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小狼・ピアニスト

痛い・・・頭が痛い・・・・。

苦痛に耐えられるほども無い記憶のカケラ。

それなのに、ピアニストは喋るのをやめてくれない・・・・・。

〜小狼・ピアニスト〜

第七章

『誘うサクラ・否かのツバサ』

そう・・・音がうるさ過ぎるほどにおれの頭を痛みが襲う。

それは・・・思い出したくないことを思い出してしまったから・・・。

「・・・・。」

ホールの誰もが黙る。

危険な人形・・・。

まるで、ファンタジック・ワールドじゃないか。

・・・そう言うかのように・・・・・。

「・・・だが、そんなものは俺らにゃあ、関係ねぇじゃねぇかよ。ずっとホールに居たしよぉ。」

コントラバスが、さぞ『どうでもいい』という風に言った。

・・・こっちはそれどころじゃないって言うのに・・・・・。

おれは、今度こそ廃棄処分になるのだろうか・・・

そんなことを考えていても仕方が無いのは分かっているのに・・・。

おれはには結局『生』も『死』も無いんだ。

人間には、いくつかの苦がある。

病、死、争、欲・・・・。

その中の一つに、『生』がある。

よく考えれば、そうなんだ。

生まれてさえ来なければ、死ぬことも苦しむことも無い・・・。

ある意味、生きても生まれても、死にもしないおれは幸せかもしれない。

「・・・話を続けますね。

そのマリオネットが違う世界に送られてまもなく、おれたちは、その人形の創造者に出会いました。

そして、『もし私の創ったマリオネットを見かけたら、廃棄して欲しい』と。『自分の目の前で壊されるのはあまりにも苦痛だから』と・・・。

壊し方も、教わりました。

ですが・・・おれに もし、壊せなかったとしたら・・・。そう思ったので、その人から、たくさんのモノをお預かりしました。

そして・・・まさかとは思ったのですが、その次元を旅立った後、奇跡的に・・・いえ、必然的に例のマリオネットのいる世界に行き着きました。

そして・・・ある理由によって、みなさんはホールで演奏していました。

・・・演奏していた時間がどれだけのものだったか、ご存知ですか?」

・・・3年と4ヶ月16日間・・・・。

もっと正確に言うと、4時間37分59秒・・・。

「さすがですね・・・。最高傑作と言われるほどの機能は備わっているのですね。想像以上でした。」

パチパチと手を叩くピアニスト。

やめてくれ・・・・。

「そのマリオネット・・・処分するにはもったいないと思うんです。・・・だから、このホールにおいて行こうと思います。」

ホールにいる皆が、ピアニストの言葉に反応した。

このホールにいるのか・・・・?

コントラバスは、意外そうだ・・・。

・・・・困ったな・・・。

おれは、腰からひざまでを左手で触れる。

カチッと言う、軽い音がした。

そしてそのまま、ガタンと言う何かが床に打ち付けられたみたいな、鈍い音・・・。

おれは、脚で空気を蹴り上げる。

ヒュンッと言う空気の裂ける音がした。

残ったのは、風だけだった。

そして・・・空を舞った物は、おれの腕の中におさまる。

猟銃・・・・。

それを、ビッっとピアニストの首に近づける。

「銃まで出せるのか。もはや人間が倒せた相手ではないな。」

笑顔で言う、ピアニスト・・・。

・・・なぜだか、撃つ気になれない・・・。

おれは、チェロに拳銃を向ける。

猟銃をピアニストに定めたまま、腕の拳銃を、チェロに向ける体勢だ。

チェロはニコニコしている。

そして・・・・。

バァーン!!

銃撃の音がした。

チェロは、平然と立っている。

・・・狙いが、外れたか・・・。

でも・・・銃弾はどこだ?

まさか・・・弾が入っていなかったか・・・?

おれは、客席に連撃する。

バン、バン、バン、バン!!

穴の開いてゆく客席。

どうしてだ・・・・?

「・・・当たってたんですよ。」

ピアニストが平然と言った。

「当たったけれど、ほとんど威力が無かったんです。」

うそだ・・・客席には、十分に銃弾が通じている。

最前列を通り越して、五列目ぐらいまで穴が開いている。

「おれ達には、きかないんです。

・・・分かりますか?さっき、言いましたよね。あなたを処分しに来たって。その分だけ攻撃に耐えられるマリオネットなんですよ。・・・おれたちも・・・。あなたと素手で勝負なんて、死にに行くようなものですよ。・・・だから、特別、防御の利く人形なんです。」

・・・・そうだったのか・・・・。

おれは観念して処分されろって、ことなのか・・・?

「そんなこと、ないですよ。」

悠然と、ピアニストが言ったのだった。

〜第七章・完〜

…第八章につづく

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