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ツバサ〜緑髪の王と風の王妃〜

夕食の席で小狼は自分たちの考えた野盗や乱についての意見をフウとフェリオに言った。

「・・・だから野盗や乱のことは城の兵を減らすための囮では?」

フェリオは初め、苦い顔をして聞いていた。自分の命が狙われているという話はあまり心地よいものではなかった。そして「まいったな・・・」というようにため息をついた。

「・・・お前達の言うとおりだ。俺の負けだな。」

小狼達は何が負けなのかが分からず首をかしげる。フウは満足と言ったように笑みを浮かべる。

「私の言ったとおりでしょう、フェリオ?」

小狼達には二人の会話の意味が分からず、頭の上の?マークが増えるだけだった。

「賊、乱の出現が交互に起こる事から私もそう考えていましたの。フェリオはなかなか認めて下さいませんが・・・・彼は「自分の命を狙っているなら何故兵の警護がない城の外で狙わないのか。」と言うのです。」

「しかしそうだろう?わざわざそんな面倒な事をしなくても、街に言ったときなら警護も誰もいない・・・俺とフウの2人だけだ。」

フェリオの言うことはもっともだった。たとえ城の警護が減っても、城に乗り込んで来るぐらいなら、街で狙った方が随分楽だ。街の者達がたいした抵抗をするとも思えない。

「まぁ私もそのことは考えていましてよ?でも、賊達と関係ないとは言えません。街で狙わないのは単純なフェリオを騙すためかも・・・もしそうならしっかりと騙されていますわね。」

ほほほほっと口元に手を当てて少しだけ高い声で笑う。フェリオは何も言い返さずに、目の前の肉にぐさっとフォークを突き刺すことで怒りを抑えた。

小狼達も笑った方がいいのか、フェリオのフォローをすればいいのか分からず、ただ黙って食事を口にした。

「ははは・・・陛下もフウにはかなわないな。」

声がしたと思うと部屋の扉が開く音がして、そこから2人の男性が入ってきた。

1人は黒髪で背の高い男性で。もう1人は背は低く、光に透けて銀色の髪が薄く紫にも見える少年・・・・青年?姿形は幼いが物腰は人生を長く生きた者のようだった。

「ランティス、導師(グル)クレフ。戻っていたのか!」

「食事中失礼します。」

2人はそう言うとフウとフェリオの前に膝をつき、帰還の挨拶を交わした。

「無事の帰還を嬉しく思う。乱の鎮圧、ごくろうだったな。」

「お帰りなさいランティス、クレフさん。」

「ありがとうございます。陛下、王妃様もお元気そうで何よりです。」

形式上の挨拶はここでおしまいと言うように2人は立った。そしてフェリオとフウと先ほどまでの堅苦しい話し方ではなく、友人の用に話しあう。

「乱のあった村の方はどうだった?」

「いつもより規模が小さいものだったから怪我人は出たが死人は出ていない。俺たちがついた頃にはいつもどうりに撤収していた。」

ランティスは端的に説明をする。

フェリオは「そうか」と一言だけ呟いた。表情が穏やかなのは民に死人が出なかった事で安心したのだろう。

「ところで陛下。彼らは?」

今までフウと話していたクレフは小狼達の方に目を向けた。

「フウをこちらに送ってくれた次元の魔女の事を覚えていますか?彼女の客人です。こちらから小狼、サクラ姫、黒鋼、ファイ。そして、侑子さんが創造主を似せて作ったモコナ=モドキです。」

フェリオに紹介され4人は軽く頭を下げ「初めまして」と挨拶をする。

「セフィーロにようこそ。私はこの国で王佐(王の補佐官)の職に就かせて頂いてる、クレフだ。『導師』とは尊称みたいなものだ。皆私を「導師クレフ」と呼ぶ。まぁ好きなように呼んでくれて構わないが。」

クレフが自己紹介をしたので、一番近くにいた小狼は軽くクレフと握手をした。しかし、クレフを見る目はとても珍しいものをみるような目だった。

「どうかしたか?」

「いえ・・・その、随分若い方が王佐をしてらっしゃるんですね?」

クレフやセフィーロの者達は一瞬「え?」と思いくすくすと笑い出した。

「クレフは749歳ですわよ。」

「「「「え?」」」」

小狼達が驚くのは当然だろう。

「749・・・・歳?」

小狼は握手をしたまま唖然とした。普通の人間は長く生きても100年が限界だろう。玖楼国、日本国でもそうだった。

「驚かれました?まぁ仕方ないですわね、少年の様な姿をしていますもの。・・・・セフィーロでは姿で歳を判断するのはまず無理です。こう見えてフェリオだって462歳ですよ。」

