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ツバサ〜緑髪の王と風の王妃〜

〜セフィーロ城・城内〜

長々と続く廊下の壁には美しい絵画や紋様が刻まれたタペストリーなどが飾られていた。

窓から見えるセフィーロの町並みは遠目で見ても分かるほどに栄え賑わっていた。国が豊かなのはきっと王の政治が良いのだろうと小狼は思った。

「本当に美しい国ですね?これほど美しい国はいままで見たことがない。」

感嘆の声を漏らす小狼にフウは優しく尋ねた。

「今までどんな国を旅なさっていたのですか?」

「本当にいろんなところを旅しました。黒鋼さんがいた日本国にも行ったことがあります・・・」

小狼は今まで訪れた国のことを一つ一つ丁寧に説明した。フウは楽しそうに聞いているが時折寂しそうに瞳を伏せた。

初めはそんなフウの雰囲気に疑問を覚える小狼だが、あることを思い出した。フウは自分の国には帰れない。黒鋼が自分の国に帰れた事やいつかは自分たちの国に帰るであろう小狼達の事をうらやましいと思うのだろう。

小狼は申し訳なさそうに顔を苦くした。それに気づいたフウは再びいつもどうりの笑顔を見せた。

〜セフィーロ城・玉座〜

広々とした部屋を明るく照らすのは天井から吊されている美しいシャンデリア。

その部屋の大きな2つの椅子にフェリオとフウは腰かける。小狼達もすすめられた椅子に腰を下ろした。

そこでフェリオは小狼とフウによって彼らがどうしてこの世界に来たのかを説明された。

「・・・つまりお前達はサクラ姫の記憶を求めて旅をしている。いくつもの世界を渡って。」

フェリオはスケールの大きい彼らの旅の目的を一つ一つ整理していく。

「・・・はい。王妃様を驚かせてしまった事は大変申し訳なく思っています。・・・少し着地場所が悪くて。」

再び小狼は謝罪を述べる。フェリオは「それはもう気にしていない」というように柔らかい視線を向けた。

「状況は理解した。侑子さんにはフウをこちらに送ってくれた恩もある。あの人の客人を邪険には扱えない。この国にいる間はこの城にとどまるといい。」

「ありがとうございます。」

感謝の言葉を述べ、小狼達は案内された部屋に向かった。

「彼らのこと・・・ありがとうございます。」

小狼達が部屋から出た後、フウはフェリオに言った。

「お前には悪いが侑子さんには本当に感謝している。」

「私に悪い?何故・・・私は自ら望んでセフィーロに来たのに。」

「そうだが・・・お前はもう両親にも・・・友人やヒカルやウミにも会えない。」

フウはその全てを捨ててセフィーロに来た。愛する人と共に歩む為に。

フェリオは本当に嬉しかった。そして同時に、フウから全てを奪った事に罪悪感を抱いていた。

「私が選んだ道です。私は貴方といることを望んだのです。何を悪いと思うことがおありですか?」

フウは立ち上がりフェリオの前に足を運ぶ。そして優しく抱きしめた。

「・・・私の家族も、光さんや海さんも私の幸せを望んでくれた。貴方と一緒にいれて私は幸せです。」

「・・・フウ。」

フェリオもフウを優しく抱きしめた。

案内された客室をみて小狼は呆然とする。

一人に一室与えられた部屋だがものすごく広かった。天井は高いし、ベッドは大人が3人寝ても大丈夫というくらいに大きい。部屋にはトイレとお風呂場も内装されている。

「それでは小狼様、何かご用がございましたら、近くのメイドに声をおかけ下さいませ。」

そう言って小狼を部屋まで案内した女性は頭を下げ部屋を退室していった。

「広い部屋だな・・・俺の家より大きいかもしれない。」

小狼はキョロキョロと部屋の中を見回したが、それを考えると少し寂しいので、部屋を見回すのをやめ、テラスにでてセフィーロの町を見下ろした。

(平和だな・・・・この国のどこにサクラの羽根が・・・)

