』はどこにおんねん。」

ケロちゃんの質問に2人は顔をしかめる。またも答えにくい質問をされたというように。

「残念だけど、僕らに『近衛』はいない。」

「なんやて!!」

ケロちゃんは怒ったように2人に詰め寄る。

「何でおらんねん!!『近衛』のおらん『守護者』なんて聞いたことないで!」

「ボクの方は運悪くというか何というか『適正者』はいなかった。『近衛』になれるだけの力を持った『適正者』が。」

"ボクの方は"と言うことは黒鋼には別の理由があった。

「お前はなんでや?」

黒鋼はファイよりさらに言いにくい理由があるのか、口を開こうとはしない。

「なんでや?」

いっこうに口を開こうとしない黒鋼に変わって、ファイが説明した。

「『近衛』が任務を放棄して逃げたんだ。」

「・・・ファイ。」

咎めるような視線を投げかけるが、ファイは慣れているのか気にした様子はない。

「・・・任務を放棄した?」

信じられないといったふうに、ケロちゃんは今までの怒っていた態度とは裏腹に愕然とした。

封印の重要さを知っていて、そのような愚行(ぐこう)に出る者がいるとは思いもしなかったのだ。

「『近衛』は大事な『守護者』と『贄巫女』を守る重大な責任を背負うからね。よほど強い心の持ち主じゃなきゃ駄目だ。黒鋼の『近衛』に選ばれた人は実力はそこそこだったけど、意気地なしだったんだね〜自分が『近衛』に選ばれた次の日に一族から姿を消したよ。・・・だけど、無責任すぎるよね?残された親戚がどうなるかも知らずに。」

今までのにこやかな雰囲気はどこに消えたのか、ファイは氷の微笑を浮かべていた。

「・・・親戚の方はどうなるのですか?」

「厳しい罰が下るよ。・・・内容は聞かない方がいいと思う。」

ファイに微笑みかけられて、知世は背筋に悪寒が走るのを感じた。

「知世を脅かすなや。」

庇うように知世とファイの間にケロちゃんは立つ(浮かぶ)。

「脅してないよ〜本当のことを言っただけじゃん。」

「ファイ。悪ふざけが過ぎるぞ。」

「ぶ〜ぶ〜」

黒鋼にまで怒られて、ファイは不満そうに頬を膨らませる。そんな姿をみると、先ほどのファイとは全くの別人に思えた。

「・・・話を戻すぞ。木之本と大道寺には『贄巫女』になってもらう。今までの話を聞いていれば分かると思うが、拒否は出来ないと思え。」

「黒鋼こそ、それは脅しじゃん。」

そうしてでも2人に『贄巫女』になって貰わないと困るのはファイもだが・・・。

「・・・桜、大道寺。」

小狼は心配そうに2人を見た。桜と知世は何かを決心したような表情だった。

「私・・・『贄巫女』になるよ。それで大切なモノが守れるなら。」

「・・・私も。私でお役に立てるのならば。」

2人は穏やかに微笑んだ。

「ありがとう。」

「感謝する。」

ファイと黒鋼は心から礼を言った。

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