Fanfic

ツバサ〜緑髪の王と風の王妃〜

「ゴホッゴホッ。煙たいです・・・フェリオさん。」

国境から少し離れた岩陰でフウを待つフェリオ達。

フェリオは目印だと言い、火をたき煙を上げる。煙が出やすいように、わざわざ湿った薪(たきぎ)を用意をして。

思いのほか煙は縦と横に広がり、その場にいる小狼達が咳き込むほどになった。

「ゴホッゴホッ・・・悪い。こんなになる予定じゃなかったんだ。ゴホッゴホゴホ!!」

フェリオも激しく咳き込み、焚き火の側から離れる。

「まぁこれなら、フウさんも難なく見つけれるんじゃない?結果オーライですよ〜」

ファイは煙の被害に遭わないように、遠くの岩陰に身を潜めている。

「そうだな・・・時間通りに城を抜け出していたら、もうすぐ到着すると思うが・・・」

少し前〜セフィーロ国境付近〜

上空から誰にも気づかれないように地上に降り立ったフウは、自分が馬を隠していた所へ移動する。

誰にも見つからなかったか、馬はちゃんとそこにおり、弄られた形跡もなかった。

「よかった・・・一晩このようなところに居させてすみません。シルフ・・」

シルフとはフウの愛馬であるこの馬の名前で、風の精霊を意味する。

その名の通り、風のように早く走る駿馬だ。戦場ではフウを乗せ、勇敢に敵陣地へを突っ込んでいく。

「さぁ・・・フェリオ達の所に急ぎましょう。」

フウは馬を隠していた場所から開けた所に出ると、フェリオ達が進んでいった方向を見つめ、顔を蹙めた(しかめた)。

フウの目線の先には、目印の煙が轟々と上がっている。

「あれでは他の方にも見つかってしまいますわ・・・限度というモノを教えなくてはなりませんわね・・・」

フウははぁ・・・とため息をつくと、その目印に向かって、シルフを走らせた。

「アレ・・・フウさんじゃありませんか?」

小狼が指さす先には、国境の方から馬を走らせてくるフウの姿があった。

「ホントだ・・・お〜い、フウ!」

フェリオは合図をするように大きく手を振った。もちろんフウはそれに気づき、側によるとシルフから降りた。

「少し遅くなってしまいましたわね・・・それにわがままを言って申し訳ございません。」

「いえいえ〜お気になさらずに〜オレは待つのはそんなに嫌いじゃないし、フウさんが協力してくれるって言うのなら、万々歳ですよ〜」

ねぇ〜と同意を求めるように小狼達に首を傾げる。小狼は笑顔で頷き、黒鋼も小さく頷いた。

「クレフ達には見つからなかったか?」

「大丈夫でしたわ・・・サクラさんには見つかってしまいましたけど。快く見送って下さいましたわ・・・それより」

フウはにっこりと笑顔を浮かべると、目の前に立つフェリオの耳を軽くつねった。

「あの目印は何なのですか?確かに煙を出せとは言いましたけれど、アレでは他の方にも見つかってしまいますわ。・・・まったく。」

フウは耳から手を離すと、腕を組みフェリオをにらみ据える。

「すまなかった・・・あそこまで盛大に煙が上がるとは思ってもいなかったんだ。」

フェリオは一生懸命に謝罪と言い訳をした。フウはあきれたように肩をおとす。

「まぁ私も我が儘を言って連れて行って貰うのですから、もう何も言いませんわ・・・でも、ここから早く離れた方が良いですわね。国の者が気づいて、調べに来るかもしれませんから。」

