Fanfic

ツバサ〜緑髪の王と風の王妃〜

「おかえりなさいませ、陛下。」

「無事で何よりや、王さんにお嬢さんがた。」

帰国したフェリオ達を迎えたのは。2人の女性だった。

「ただいま。アルシオーネ、カルディナ。」

アルシオーネと呼ばれた女性は、挨拶をすますなり戦闘の状況、結果を聞いてきた。

「戦闘の方はどうでしたか?まぁセフィーロの優秀な兵士が負けるとは思いませんが。」

「その通り。俺たちが勝ったよ。」

「力の差は歴然ですわ。こういっては何ですが、弱すぎます。」

アルシオーネをフェリオの間にフウが割ってはいるように立つ。

「貴方には聞いておりませんわ。こ・む・す・め。」

アルシオーネの言いようにフウの眉の間に縦皺が刻まれる。

「あら、すみませんわね。お・ば・さ・ま。」

同じくアルシオーネの眉の間にも縦皺が刻まれた。

2人は無言でにらみ合いを続ける。その間には雷でも落ちたようなピリピリとした空気が流れていた。

そんな2人のやりとりを黙って見つていた黒鋼とファイは、ラファーガと話している、カルディナに視線を移した。

そんな2人の視線に気づいたカルディナは、にっこりと笑うと、ピョンっと飛ぶようにして2人に近づいてきた。

「なんや2人とも、うちの顔に何か付いてる?」

「貴方にそっくりな人を知ってるんですよ〜カルディナっていう名前の。」

近くで見れば見るほど、桜都国であったカルディナにそっくりだった。

「うちもカルディナやで。そうか、あんたが導師の言ってた、異界からのお客さんか〜うちとあんたらが会ったカルディナはそんなに似とるん?世界には3人は自分に似た人がおる言うけど、ホンマやねんなぁ〜あっ世界やのうて異界か。」

カルディナはあはははは〜と楽しそうに声を上げて笑った。

黒鋼は、桜都国のカルディナのほうが落ち着いていたと思ったことは心の中にとどめておいた。

その夜・・・

〜フェリオ・フウの部屋〜

お風呂からあがったフウは、部屋の椅子に腰かけているフェリオに近づいた。

「何をそんなに悩んでいますの?」

フウはフェリオが持っていた本を取り上げ、自分も椅子に座り本に目を通すと、表紙を閉じて机の上に置いた。

フェリオはそれを怒るわけでもなく、ただ重々しくため息をついた。

別に本は読んでいたわけではなく、フェリオは悩みごことがある時に本を開く癖があるだけだった。同じページをずっと見つめているだけで、内容は全く頭に入っていない。

「今日の奴ら・・・一体何者なんだろうな。」

「私に反意を抱いている者達でしょう?」

フウはけろり答えた。

「あんな過激な連中はいなかっただろう?」

「今までいなかったから絶対にないとはかぎりませんわ。もともと貴方の即位に反対していた人たちと、私がセフィーロの王妃になることに反対していた人たちと、たいして人数は変わりないのでは?ただ私の事を表立てとやかく言う人は少なかったというだけで・・・」

「それはそうだが・・・」

フウとは反対にフェリオは今回の事を必要以上に深刻に考えていた。

自分のことなら慣れているから「いつものこと」ですまされるが、自分の妻が狙われているとなると、心配するなという方が無理な注文だった。

「心配して下さるのはありがたいですが、私達があれやこれやと悩んだところでどうにもなりませんわ。それに、今日のことは明日みんなで話し合うはずでしょう。・・・私は疲れていますの、先に寝ますわね。」

