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A STORM OF THE PLANET

青く美しい星を前に、彼はグラスを掲げる。

大きなガラス張りの窓に向かい、彼はシートに凭(もた)れ掛かっていた。そのテーブルの向こうにはもう一つのグラスが置かれている。

グラスの中は深く、青い液体が注がれていた。まるで目の前の星の様な・・・。

「・・・なぁ、クロウ・・・どちらが不幸だったろう?残された者と、永遠に行かねばならない者と・・・」

その問いに答えなど無い。代わりに彼の肩の上で黒く小さく啼(な)いた。

「ああ・・・分かっている。いつも行くのは俺だ・・・・・・だが・・・」

キルトの首筋(くびすじ)を撫で、彼は黙り込む。その先は言葉にならなかった。手からグラスが落ち、彼の足元で破片と青い液体が弾ける。

俯(うつむ)き、彼は目を閉じた。

数十分後、艦橋の扉を開けた孔雀は目を丸くして立ち尽くした。

いきなり目前に群(む)れていた船員達と目を合わせたと思ったら、くもの子を散らす様に自分の持ち場へと駆け去ったからである。中には途中で転んだ奴もいた。

「・・・何してんだ?お前等・・・」

「なーんでもございませんっ」

ある者はシートにかじり付き、コケた者は立ち上がりながら、ひきつり笑いを浮かべて声を揃(そろ)えて答えた。

孔雀はそれに対し暫(しばら)く首を傾げ何事か考えていたが、やがて表情を引き締め、命令する。

「・・・まあいい、それよりも出航(しゅっこう)するぞ」

「え?もういいんですかい」

思わず声を上げた船員の一人が側にいた炎獣王の回し蹴りを喰(く)らい、シートの向こうに沈む。その当人は涼しそうな顔で腕を組んだ。

「で、今度の行き先は何処(どこ)にするんだ?船長」

「宇宙空間のイプシロン星域だ。数日後にここに軍用船(ぐんようせん)を連れた商船が通るらしい・・・そうだな?琥珀」

孔雀の呼びかけにどこからともなく少女の声が響く。

『・・・はい、それはベネツィラの商船で、かなりの量のオリハルコンを運ぶらしいです・・・あ、これは不法に運ぶものですから、容赦(ようしゃ)しないで取っちゃっていいと思います』

琥珀の声に船員達は一斉(いっせい)に口笛を吹いてざわめき出す。

「・・・と言う訳だ。今回は何の利益も得なかったからな、遠慮(えんりょ)なく仕事をさせてもらおう」

そう言い、彼は船長席につく。その傍(かたわ)らに仮面を外した王二郎が歩み寄った。

「いつでも出航準備はOKですよ。皆、貴方の命令を待っていたのですから・・・」

「分かっている、それくらい・・・」

むすっとして応じ、孔雀はメインスクリーンの中に浮かぶ青い星を見上げる。そして決心がついた様に前方を見据(みす)え、命令をした。

「出航!」

暗い夜空の一角で蒼い星が輝き、消える。

それを見ていた少女の側に青年が馬を寄せる。少女は頷き、馬の手綱を引いた。

後に一対(いっつい)の名馬として吟遊詩人(ぎんゆううしじん)にうたわれる黒馬と白馬は、若いアルカディア王達を乗せ、新しい王都となったガーディンへと駆け去っていく。

誰もいなくなった草原を、夜闇の風が静かに吹き抜けた。

〜完〜

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