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Desire

凌は、今頃園美と桃矢達が和解(わかい)している事を知っていた。

それは彼の「予知夢」によるものだが・・・。

まだ幼少の頃、この能力(ちから)があれば何でも出来ると思っていた。

だが決して良い事ばかりではない。時には残酷な事を知ってしまうのだ。

その一つが撫子の一件だった。

総てを知っていても何も出来なかった自分を悔(く)いていた。

勿論、桃矢が撫子の記憶を消去する事も桂樹(けいじゅ)が絡んでいる事も・・・。

「・・・結局〝能力(ちから)〟なんてあっても意味なんてないじゃないか・・・」

彼は自嘲(じちょう)めいたような口調で言う。

そして、さくらが誘拐未遂に遭う事も分かっていた。

しかし、敢(あ)えて何も言わなかった訳ではない・・・。

彼が見た予知夢は全くの暗闇で、全身黒ずくめの男性がいるという事だけだった。

夢が外れた訳ではない・・・。しかし何故か彼は自分自身を赦(ゆる)す事が出来なかった。

撫子の二の舞になるかも知れないと分かっていても・・・。

今の桃矢には何を言っても無駄・・・というよりさくらへの思いを知っていた。

だから何も言えなかった。別に桃矢が言わせない様にしている訳ではない。

それでも・・・、知っていても・・・言えないもどかしさが彼を苦しめる。

「こんな〝能力(ちから)〟なんて・・・なければ良かった!」

絶叫にも似た声だった。彼は何かを叫ばずにはいられなかったのかも知れない。

一方、羽柴達の調べはもう終わっていた。

「・・・しかし何でまた同じ過ちを繰り返すんだ?」

羽柴がポツリと言う。

「似ていたからでは?」

羽柴の問いにポチが答える。

「似ていた・・・。確かにそれはあるかも知れませんね」

続が言う。

「どういう事だ?」

「羽柴さん・・・。今回はどうしたんですか? 随分と察しが悪いようですが?」

「なーに。たまにはこんな事もあるさ」

笑いながら羽柴は言う。

「恐らく・・・木之本撫子にそっくりになっていた、というあたりでしょうか。かつての彼女を見ているような錯覚(さっかく)に陥(おちい)ったのでしょう。かつて出来なかった事をしようとしたのかも知れませんね」

ポチが説明する。

「?」

首を傾(かし)げる羽柴に続が説明する。

「かつて出来なかった事・・・。それは〝彼女の総てを支配する〟・・・。要は自分以外の誰かを考えさせないようにする事が目的だったのでしょう」

「自分以外の誰の事も考えるな、誰も愛するな・・・ってか? 冗談じゃない」

自嘲めいて聞こえたのは気のせいだろうか。それとも・・・。

今は全くの別人になっているであろう木之本撫子を思うと、やりきれない気持ちでいっぱいだった。

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