フウはそれだけ言うと、そさくさとベッド向かった。フウはベッドに入るなり、3分としないうちに、寝息が聞こえてきた。

その様子を見ていて、フェリオはもう一度小さくため息をついた。

城下では可憐だ繊細だと言われているフウ。自分が危険にあった日には、フウは眠れぬ夜を過ごすのだろうと民は想像する。

フウの姿は確かに美しいが、中身は自分の身が危険にあっても、3分で眠れてしまう、意外にも図太い神経の持ち主だった。

「不安で眠れず衰弱していくよりはいいが、せめてもう少し・・・」

はぁとフェリオは本日三度目のため息をついた。

翌朝。

小狼達は大きな円卓がある、会議室のような部屋に通された。

部屋にはフウやフェリオ、クレフといったセフィーロでも高い地位にいる人たちが集まっていた。

今日は昨日起きた事を話し合うために集まったのだ。

集まった者達は皆普段から親しい仲なのか、王や王妃に対しても謙った態度をとるものはいなかったし、フェリオ達もそれを気にした様子はなかった。

「さっそく話に入ろう。昨日の者達だが、今まであのような大胆な行動をとる者はいなかった。昨日の晩のうちに、心当たりのある王政反対派の者達に隠密を送ったが、行動をとった者達はいなかった。フウに反意がある者達も然り。」

「では今までの連中とは違うと?」

ランティスは尋ねると、フェリオは小さく頷いた。

「では一体誰が・・・?」

「それも探らせたが、特に有力な情報はないな・・・反対派のやつらも昨日の連中についてなにも知らないようだし。」

手がかりは何一つなし。皆で集まって話したからと言って、答えが見つかる訳ではない。

「やはり昨日、無茶をしてでも追いかけるべきだったな・・・」

「バカをお言いなさい。果ての荒野に何の用意もなしに入れば大変な事になりますわよ。そこは陛下の賢明なご判断を褒めるところです。」

ラファーガの呟きに、アルシオーネが厳しく批判の声を上げる。あのときのフェリオの判断は決して間違ってはいなかった。

【果ての荒野】昨日の謎の敵達が現れ消えていった場所。

その先にはセフィーロの果て・・・・生の世界の果てに繋がっていると言われるほどに荒れた地だ。草木は一本も育たず、人間はもちろん、動物すら存在しない。

少し進めば、狂った魔物達の巣窟になっている。

「・・・なぁ。」

小難しい考えを巡らせていなか、カルディナが意見するような声を上げた。

皆はカルディナの方に視線を送る。

「それってホンマに人間なん?」

カルディナの質問に、皆驚くように瞳を開いた。

「果ての荒野から来て、果ての荒野に帰っていったんやろ?あそこはお世辞にも人間が住める土地とは言われへん・・・そんなトコから人間が来るとは思えへんねんけど。」

ごく当然のカルディナの疑問に皆、頷くしかなかった。

自分たちも入るのを躊躇う(ためらう)果ての荒野・・・あそこから人間が来るとは思えない、それでも、その疑問をカルディナに言われるまで考えなかったのは、自分たちが戦った相手が確かに人間にしか見えなかったからだ。