今のところはそのような人影は見あたらないが、後から来ないともかぎらない。

5人は焚き火を消すと、その場を離れ果ての荒野目指して馬を走らせた。

〜セフィーロ城〜

「導師!!大変です。フウの姿が見あたりませんわ!!」

アルシオーネは大きな音を立て、クレフの執務室の扉を開けた。

「また、城下に行っているのではないのか?」

「門番は見ていないと言ってますわ・・・それに、馬番の話では昨夜からシルフがいないとか・・・それをフウに話したら、気にするなと言われたと言っていましたわ。」

クレフは握っていたペンを置き、考える。

「・・・何を企んでいるんだ?」

そのとき、大きな音を立てて、再び扉が開かれた。

「失礼します。導師クレフ・・・南の方角に不審な煙が!」

兵士はそう告げると、南の窓を開け、煙が上がっている方向を指さした。

「なんだアレは?」

ただの焚き火にしてはあまりにも不自然な煙の上がり方に、クレフは眉をしかめる。

「わかりません。私どもは先ほど気が付いたのですが、城下の者の話によると、数十分前から上がっているようです。報告が遅くなって申し訳ありませんでした!」

兵士はきびきびと返事をする。もっと早くに気づけなかった事に、自責の念を抱いていた。

「いや・・・とりあえず、ただの焚き火ではないだろう。兵を送って何事か調べさせてくれ。」

兵士は敬礼をすると、足早に部屋を出て行った。

クレフ達が煙に気づいた頃には、フウはすでにフェリオ達と合流しており、数分後には火は鎮火され、フウ達はその場を去り、兵士が駆けつけた頃にはそこには燃えかすしか残ってはいなかった。

2時間ほど馬を走らせると、果ての荒野の入口と言われるところについた。

そこは、今までの緑豊かな平野ではなく、荒れ果てた、砂塵の舞う砂漠のような所だった。

「ここが・・・果ての荒野。」

目の前に広がる景色に、小狼は息を飲む。いかにも多くの魔物が生息している魔境といったところだ・・・

「この辺りはまだましさ・・・もっと奥深くに行くと、ここよりもさらに酷いと聞く。」

誰もいったことがないのに、どうしてそんなことが語り継がれているのかが疑問だが、それすらも納得してしまうような、そんな酷い場所だった。

「ここの魔物は食べ物に飢えていますわ。私達は彼らにとってはおいしい食事・・・決して気を抜いてはいけませんわよ。」

フウがそう言うと、そこにいたみんなは頷いた。そして、一つ深呼吸をすると、果ての荒野へと馬を進めた。

さらに一時間ほど進むと、辺りは先ほどよりも酷い光景だ。

魔物は数分おきに襲ってくるし、砂埃が酷く、視界が悪い上に妙な臭気まで漂っている。

フェリオが言うには、それは魔物の死体の臭いらしい。普通、セフィーロの魔物は、倒されるとすぐに跡形もなく消滅する。魔物とは人々の心の中にある、憎悪などの醜い心が具現化したものなので、死んだ後は実体を残さないという。

しかし、なぜだかは分からないが、果ての荒野の魔物達は、倒された後も姿を消し去ることはない。小狼達が進んできた場所にも、転々と魔物の死体が転がっていた。

「・・・人間が生きれないと言うのも納得ですね。」

小狼は独り言のように呟く。普通の人間なら生きれないどころか、一歩足を踏み入れただけで、魔物の餌になるだろう。

「俺もここまで酷いとは思っていなかった。・・・地獄のような場所だな。」

「・・・そうですわね。」

フェリオの隣に馬をつけているフウも頷く。生きた魔物と死んだ魔物が入り交じった光景は、まさに地獄絵図といったところだった。

「こんな所にサクラちゃんの羽根はあるのかな〜?」

羽根に近づけば、モコナが反応するが、まだその気配はない。今はがむしゃらに馬を走らせるしかなかった。まるで、海底に落とした小さなダイアを探すような、途方もない行動だ。

