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proud of you

人の気配に、桃矢は顔を上げた。

「あっ、いらっしゃ・・・ッッ」

取り落とした木の器から、米が散らばった事にも気付かない様子で桃矢は店の敷居(しきい)に立っている人影を茫然(ぼうぜん)と見つめた。天色の瞳は見開かれたまま、ただじっと動かない。逆光でその人の金の髪が透けて見える。明るい海のように深みを帯びたプルシャンブルーの視線が自分に向けられているのを感じる。自分の名が呼ばれるのを、桃矢は信じられない思いで聞いた。

「桃矢・・・? 本当に桃矢なの・・・?」

夢で聞いたとおりの優しい声。五年前、自分が振り捨てた腕の持ち主は相変わらずの優しい声で自分の名を呼んでいる。これもきっと夢だ。そう思って、桃矢はゆっくり彼の名を呼んだ。

「雪兎・・・・・・? 月城雪兎・・・・・・?」

「ああ。桃矢、僕だよ」

やっと見付けた、と雪兎は笑った。見付けるのに五年もかかった、と彼は持ち上げたままだった暖簾(のれん)をくぐった。バサバサの金髪、海のように碧の瞳、よく焼けた顔。

かなり長身の筈の自分よりも頭半分は余裕で高い、鍛えられた体が一歩、二歩近付いて停まる。これが夢なんかではない、という事をようやく理解した。

<6に続く>

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