Fanfic

ツバサ〜緑髪の王と風の王妃〜

〜セフィーロ国・国境付近〜

さすがというべきか、兵の数が多くないとはいえ、セフィーロ軍は1時間半後にはほとんどが国境に配備された。小狼達も少し遅れはしたが時間には間に合い、借りた馬にまたがって、兵士達と並んで指示を待っていた。もちろんのことだが、サクラは城でお留守番だった。

「もう少し国境から離れよう。」

「わかった。」

フェリオの指示にランティスは小さく頷き、馬を走らせた。それに続くように他の兵達もランティスを追って国境から離れていく。

10分ほど走ると、遠くに人影が確認できた。彼らがアスコットの言っていた者達で間違いないだろう。遠目でみても武器を携えていることが確認できた。

フェリオが背中に背負った剣を抜くと、他の者達もセフィーロの紋様を彫った鞘から。剣を抜き、間もなく始まるであろう戦いに集中した。

「人数は千といったところでしょうか?あれで国に突っ込んでくる気だったのでしょうか?それはあまりにも無謀では?」

フェリオの隣に馬をつけたフウがフェリオに尋ねた。

「もとより俺たちを国外に出すつもりだったんだろう。アスコットが見つけなくても、国に近づけば誰かが気づくだろうからな。」

「そうですわね」

そんな会話が2人の間で交わされる。

その様子をフェリオ達のすぐ後ろにいる小狼達が見ていた。小狼は先ほどから疑問に思って仕方がないことが一つあった。

「フウさん・・・戦うと言ってましたが、武器・・・持ってませんよね?」

隣にいる黒鋼に尋ねた。小狼も黒鋼もファイも他の全ての兵士が剣やら弓などの武器を携えているというのに、フウは武器を所持しているとは思えなかった。

「さあな。」

当然黒鋼がその答えを持っている訳が無く、ただ面倒そうにそう返事をした。

「まぁ見てれば分かるでしょ〜」

とファイも口を挟む。それでも気になって、フウに聞こうとしたとき、フェリオの声が辺りに響いた。

「くるぞ!!武器を構えろ。第一部隊は前進しろ。」

小狼達が話している間に、敵は2・3百メートル先にまで接近していた。

お互いが前進し、距離は少しづつ縮まる。敵の半分は騎馬兵、そのほかが歩兵だった。

こちらも馬に乗っていれば歩兵はそれほど驚異ではない。注意すべきは騎馬兵、こちらも騎馬兵の数は十分だが、敵より兵士の人数が多い分歩兵の数も敵より多かった。

先に騎馬兵をどうにかしないと、歩兵の人数を削られる。

「馬に乗っている者は騎馬兵を狙え!歩兵は後だ!!」

そう叫ぶフェリオにフウは声をかける。

「いいえ・・・もっと良い方法がありますわ。」

「何だ??」

見ていて下さいと、フウは左手を前に掲げた。その手の甲につけられたオーブが優しい緑の光を放つ。

辺りの風がざわつきだした。「集え」と一言呟くと風はフウを纏う。フウの魔力に従うように・・・

『碧の疾風』

フウは甲高くそう叫んだ。

・・・・刹那。一瞬全ての風が凪いだ(ないだ)かと思うと、すぐに激しく風が渦巻き、地を這って敵の騎馬兵に襲いかかった。

敵の馬は次々と倒れ、騎手は落馬し地面にたたきつけられた。

これで敵の騎士兵の半分以上は、その力を失い、歩兵へとなった。騎馬兵が数が大幅に減ったので敵の戦力はがた落ちだった。

「魔法で人を傷つけるのは好きではありません・・・でも、これで戦力は削げた(そげた)はずです。」

「ああ十分だ。良くやった。」

敵はそれでもなお怯むことなく前進してくる。

「これで気を抜くな!!行くぞ!」

フェリオは先頭と突き進み、接触した敵を次々となぎ倒していく。

他の兵士達も王に負けじと。戦闘に加わっていった。

フェリオやランティス、ラファーガをはじめとする前衛に小狼と黒鋼も加わる。

2人は騎馬戦の経験は無かったので、馬の上で戦うというのは初めは戸惑ったものの、センスの良い2人はすぐに慣れ、どんどん敵を倒していった。

ファイ、フウは魔法兵や弓兵がいる後衛で戦った。

ファイは軍から与えられた弓を使い、百発百中の命中率で敵を射る。つくづく飛び道具が得意な男だ。