コンコンとドアをノックする音が聞こえ、小狼は部屋の中に戻った。

「失礼します」と一声かけて入ってきたのはフウだった。

「お、王妃様。何かご用ですか?」

「ええ・・・小狼さん、私の事はフウと呼んでくださいな。王妃と呼ばれるのはなんだか恥ずかしくて。」

そう言いながら愛らしく微笑んだ。

「・・・街におりて見ませんか?一カ所にとどまっていてはモコナさんも羽根の気配を感じ取ることは出来ないでしょうから。」

「街に・・・ですか?おうひ・・・・フウさんと?」

「そうです。案内をする人が必要でしょう?私が同行いたしますわ。」

「でも、いいんですか?王妃の立場にある貴方が街に行ったりして。」

「気にしないで下さい。いつもフェリオと2人で街に行っていますから。・・この国は王と民が近い国なのです。心の距離が・・・ね。」

そう言って部屋から出て行った。「準備が出来たら声をかけて」と言い残して。

「王と民の心の距離が近い国・・か。」

そういうのはなんだか素敵だなと思った。とても心が温かかった。

賑やかな城下の街をフウと小狼達5人と1匹で歩く。

街の人達はフウを見ると嬉しそうに微笑み挨拶をしてくる。皆言葉使いは丁寧ではあるが、気兼ねなくフウに話しかけた。

「ごきげんよう、フウ様。」

「ごきげんよう、ナリアおばさん。風邪が治ったばかりでしょう?体の方は大丈夫ですか?」

よく訪れるのか、フウはこの辺りの人たちとは顔見知りだった。

フウの知り合いとして街の人たちは小狼達にも優しく接してくれ、質問をすれば丁寧に答えてくれる。羽根の情報を集めるのにも良かった。

「不思議な羽根を知りませんか?・・・このくらいの大きさで、綺麗な模様が描いてあるんです。」

小狼は紙に羽根の絵を描いて辺りの人に見せた。

「ん〜綺麗な羽根だね・・・知ってるかい?」

「いや・・・見たことないな〜」

辺りの人は相談しあうがこの中には羽根を知っている人がいないようだ。

「この辺りにはないようですわね。モコナさんも羽根の気配を感じ取っていないようですし。」

「そうですね・・・すみません、わざわざ連れてきて頂いたのに。」

「かまいませんわ。私も街の様子が気になっていましたし・・・」

困りましたわ。と言うように口元に手を当てた。

「街の様子が気になるって・・・何かあったんですか?」

「ええ・・・ここではなんですし、城に戻ってからお話し致します。」

そうフウが言ったので5人と1匹は城に戻っていった。

〜セフィーロ城・フェリオとフウの部屋〜

部屋の真ん中に置かれた大きなソファに腰をおろす。フウが温かい紅茶を注ぎ人数分を机の上に並べ、自分も腰をおろした。

「最近街に野盗がでるらしいんですの。その情報を聞いて国の兵士も警備にあたったんですが、兵士がいるときには賊はでません。そして、兵士が警備をするようになって数日が経つと、必ず各地で小さな乱が起き、街の警備にあたっていた兵もそちらに向かいます。そしたら・・・」

「その間に野盗がでる?」

フウはコクリと頷き、「困りましたわ」と小さくため息をつく。

「城の警備を減らせば、乱があっても街に兵を回せるんですが、セフィーロの王政が始まってからまだ4年・・・王に不満を抱く者も多々いますの。」

生まれたばかりの王政に不満を抱く者がいるのは仕方がない。「柱制度」があった時代は平和で、夜にでる魔物を倒すだけの兵の数しか必要なかった。王政が始まってから4年で、柱制度時代から5倍以上の兵の数になったが、まだまだ足りなかった。

「フェリオは城の兵の数を減らして街に回せと言いますが、そういう訳にもいかなくて。」

この国に王位継承者はまだいない。フェリオの血族もいないので、フェリオが死ねば、王の血を引く者はいなくなる。フェリオはまさに「虎の子の人間」だった。

フウの部屋から退室し。4人は小狼に与えられた客室に集まっていた。

「フウさんが言っていた野盗と乱を起こしている人はグルでしょうか?街に警備兵がいる時を狙って各地で乱が起きる・・・・どう考えても兵の気を引いているとしか思えない。」

先ほどフウから聞いた話から野盗の目的を考える。

「だがわざわざ警備兵の気を引く割にはたいした物を盗んでいるとは思えねぇが・・・」

盗まれた物は、それほど高価ではない時計や野菜類などの店の売り物、家の中の机のテーブルクロスetc嫌がらせとしか思えないような物ばかり盗んでいる。

「犯人の目的は物を盗む事ではない?でも、乱の方が目的だとは思えませんが。」

乱の方も小さな村でほんの少数の死傷者がでるが、国軍が来るとすぐに撤退する。やはり気を引くためだけにやっているという感じだった。

「物を盗む事も、乱を起こす事も目的ではない・・・・じゃあ一体何が目的なんでしょうね?」

小狼は「う〜ん」と頭を抱え込むが、なにも考えが思い浮かばなかった。

「平和そうなセフィーロも大変なんだね。フウさんは王様の命を狙う者もいるって言ってましたし・・・」

「そうか!!」

サクラの台詞になにかヒントがあったのか、小狼は声をあげた。

「もしかしたら賊達の目的は王の命・・・・フウさんは王様も一緒に街によく行くって言ってましたから、王の性格を理解するのは割と容易い(たやすい)・・・・民が困っていたら城の兵の人数を減らしてでも街に兵を回すことも考えられる、城の警備の人数が減ったときに城に乗り込むきじゃ・・・・」

考えられない事じゃない。小狼達が城に入って来たときも凄い人数の兵が城を守っていた。あの人数を突破するのはまず無理だ。城の警護を減らすのが賢い考えだろう。

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