Fanfic

四神の封印と四神の贄巫女

確かにそこに存在しているのに『力』を持った者しかその場所を訪れる事は出来ない。

対価を払えばその対価に見合った願いを叶えてくれる不思議な店。

その家の前に黒鋼とファイはいた。

「相変わらず、少し入るのを躊躇う(ためらう)雰囲気だね。」

「馬鹿なこと言ってんな・・・行くぞ。」

黒鋼はずかずかと進んでいく。その後をファイがてくてくと追った。

「あれ?お客さんっすか?」

黒鋼が玄関に手をかけたとき、庭の方から声をかけられた。

声のした方を見ると、一人の少年が、庭掃除をしていた。

「てめぇは?」

この店にこんな奴はいただろうかと疑問に思い怪訝そうに尋ねた。

「あっすみません。俺、アルバイトの四月一日です。お客さん達侑子さんに用事ですか?」

「ああ・・・いるか?」

「いますよ。今呼んできますね。」

四月一日は箒をその場に置くと、広縁からでなく、わざわざ玄関から入っていき、奥の和室で休んでいた侑子を呼びに言った。

「侑子さん、お客さんですよ。ここに通しますか?」

侑子はうたた寝をしていたらしく、四月一日の声で目が覚めると、大きく背伸びをした。

「どんな?」

「金髪の人と黒髪で紅い目をした高校生です。多分友枝高校の制服だと思います。」

「いえ、いいわ。私が行くから・・・」

思い当たる節があるのか、侑子は自ら庭で待つ2人のもとへ出向いていった。

侑子の表情がいつものおちゃらけた顔ではなく、仕事の時の真剣な表情であることに、四月一日は気づいた。

「久しぶりね・・・あなた達が『守護者』になったとき以来だから、10年ちょいぶりかしら?大きくなったわね〜」

成長した2人を見て、昔を懐かしむように言う。

「お久しぶりです、侑子さん。」

「どうも。」

「相変わらず黒鋼は無愛想ね〜」

子供の時と変わらぬ態度の黒鋼の返事にすら懐かしいものを感じる。

「ふふ・・・まぁいいわ。四月一日・・・・。」

四月一日に近くに来るように呼びつけると、小さく何かを耳打ちした。

それを聞くと、四月一日はマルとモロを連れて、宝物庫へ向かった。

「例のモノを取りにきたんでしょう?今、四月一日に取りに行かせたわ。」

「どうも〜。」

「アレを使って、しっかりと再封印をして頂戴ね?封印の中の『アイツ』をあそこから出しては駄目よ。」

いつになく真剣な侑子の態度に2人も緊張した雰囲気で話をする。

「彼らの動きはどうです?封印を解きたくてうずうずしてるでしょう?」

彼ら・・・とは誰のことか、封印に関わっている者達なら、名を言わずとも分かる。

「そうね・・・特に『青龍の封印』の方はあと一回でも失敗すると、壊れてしまうからね。黒鋼は気を引き締めなくてはならないわよ。」

「ああ。」

この女もこのことを言うのかと黒鋼は正直うんざりしていた。

「アイツのような馬鹿な真似はしない。」と言ったものの、黒鋼は伯父の気持ちが全く分からないというわけではなかった。『巫女』と伯父の関係を考えると、むしろ伯父の選択のほうが正しいと感じることさえある。それでもそれを口にすることは出来ない。自分が彼と同じ選択をすることは絶対に許されないのだから・・・

「侑子さん・・・持ってきました。」

四月一日が持ってきたのは一本の刀と、謎の模様?だった。

侑子はそれを受け取ると、刀は黒鋼に、もう一つはファイに渡した。

ファイが模様を手にした途端、それはファイの背中に消えていった正確には背中にその模様が刻まれた。気にするようにファイは背中に手を回す。

黒鋼も鞘から剣を抜き取ると、確かめるように構えてみた。その剣の柄には龍の彫刻が施されている。

「『銀竜』に、フローライト家の『魔力の元』確かに渡したわよ。」

その2つは両家に伝わる家宝のようなモノで、再封印の際に『守護者』に侑子の手によって授けられる。

侑子は、封印を見護り『守護者』の助けとなる『管理者』だった。

「封印の事・・・しっかり頼んだわよ。」

2人は無言で頷いた。

2人は侑子の家から自分たちの住んでいるマンションに帰るとすぐに各自の部屋に向かった。2人は一緒のマンションの一緒の部屋に住んでいた。お互いに協力できるようになどと一族の者達は銘打っていたが、実際の所は万が一にも青龍の再封印を失敗させないためにファイを見張りに置いているようなものだった。