少し日が傾くと、辺りは急激に冷え込んできた。

厳重な装備をしているにも関わらず、肌を刺す空気は刃物のように鋭い。

「今日はもう無理だな・・・休もう。」

小狼達は頷いた。黒鋼の服の中に身を潜めていたモコナは、顔をだすと額の宝石から、卵形の家を出した。そこにはありがたくも馬小屋まで付いていた。

「懐かしいですわ。」

馬小屋に、自分たちが乗っていた馬を休ませると、フウ達は家の中に入る。

中の形は変わっていたが、壁のクロスや窓の形・・・家全体の雰囲気は、フウ達が魔法騎士時代のものと同じだった。

「初めて中に入るが・・・これはすごいな。」

間取りは、トイレ、お風呂、ベッドが数個置いてある部屋が2つ、その全ての入口となるリビング。城下の一般的な家とさほどかわりはなかった。

「私達の時とは部屋の数などは違いますわね・・・私達の時は大きなベッドが一つでしたから。」

さすがにこのメンバーでは、大きなベッド一つというわけにはいかないだろう。

部屋割りは、フェリオとフウで一部屋、小狼達で一部屋となった。

その夜・・・

時計が0時を過ぎた頃、今まで深い眠りについていたフェリオはふと目を覚ました。

隣で眠るフウを起こさないように静かにベッドから抜ける。

隣の部屋でも人が起きた気配がしたので、小さく壁をたたくと返事が返ってきた。

フェリオは、外から姿を見られないように注意し、窓の側へと寄る。

「・・・フェリオ?」

人が動く気配で目を覚ましたフウは、ハッキリとしない目をこすり、夫の名を呼ぶ。

「フウ・・・姿勢を低くしてこっちに来い。」

窓から目線をはずすことなく手招きをする。

フウは指示されたとおりに、身をかがめフェリオの側に静かによった。

「何事です?」

「外に誰かいる・・・」

フェリオの目線をフウも追う。砂塵が酷くほとんど何も見えない状況だった。

一瞬砂埃がやみ、再び視界を悪くする。しかし、その一瞬で、フウはそこにいるはずのないモノを確認した。

「・・・人間!!」

深夜の外は昼よりもさらに地獄のようだった、砂嵐が昼より酷く1メートルさきも見えない。気温は氷点下をさらに下回り、水は一瞬のうちに凍る。

外に人間が居るのはどう考えてもおかしい。

「やはり、死人なのでしょうか?」

フウの質問にフェリオは否定とも肯定ともとれる仕草で肩を上下する。

「確信は出来ないが多分そうだろう。生きている人間が果ての荒野の夜をあんな軽装で過ごせるわけない。」

やすそうな皮の鎧を身に纏っているだけの薄着だ。あれでは果ての荒野はおろか、少しでも寒い所では絶えられないだろう。

「やはり、私を狙っているのでしょうか?」

フウは不安な面持ちで窓の外を見つめる。

「さあな・・・だが、ここには入ってこれないだろう。明日の朝もあそこにいられたら戦闘は避けられないだろうけどな。」

「・・・そうですわね。」

時々やむ砂嵐の合間に敵の人数を確認する。フェリオ達の部屋の窓からは、十数人確認された。

コンコンと控えめなノック音のあと、小狼の声が聞こえる。

「失礼してもいいですか?」

「どうぞ。」

フウの返事を聞くと扉は開き、小狼だけでなく黒鋼とファイも部屋の中に入ってきた。

「・・・気づいてるな?」

フウとフェリオは首を縦に振る。

「こっちの窓からだと、18人確認した。この建物を囲ってるとなると、結構な数だぞ。」

「この窓からは十数人・・・多分14か15って所だな。」

「どうします?」

「どうにもできないな。俺らは外に出たら死んでしまう・・・ほっておいて休むのが一番だな。モコナが出したこの建物なら敵は入ってこれないだろう。」

ほっておいて寝るというのも変な感じだが、それ以外にどうすることも出来ないし、果ての荒野を進むには体力をつけないといけないので、結局5人は再び眠ることにした。

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