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ツバサ〜緑髪の王と風の王妃〜

「彼らに任せてはどうでしょうか、陛下。私達にはどうにも出来ませんし・・・。」

「しかし、アルシオーネ・・・彼らは客人だ、そんな危険な真似をさせるわけには。」

確かに小狼達が協力してくれたら、嬉しいが。素直にそれを承諾できない。彼らには自分たちのすべき事がある。だから、自分たちの事で時間をとらせたくはなかった。

「・・・いいえ。行かせて下さい。」

言ったのは小狼。ファイと黒鋼は驚いたように小狼を振り向いた。

「馬鹿かテメェは。羽根を探すのはどうすんだ?まさか後にわますのか・・・?」

「そんなことはしません。ただ、カルディナさん言いましたよね?かなりの使い手でないと死人を操る術を使えないって・・・。」

「た、確かに言ったけど・・・」

急に話題をふられて、カルディナは慌てたように、返事をした。

「・・・俺はそれに、サクラ姫の羽根が関係しているんじゃないかと思うんです。」

「!!」

その言葉に反応したのは黒鋼とファイ。今までの経験を思い起こせば、羽根によって術者の力を爆発的に成長させる事が出来る。そういった術者とも戦ったことがあった。

「どういう事だ?」

サクラの羽根を探して旅をしているのは知っていたが、その羽根にどのような力があるかは聞いていないフェリオは小狼の言っていることが理解できなかった。

「サクラ姫の羽根を手に入れて者は、強大な力を手にすることが出来るんです。前に訪れた国で、昔はたいした力の持っていなかった者が、ある日突然誰にも負けない力を得た。それが羽根によるものだったって事があったんです。」

「羽根の力とはそんなにも凄いのか?」

ひとえに信じがたい話だった。そのような奇跡のような力があるなんて・・・。

「可能性がないとはいえないな。記憶とはこの世で最も高等な対価です。とてつもない力を持っていてもおかしくはないです。」

「本当ですか!?導師。」

導師のお墨付きをもらっては、フェリオも信じるしかない。

「サクラ姫の羽根の可能性が少しでもあるのならそれに賭けたいです。俺たちに行かせて下さい。」

あつく語る小狼にフェリオも頷かざるを得なかった。

「・・・いいだろう。ただし一つ条件がある。いいな?」

「・・・条件、ですか?」

フェリオは頷く。

「俺も連れて行け。」

「!!!!」

フェリオは何を言い出すのかと言ったように、その場にいた者は驚き席を立つ。

「何を言っているのですか、陛下。そのような危険なことを貴方にさせられるわけないでしょう。」

アルシオーネは必死になってフェリオを止めようとする。導師クレフもランティス達その場にいた者は、アルシオーネの言葉に同意する。

「危ないからこそ行くんだ。自分たちの目的の為に小狼達が果ての荒野に行くにしても、客人である彼らを危険にさらすわけにはいかない。」

「・・・ですが陛下。」

「俺は自分の身を守ることも、他人の身を守ることも出来る力が、自分にあると思ってるよ。自惚れ(うぬぼれ)かもしれないが・・・。」

自惚れでなく、実際にフェリオにはその力があった。セフィーロで最も強いとされる剣闘師(ダル)であるラファーガにも劣らぬ実力の持ち主だった。

「いいんですか?」

実力のあるフェリオについてきてもらえるのならば、小狼達も心強いのだが、王であるフェリオが、そう簡単に国を開けていいのだろうか。

「気にするな、もともと国政は、王佐である導師クレフがほとんどやっている事だ、俺はせいぜい判子を押すくらいしかできない。もともと勉強をさぼって剣の稽古ばかりやっていた俺に、政(まつりごと)は性に合わん。」