2人の部屋には各自パソコンが置いてあり、そのパソコンを起動させ、その中の幾つものプロテクトに守られた一つのファイルを開いた。

ファイはそのファイルに目を通す。

【木之本桜】

《クロウ・リードの魂の半身木之本藤隆の娘。

クロウ・カード(今はサクラ・カード)の継承者である。

『封印の獣』ケルベロスは木之本桜の家『審判者』月は木之本桜の兄、木之本桃矢の友人月城雪兎を仮の姿として生きている。

父は桜がクロウ・カードの後継者だと言うことは知らない。兄は感づきかけているので、彼の前での行動には注意・・・》

他にも得意科目、好きな食べ物など桜の情報は全て記されていた。

「彼女が今回の『朱雀の贄巫女』か・・・」

無表情のまま、ファイはパソコンの画面を見つめた。

同じ頃、黒鋼もファイと同じようにパソコンの画面を見つめていた。無表情で見つめていたファイとは違い、辛そうな面持ちで。

「・・・なんで今更。俺は初代じゃないんだぞ・・・」

パソコンの画面にはファイのパソコンと同じように、一人の少女の個人データが写っていた。

データと共に画面に映っているのは2枚の写真。

一枚は今回の『青龍の贄巫女』である・・・・大道寺知世の写真。

そしてその隣には知世と瓜二つの少女の写真。写真の下にはその少女の名前『白鷺知世』・・・備考の欄に『初代青龍の贄巫女』と書いてあった。

月曜日、2人は少し重い足取りで教室に入った。

『贄巫女』に選ばれた2人の少女に、自分たちの使命と、『贄巫女』の役目を伝えなければならなかった。

ファイはすでに桜との接触があったので、つれだして話をするのは幾分楽だろう。

しかし、口数も少なく無愛想な黒鋼がいきなり知世に話しかけるのは無理だろうと思い、ファイは桜に知世も連れて放課後に屋上に来るよう頼んだ。

一時間目が始まる頃には、すでに知世にその話は通っており、授業中に何の用事かを黒鋼に尋ねてきた。

「私と桜ちゃんに一体どのような用事ですの?」

先生に見つからないように教科書で口元を隠しながら小さな声で知世は聞いた。

「・・・。」

『贄巫女』に彼女たちが選ばれたことを今ココで言えるはずもなく、黒鋼は口を開こうとはしない。放課後に、と言うように目線を泳がせた。

知世は諦めたように小さくため息をつくと、再び授業に集中した。

放課後といっても、今週一週間は午前のみの授業なので、正午すぎには全ての授業は終了した。SHRが終わるとファイと黒鋼はすぐに屋上に向かい、桜たちもすぐに後を追った。

「こんな所に呼び出してゴメンね。」

屋上にいるのはファイと黒鋼、桜と知世と小狼だった。

初めは桜と知世のみを呼んだファイだったが、桜が小狼も良いかと尋ねてきたので許可をした。『李家』の者なら、全くの無関係と言うわけでもないので・・・

「ううん、いいんだよ。ところで何の用事なの?」

無邪気に笑顔を浮かべる桜に、ファイは少し心が痛んだ。

『贄巫女』というのは決して楽しいものではない。きっと彼女たちには辛い役目だろうと思う。それでも、封印を壊すわけにはいかないので、ファイは重々しく口を開いた。

「まず初めに君たちが2人が『贄巫女』に選ばれた事を伝えるよ。」

「『贄巫女』?」

聞いたことのない単語に桜たちは頭の上に疑問符を浮かべる。

「『贄巫女』の説明をするには『四神の封印』の説明をしねぇと駄目だ。時間あるか?」

「私は構いませんわ。」

同意を求めるように知世は桜に目を向ける。

「うん。私もいいんだけど・・・」

桜は言葉を濁すと、お腹に手を置いた。そこからグゥゥと小さく音が聞こえた。

「お腹・・・空かない?」

お腹が音が鳴ったことに顔を真っ赤にしながら言う。

「そうだね・・・もうすぐ1時だからねぇ〜この辺に他の人に話を聞かれないように食事できるところはある?」

「個室・・・で食事できるところでしょうか?私、心当たりがございませんわ。」

ほかの2人も首を振る。桜は何か名案が浮かんだかのように、手をポンッとたたいた。

「私の家はどうかな?帰る途中で食材を買っていけば、私調理するし・・・あ、でも・・・家には・・・」

ケロちゃんがいる。と言葉を続けようとしたが、止めた。その桜の心の中を呼んだかのように。ファイが言葉を発する。

「『封印の獣』ケルベロスのことなら気にしなくていいよ・・・むしろいてくれた方が助かる。・・・『審判者』月もいた方がいいんだけど・・・無理かな?」

「ケロちゃんと月さんの事を知ってるの!?」

家族や小狼達以外に言ったことはないのに、ファイが知っていることに桜は驚きを隠せない。

「まあね・・・ボクも黒鋼もクロウ・リードの関係者だからね。」

「!!」

そのファイの言葉に一番驚いたのは小狼だった。自分もクロウの血縁者だが、彼らの名を聞いたことはなかったし。『李家』の他に、桜がクロウカードの継承者であることを知っている者がいるのも聞いたことはなかった。

「小狼君が驚くのも無理はないよ。ボクらはクロウの血縁者と言うわけではない。ボク達を統括している本家の『リード家』はクロウの直系の子孫だけどね。それにボク達は知識を持っているだけで、クロウ・カードには関係していないからね。」

「そうなのか・・・本当に全然知らなかった。」

クロウの事でなら桜の力になってやれると思っていただけに、自分が知らないところでクロウの関係者が存在していたことに、すこしショックを受けた。

▲Page Top(T)

←Back(B)

© 2003-2006 sarasa