フウは攻撃、防御、回復の魔法を戦況に応じて使っていく。

広い視野で戦いを見つめ、的確に対処していく。避けられない攻撃が来たら防御し、傷ついた者の傷を癒す。フウが背後にいるというだけで、前衛の者達は安心して戦える。

普通、攻撃魔法と補助魔法の両方を使うことはできない。性質の違う魔力は相反し、お互いの効力を弱めてしまう。なので普通は攻撃魔法を使う者は回復といった補助魔法は使えない。両方を使いこなそうとするならば、高い魔力と魔法を使うセンスが必要だ。

セフィーロでもフウの他には、導師クレフやセフィーロの顧問魔導師レベルじゃないと使えない。魔力とセンス・・・フウにはその両方があった。

30分ほどすると結果が見えてきた。

敵の数は半分ほどに減り、残った者達の多くも傷を負っているといった感じだった。

もともと戦力が違いすぎたのだ。

敵は戦いを知らない農民が武器を持ったと言ったところだろうか・・・・

数は少ないとはいえ、ちゃんとした戦闘訓練を受けたセフィーロ軍の敵では無かった。

もう10分ほどすると、敵はやっと勝利を諦めたのか撤退していった。

「追うか?」

ランティスの問いかけにフェリオは首を横に振る。

「止めておこう。罠かもしれない・・・・それに、何の準備もなしにこれ以上荒野を進むのは危険だ。」

「そうだな。」

フェリオの賢明な判断にランティスも同意するほかない。

「ここでは怪我人の手当もろくに出来ない、城まで帰ろう。」

フェリオ達はセフィーロに戻るために引き返していった。

無惨にも地に伏した敵の中に、まだ息のある者がいた。その敵は近くにある弓を拾い上げると、最期の抵抗とばかりに、矢を射った。

その矢は最後尾を行っていたフウめがけて飛んでいく。振り返ったフウが、自分に向かって飛んでくる矢に気づき、小さく悲鳴をあげた。その声を聞いてフェリオ達も振り返る。

フウの近くにいるものは庇おうと動くが、間に合わない。武器を持っていないフウにその矢を弾く術もない。

最悪の事態を想像し、小狼は目を閉じた。

バシッという音がしたと思うと、辺りからは安堵の声と小さな歓声が上がった。

小狼は強く瞑って(つむって)いた目をゆっくりと開けて、フウの姿を確認した。

怪我をしている様子はないようだ、とりあえず小狼も安心し、肩をなで下ろした。そして、先ほどまでは確かにフウは何も持っていなかったのに、彼女の手には身の丈よりも長い剣が握られていた。

「???」

「左手にしている宝石が光ったと思ったら、いつの間にかフウさんの手に剣があったんだよ〜それでバシッと矢を弾いたんだ〜見事だったよ〜」

ファイはフウの真似をするように、剣を握るふりをして、手を振って見せた。

「急に剣が姿を現したんですか?どうして?」

その疑問に答えたのは一緒に戦闘に参加していたアスコットだった。

「フウの左手にあるオーブは、彼女が魔法騎士としてセフィーロに招喚されたときに、導師クレフが与えた特別のモノなんだ。フウが使っている剣も、セフィーロ最高位の創師プレセアが創った、成長する武器なんだよ。そしてその剣はフウが望んだときに現れる。」

「成長する・・・武器?」

「使い手の心の強さが剣を育てるんだ。フウは魔法騎士時代にあそこまで剣を成長させた。」

アスコットの説明を聞いてもにわかに信じがたい。意志持たぬ武器が成長をするなんて・・・改めてセフィーロの不思議さを感じた小狼達だった。

「大丈夫か、フウ?」

心配そうに駆け寄ってくるフェリオを安心させるかのように微笑む。

「大丈夫ですわ。油断して申し訳ありません。」

「気にするな。無事で良かった。」

そこにフウが存在しているのを確かめるように抱きしめる。

油断したのは俺たちだと自分を叱咤し、兵士達の気を引き締めるように声を張り上げた。

「俺たちは少し油断していたようだ!気を引き締めて城に帰るぞ!」

おぉ!とフェリオに返事をする兵士達。

今度こそ城への帰路をたどっていった。

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