「「「「ええ〜〜!!」」」」

4人は再び声をあげた。フェリオは外見から判断すると、20歳前後。そんな彼もありえない年月を生きているらしい。

「まさか・・・フウさんも?」

「女性に歳を聞くのは感心致しませんが・・・・まぁ良いですわ。私はまだ18歳です。」

フウは逆に少し大人びて見えた、20歳には見える。決して老けているという訳ではないが。

「どうしてそんなに長く生きれるんですか?」

サクラは心底不思議そうに尋ねた。

「セフィーロがまだ柱の意志で治められていた頃は、この世界は心がすべてでしたの、心が強ければ何百年だって生きれました。普通の人は長く生きるのを辛く感じますから、100年も生きればお亡くなりになられますが、まれに彼らのように長く生きれる強い心を持った者がいます。・・・・ランティスだって511歳ですわよ。」

「「「「えええ〜!!!」」」」

セフィーロに来て何度めの衝撃だろうか。長生きの説明をされても、驚いてしまう。

いままでセフィーロほど不思議な世界に来たことはなかった。

「そんなに驚くことか?」

あまりに大げさなリアクションをとる小狼達にフェリオは不思議そうに尋ねる。

「おれのいた国でも魔法はあったけど、魔力を使って長く生きても200年が限界だなぁ〜」

ファイがへらへらと答える。ファイのいた国では、魔力が強い者は時の精霊と契約を結ぶことによって、通常より長く生きることが出来るが、それも魔力が枯れるまでの間だけだった。

「他の世界はそんなものなのか・・・・」

異世界に何を期待していたのか、フェリオは少し残念そうだった。

「そうがっかりなさるな陛下。セフィーロが特別なのでしょう・・・・しかし「柱制度」がなくなった今、我々の寿命もどうなったことやら・・・・」

柱制度がなくなって以来クレフやフェリオも通常の人間よりもゆっくりではあるが、歳をとり始めた、他の人間よりも成長の速度が遅いのは強い魔力をもっているからだろう。しかし、確実に歳をとりはじめた。

「少し気になっていたんですが「柱制度」とは一体どのようなものなのでしょうか?」

小狼がその質問をすると、場の空気が一瞬凍った。特にフウは顔色を悪くするほどだった。

「わ、私少し気分が優れませんの・・・・部屋で休んでいますね。」

フウはそれだけ言うと、食事をほとんど残して部屋を出て行った。

「??何か気に障ることを言ったでしょうか?」

「いや・・・・気にするな。ただフウには少し辛い思い出があるだけだ。」

過去のことを思いだしフェリオも少し顔色を重くする。

そんなフェリオに変わり、クレフが説明を始めた。

「柱制度とは、世界の支柱となった一人の人間の心が世界を治める事を言う。柱が温かい世界が良いと強く望めば世界は温かくなるし、平和な世界が良いと望めば、人々の心は自然と安らかになる。昔は人々の心の中にあるほんの少しの憎悪や不安が具現化した魔物が夜に少し出るだけだった。とにかく全てが柱の思いのままに世界が成り立っていた・・・・」

クレフは淡々と語る。

「それじゃあ柱になった人はとっても辛いね・・・自分一人で世界を支えなきゃ駄目だなんて・・」

サクラは自分ならきっと耐えられないと思った。

「ああ・・・エメロード姫もきっと辛かったんだろうな。」

「エメロード姫?」

聞き覚えのある名だがただの同姓同名か、魂が違う同じ人か・・・・

「前代の柱だ。フェリオ陛下の姉姫でもある。」

そう言われ小狼達はフェリオを見る。そんな4人にフェリオは少し悲しい笑みを返した。

クレフ達の説明からいくつかの事が推測できた。

一つは「柱制度」は過去にあった事で今は王政によって世界が治められていること。

そしてもう一つが「柱制度」が過去の事なら、柱であった者はもう居ない・・・亡くなっているということだった。

前者は確実であろう。後者もフェリオの表情から察するに、正しい推測であろう。

「姉上が柱という立場にあったから、俺は王子として扱われてきた、しかし尊ばれる立場にあるのは姉上だけであり、その弟であるだけでもてはやされる俺に不満を抱く者は多くいる。柱制度が崩れ王政ができ俺が王になった、そんな俺に反する者がいるのは仕方がない。フウ達が賊と乱の件を俺の命を狙っての事だと考えるのはそういった理由だ。」

あまり良いとは言えない自分の置かれている立場を苦笑混じりで語る。

仕方のない事とはいえ、辛いことであるのには変わりがなかった。

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