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ツバサ〜緑髪の王と風の王妃〜

翌朝。

6人は果ての荒野に馬を走らせていた。

フウの体調は思わしくはないが、本人が大丈夫と言ったので出発した。

テトラも初めは嫌がってはいたが、フウ達に説得され共にセフィーロに戻ることとなった。

体格的にフェリオか黒鋼がテトラを馬に乗せ運ぶのが良いのだが、テトラの支配が消えたとはいえ、魔物達が小狼達に襲いかかってくる事には変わりなく、そのとき前線で戦う2人にテトラを運ぶことは無理だった。よって、後衛で戦うファイがテトラと馬に同乗することとなった。

2人乗りに慣れていないファイに合わせスピードを落としての移動だったが、いきより1日遅い3日でセフィーロまで帰ることが出来た。

「・・・セフィーロだ。」

遠くに見える自分たちの国に安堵の息を漏らす。

そこから1時間。6人はセフィーロ城の門の前で足を地についた。

「無事に帰ってこれたな。」

フェリオは足早に自分の馬から降り、フウが馬を降りるのを手伝った。

「そうですわね。」

フウも6日ぶりに感じるセフィーロの風を身に受け、心地よさそうに微笑む。

「小狼くん!!」

帰還の知らせを受け、サクラは走って小狼の元に駆け寄る。

「ただ今戻りました。サクラ姫。」

「うん。おかえりなさい。小狼くん・・・ファイさん、黒鋼さん、フェリオさん、フウさんに・・・・?」

サクラは出発したときより、1人人数が増えていることに気づく。

サクラの疑問の視線に答えを返したのはフェリオ。

「テトラだ・・・帰りに城の近くで倒れているのを保護したんだ。」

真実はあえてサクラには伝えない。自分の記憶の欠片の魔力によって、テトラがフウを傷つけ、自身も傷ついたことを知ったら、サクラが悲しだろうと配慮して。

小狼はサクラに気づかれないように、フェリオに礼の変わりに頭を下げた。フェリオはそれに微笑みで返す。

「俺は彼女とフウを医師の所に連れて行く。お前達は導師クレフに帰還の報告をしてくれると助かるんだが。」

「分かりました。」

後のことは小狼達に任せ、ファイの馬から降りたテトラと、具合の思わしくないフウをつれ、医務室へと向かった。

「サクラ姫、これを。」

小狼はサクラに羽根を手渡す。

羽根はサクラの胸の中へと消え、サクラに沢山の過去の記憶を与えた。

小狼は複雑な気持ちでその様子を見ていた。いつもなら、サクラの記憶が戻ることは何よりも嬉しいことだが、あのテトラの状態を見てしまうと、サクラの記憶の欠片が、少し恐ろしいものにも見えた。

「・・・小狼くん?」

暗い面持ちでぼーっとしている小狼にサクラは声をかける。

「何もありませんよ、姫。クレフさんに報告に行きましょう。」

笑顔を見せ、サクラを安心させる。

「導師クレフは今執務室だよ。私が案内してあげる。」

小狼達のいない6日間で、サクラはセフィーロ城を探検していた。そのほかにも暇なときは城にいる子供と遊んだり、クレフにセフィーロの話を聞かせて貰ったり。勝手知ったる他国の城と言わんばかりに、セフィーロ城を熟知してしまった。

医務室では残念ながらテトラの状態の原因は分からなかったが、そのかわり、医師からフウとフェリオにとって・・・いや、セフィーロの者達すべてを喜ばす吉報を耳にした。

「明日行くのか?」

セフィーロ城では王の帰還と吉報を祝うパーティが開かれていた。

人の多さに酔った小狼がテラスに出て夜風を感じていると後ろからフェリオに声をかけられた。

「ええ。次のサクラの記憶を探さないと。」

「彼女のせいとは決して思わないが、あの羽根は危険すぎる。お前達なら大丈夫だとは思うが、十分に注意しろよ。」

「はい、分かっています。」

羽根の持つ力の大きさを、再度認識した。アレは人に力を与えるだけでなく、人から力を奪う。実際に、テトラは記憶喪失に加え、幻惑師に戻れないほど魔力を奪われた。

どういう訳か、退行の方は時間が経つにつれおさまっていき、今はもう落ち着いて自分の状況を理解しようとしていた。

「テトラは城に住まわせる事にした。もう間違いはおこらない。」

「そうですか。」

「・・・そうだ、小狼。これ・・・。」

フェリオは小狼の手のひらに大きな宝石を落とした。

「これは?」

「次元の魔女が言っていた対価だ。」

セフィーロ王が戴冠式でかぶった冠の宝石。古代マクシミリオン帝国の聖龍召還の儀式で使われていた、セフィーロの宝。

そう簡単にクレフ達は渡さないだろうと言っていたのに、案外あっさりと手に入ったのか。

フェリオは帰ってきてからクレフには、ほんの数十分行われた会議でしか会っていないはずなのに。

「クレフ達も喜びに浮かれているからな。フウの居場所を探して貰うための対価といえば、あっさりと譲ってくれた。」

フウを探す対価はフェリオの髪だったが、こちらの対価といった方がクレフ達を納得できそうだったので、すこしばかり嘘をついた。

「そうですね、フウさんに万が一のことがあれば大変ですからね。・・・フェリオさん、本当におめでとうございます。」

小狼はなんに対してそういているのか・・・

実は、今日行われているパーティのメインは王の帰還ではなく、フウが王の子を身ごもった事だ。

待ちわびた世継ぎの誕生に、セフィーロ城の者達だけでなくセフィーロの民も自分のことのように喜んだ。

街でも、フウの妊娠を祝うパーティが所々で開かれている。

無事出産すれば、フウの王妃としての立場は確定される。

魔法騎士だからと今まで不満の声を上げていた連中も何も言えなくなるだろう。

それ以上に、フェリオはただ自分の子の誕生を喜んだ。

「本当に嬉しい。体調が悪いと言っていたから心配したが、まさかこれが理由だったとは思いもしなかった。」

フェリオは生まれてから一番と言っても過言ではない幸せを感じている。

「俺も嬉しいです。フェリオさんとフウさんの子供を見れないのは本当に残念ですが、無事の誕生と、その後の健やかな成長を願います。」

「ありがとう。お前達のが一番良い結果で終わることを願っている。」

フェリオと小狼は手に持っていたグラスで乾杯をした。

翌朝。

次の世界に飛び立つため、セフィーロの者達と別れの言葉を交わしていた。

「お気をつけて。」

「はい、お世話になりました。フウさんもお元気で・・・元気なお子さんを生んで下さいね。」

「はい。」

フウは自分のお腹に手をあて、自分の中に芽生えた命を確かめるようにさすった。

「お前らも元気でな。」

フェリオは握手を求めるように小狼に手を差し出した。

「フェリオさんも。」

小狼はフェリオの手をしっかりと握る。もう彼らとも会うことはないだろうと思うと、握手を交わす手に力がこもる。

「・・・それじゃあ。」

名残おしそうにその手を離すと、フェリオから少し距離を取り、4人はモコナを囲う。

フェリオ達の温かい笑顔に見送られ、4人は次なる世界へと旅だった。

「いってしまわれましたね。」

「ああ。」

フェリオは自分の胸に寄りかかるフウの肩を抱いた。

心から彼らの旅の無事を願い、雲一つない青空を仰ぐ。

小狼達の旅の旅を見守り、新しい命の芽生えを祝うかのような風が、セフィーロを優しく吹き抜けた。

〜Fin〜

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