「確かに、その疑問は正しいと思う・・・しかし、あいつらはどう考えても人間だったぞ。」

「私も、彼らが人外の者とは思えませんわ。」

フェリオとフウの言葉に、あの場にいた全員が頷いた。自分たちが切ったのは確かに人間だった。

「そうか〜でも人間があそこで生きてられるんかなぁ?」

「普通に考えたら無理だな。」

フェリオもそれには頷かざるをえなかった。本当にあそこは人間が住める所ではない。

「・・・生きてねぇ人間とか?」

いままで特に口を挟まなかった黒鋼が、ぼそりと言った。

「どういうことですか?黒鋼さん。」

「確かにアレは人間だ。切った感触も人間のもんだった。だが、あいつらからは戦う人間から感じるような殺気とか、士気とかが感じられなかった。」

「確かに・・・」

フェリオにも思い当たる節がある。最後にフウに攻撃した者にしたって、全くの殺気を感じ取れなかった。だからフウも、近くにいた兵士達も、すぐに気づかなかったのだ。

「俺のいた日本国には、死人を操る術を使う奴がいるって噂だ。俺らの姫は使えんがな。」

「・・・死人を操る・・・。」

何か心当たりがあるのか、カルディナが深く考え込む。

「どうかしたのか、カルディナ?」

ラファーガは心配そうに声をかけた。こんなに真剣なカルディナはとても珍しかった。

「幻惑師(ラル)ん中で死人を操る術があるって噂に聞いたことがないでもない・・・」

「本当か!」

カルディナは小さく頷いた。

「私はそんな術があると聞いたことがないが・・・?」

最高位の導師であるクレフは幻惑師のことも知識としては持っていた。

しかし、そのようなものは聞いたことすらなかった。

「うちもホンマにあるかは知らん。そういう噂がちょっと前に幻惑師の間で流れとっただけや。実際うちも、城におる幻惑師も使える奴はおらんし・・・」

「セフィーロで最高位の幻惑師であるお前が使えないのなら、他に使える者がいるのか?」

カルディナはセフィーロの幻惑師の中でも秀でた才能があった。セフィーロでカルディナの次に実力のある幻惑師とくらべても、その差は歴然だ。

「確かにうちはセフィーロで分かっている幻惑師の中では一番かもしれん。せやから言うて、世界で一番の幻惑師やいう訳やない。幻惑師として登録してへん奴らなんか腐るほどおる。そん中に、うちより強い奴がおるかもしれん。」

「確かにそうだが・・・」

幻惑師や創師などに認められる為には、セフィーロや各国で登録をしなくてはならない。宮廷の術師達が、登録に来た者達が術師の名を名乗るにふさわしいかを試験し、合格した者だけが術師として認められる。

だから、未登録の術師は、登録されている術師と同数ほどいるというのが現実だ。

そのなかで、実力があるのに面倒がって登録を行わない者もいるため、国で最高位と言われている者より、強い者が未登録者の中にいたりもする。

「ただ。意志のないもんを操るんは簡単やない。そんな術があるんやとしても、相当な実力がないと使えんのはたしかや。」

「反抗する意志のあるものより、死んでいる者を操る方が簡単なんじゃないのか?」

「あほやな〜うちら幻術師は人間の意志を操るんや。こうこうせぇよって、操る相手の意志に呼びかけるんや。」

「陛下にあほとはなんですか!!口を慎みなさいカルディナ。」

カルディナのあまりの態度に、アルシオーネは甲高い声をあげた。

「いいよ、カルディナ。」

いつものことだろ。と軽く笑う。フェリオは元々王族気質でないため、堅苦しい態度をとられる方が苦手だった。

「もし本当にそんな術があるなら、調べなくてはならないな・・・。」

「しかし導師、相手は果ての荒野にいるんですのよ。そのようなところにどうやって調べに行けば良いのですか?」

敵は果ての荒野に逃げていったのだから、彼らを操る術者もそこにいると考えるのは当然だ。

「そこが問題だな・・・」

昼夜の気温較差が激しく、魔物も多く出没する果ての荒野・・・実力のある者なら昼の移動は何とかなるが、夜は寒さと魔物のせいで、野宿すらできないといった状況だ。

「じゃあモコナ達がいく〜☆」

沈黙を明るい声でモコナが破った。

「モ、モコナ!?」

小狼は慌てたように声を出した。モコナ達・・・つまりは小狼達のことだろう。今までの話を聞いていて、とても自分たちが行けるような場所ではなかった。

「モコナさん・・・お気持ちは嬉しいのですけど、今までのお話を聞いておられました?昼はともかく、夜はとても人間が耐えられるようなものではございませんわよ。・・・もしかして!?」

フウは何か思いついたかのように、席を立ち上がった。

「モコナさんは、創造主を似せて作られたとおっしゃっていましたわね?その能力も同じですの?」

「そのとおり〜☆」

「・・・だったらなんだって言うんだフウ?」

周りの人たちは2人の会話に全くついていけない。

「忘れましたのフェリオ?私達、魔法騎士が『沈黙の森』でどのようにして夜を過ごしたか。」

「・・・そうか!!」

魔物が出るうえ、魔法が使えない『沈黙の森』でフウ達は、モコナが出した家?で夜は生活をしていた。魔物を寄せ付けず、冷暖房完備、石けんや歯ブラシ、寝台にパジャマ付という、まさに至れり尽くせりの家だった。

「モコナもそれ出せるよ〜だから夜は安心〜」

行き詰まりかけていた今回の事件に、一筋の希望がみえた。

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