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Desire

もう逃げたくない、と桃矢は思った。

どんな結果が待っているにしろ・・・例えそれでさくらを傷付ける事になったとしても・・・。

どんな形であれ、いつかは知らせなければならない。そして〝その時〟が今である事も・・・。

桃矢はさくらの部屋をノックした。

「はい」

さくらが応対する。

「・・・お兄ちゃん!」

「さくら、ちょっといいか?」

桃矢の普段とは違う雰囲気(ふんいき)にさくらは何かあると感じた。

一緒にいた知世と小狼に一言告げる。

「悪いな。大切な話があるんだ」

さくらは申し訳なさそうに小狼と知世に言う。

「ごめんね。知世ちゃん、小狼君・・・」

「いいえ、気にしないで下さい」

「・・・別に気にするな」

小狼と知世はそう言い、部屋から出て行くさくらを見送った。

さくらは桃矢の部屋に行った。そこに雪兎はいない。

「どうしたの? お兄ちゃん。大事な話って何?」

「・・・さくら、落ち着いて聞いてくれ。母さんの事なんだけど・・・」

「お母さん? こっちに来れるの?」

「・・・いや、そうじゃない・・・。さくら、母さんはもうここには来ないんだ・・・」

さくらの頭の中が真っ白になる。

(どういう事・・・?)

さくらの表情からしてショックを受けている事は解っていた。

「母さんは・・・俺達の事は総て忘れているんだ・・・」

「どういう事なの?!」

さくらは思わず大声を上げる。

「母さんは・・・5年前にある犯罪を犯したんだ・・・。そして重要機密(じゅうようきみつ)を知った人間に対して俺達が判断を下す・・・。母さんの場合はその情報機密が多岐(たき)に渡っていた・・・。そのまま連れ戻せば母さんは殺されてしまう・・・。だから・・・俺が・・・」

生きていく上で必要な記憶だけを残し、他の総(すべ)ての記憶を消したと言葉を継ごうとした時だった。さくらが桃矢に問いかける。

「どうして? だって・・・お母さんそんな人じゃないもん!」

泣き叫ぶかのような声。桃矢の心の一部がキリキリと痛む。

「・・・母さんは・・・あの人のせいでこうなったんだ」

「あの人って誰? 私も知ってる人?」

「・・・さくら、〝雨宮桂樹(あまみや・けいじゅ)〟って名前、覚えてるか?」

「・・・うーん・・・聞いた事があるような・・・」

「その桂樹がそもそもこの犯罪に絡(から)んでるんだ」

「えっ!?」

さくらは思わず絶句した。

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