「・・・はぁ。」

小狼はなんと言っていいのか分からずに、小さく頷く。

「良いですね?導師、みんな。それにこれは、彼らばかりの問題じゃない。国に関わる問題でもあるんだ。」

それを言われてしまって、仕方がない。クレフ達は渋々頷いた。

「仕方がないですね・・・お気をつけて行ってきて下さい。」

「ああ。」

フェリオは大きく返事をした。

〜フェリオ・フウの部屋〜

「まったく・・・貴方は無茶を仰る。クレフさん達が困っていましたよ。」

その晩、フウは説教をするようにフェリオに言った。

「導師達にはすまないと思っているさ。だが、どうしても行きたかった。」

「どうしてそこまでこだわるのですか?とても私のためだけとは思えませんわ。」

図星をつけれたか、フェリオは苦笑いを浮かべる。

「確かに、敵の親玉の顔が見たいってのもある。それ以前に、死人を操る術を持つ者なんて、危なくて野放しには出来ない。今後国を脅かさないとも限らないしな。」

政治はさほど得意ではないが、国のことを思う気持ちは人一倍強い。

誰よりも民を思い、誰よりも国よ行く末を思っている。だからこそ、一部の下らぬ恨みでフェリオを嫌う者を除けば、民全てから愛される王であれるのだ。

「小狼さん達に任せるのは嫌ですか?彼らの実力は昨日の戦闘で見たでしょう?彼らなら果ての荒野の魔物など、五月蠅く(うるさく)ほえる狼以下でしょうに・・・」

普通の人間ならば五月蠅くほえる狼も驚異。それをたいしたことはないように言うところがフウらしい。

「彼らに任せるのが不安なわけじゃないさ。ただ、国に関わることを人任せにするのはどうかと思ってね。」

フェリオらしいとフウは小さくため息をつく。

「・・・私も連れていっては下さいませんか?」

「はぁ?」

何を言い出すのかと、先ほどフェリオの発言に対して導師達がとったのと同じように座っていたソファーから腰を上げる。

「私も自分のことを他人任せにするのは、好きではありませんの。」

「だが・・・しかし・・。」

「だがもしかしも聞きません。先ほど貴方の提案を受け入れた導師達のように、貴方にも納得して頂きますよ。」

反論は許さないとフウの瞳が語っている。フェリオは諦めるしかないと肩をおろす。

「導師達が許かな?」

「許すわけがないでしょう。だから黙って出て行くのです・・・ああ安心なさって。手紙は置いていきますから。」

安心できるわけがないだろうとフェリオは目尻を押さえた。

翌朝。

城門には、小狼達とフェリオ、見送りの者達が群れていた。

「お気をつけて下さいませね。」

フウはフェリオに微笑みかけて優しく見送りの言葉を贈る。この後どのような行動をとるか知ったものではない。

「・・・ああ。」

すでに導師達の目をくぐり抜けて城を抜ける準備をしているとは、クレフ達はもちろん小狼達も知らない。

「気をつけてね、小狼君。」

もちろんサクラは城でお留守番。危ない果ての荒野には連れて行けないと小狼が説得したのだ。お留守番にも慣れてきたサクラは、案外あっさりと承諾した。

最近サクラは待つのも悪くないと思ってきている。お留守番をしていて、小狼が帰ってきた時に自分に向けてくれる笑顔が大好きだった。

「はい。行ってきます、サクラ姫。」

小狼達は国から与えられたのは鍛え抜かれた名馬と、果ての荒野の複雑な気候を耐える、まじないの施された服とローブ。

「それじゃあ国の事を頼むな。」

「畏まりましたわ陛下。お気をつけて。」

アルシオーネは恭しく(うやうやしく)頭を下げた。

フェリオ達は見送りの者達の視線を背に、果ての荒野に向かって出発した。

「それでは、戻りましょうか。」

にっこりとフウは微笑む。その笑顔のしたでたくらんでいることを皆知らない。

「一体どうしたんですか?」

果ての荒野を目指し出発した小狼達。しかし、国を出て10分としないうちに、近くにある岩陰に腰を下ろしていた。

「実はな・・・・。」

フェリオは昨日の晩のフウとのやりとりを、全て小狼達に話した。

「フウさんも同行する!?」

「悪い!!」

フェリオは小狼たちに頭を下げる。

「ついてくるのを駄目だといったら、一人で荒野に乗りだす勢いだったんだ。いくらフウでもモコナなしに荒野では生きていけない。」

ジャングルくらいなら一人でも大丈夫だろうとフェリオは心の中で思った。

「いくらフウでもって・・・お前の奥さんは何者だ?」

「絶対に敵に回したくはないな。とにかく良い知恵も多ければ悪知恵も働く。フウなら導師達に気づかれずに城を抜けれるだろうな・・・。」

自分の奥さんの紹介とは思えないような言葉とつらつらと並べる。決してそのなかにフウを悪くいう言葉はないが。

「もうすぐ来ると思うが、一緒に連れていってくれないか?」

「一人で行かれたら大変だからね〜いいんじゃな。小狼君も黒タンもいいよね〜」

2人は頷くしかなかった。

少し前〜セフィーロ〜

「フウさん?」

サクラは何かを気にしながら廊下を静かに歩くフウに後ろから声をかけた。

フウは驚いたように肩を振るわせた。

「サクラ・・・さん?」

「何してるんですか?」

旅立っていった小狼達が来ていたような服装で、荷物を抱えるフウ。

「どこかに行くんですか?」

気づかれてしまったのなら仕方がないとフウはサクラに本当のことを話す。

「皆さんと一緒に行くんですか!?」

フウの計画に、サクラは開いた口が塞がらなかった。

「ええ・・・あの旗が示すのは私への反意。私の事なのに、彼らだけに行かせるわけにはいきませんわ。」

「でも・・・。危ないですよ?」

サクラはフウの身を案じる。

「平気ですわ。私、自分の身くらい自分で守れます。きっとお邪魔にはならないと思いますよ。」

フウはサクラを安堵させるように微笑んだ。

「でも・・・」

「お優しいのですね・・・大丈夫ですよ。絶対に無事に帰ってきますから。」

サクラはまじまじとフウの顔を見つめる。フウの顔は自信に満ちていた。

「そこまで仰るのなら、私は止めはしません。気をつけて下さいね。」

フウの決心が固いのならとサクラは笑顔で見送る。

「ありがとうございます。」

「でも、バレないようになんて、どうやって行くんですか?城門には見張りの兵がいるし・・・」

サクラの疑問にフウは「ふふふ」と笑みをもらす。

「私、自分が風使いで良かったと、つくづく思いますわ・・・だって。」

フウはそこまで言うと、窓枠に足をかけ、そのまま身を乗り出した。

「危ない!!」

とっさにサクラはフウの服を掴もうとするが、間に合わない。フウはそのまま窓の外に出てしまった。

「・・・・え?」

フウがそのまま落下してしまうと想像し、サクラは堅く目を閉じるが、その気配はない。

おそるおそる目を開けると、そこには宙に浮いたフウの姿があった。

「!!!!」

サクラは瞳を大きく見開いた。

「風をコントロール出来るようになりましたら、自分の体を浮かすくらいはわけないですわ。」

得意げにフウは言う。

「でも、誰かは気づいちゃうんじゃ・・・それにずっと飛んでいくつもりですか?」

「もっと高いところを飛べば大丈夫ですわ。それに、昨晩のうちに、私の愛馬を国境付近に繋いであります。ですから、そこからは馬で追いつきますわ。」

何か質問は?と言うようにフウは首を傾げる。サクラはただ呆然と頷くしかなかった。心の中でなんて準備のいい・・・と思いつつ。

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