Fanfic

Desire

さくらが出掛けてから既(すで)に30分が経過していた。

「・・・ったく何だよ、あいつは。すぐに帰るって言ったくせに」

桃矢はダイニングでずっとさくらの帰りを待っていた。

すると上の部屋から知世が出てきた。

桃矢の様子からするとさくらはまだ帰ってきていないと感じた。

「あの・・・まだお休みにならないのですか?」

「ああ・・・さくらのやつまだ帰ってきてねえからな。・・・変なヤツに絡まれたりしてなきゃいいんだが」

口は悪いが、誰よりも心配しているのは他ならぬ桃矢である事を知世は理解していた。

「そんなに遠くまで出掛けたのでしょうか?」

「いや。すぐそこ・・・ピッフル・プリンセスにジュース買いに行くって言ってたから」

「まあ、あの有名なコンビニですか?」

「ああ。さくらは昔から好きだったんだよな・・・。初芝家が関係しているなんて知らない頃から」

ピッフル・プリンセスは初芝家がオーナーになっている有名コンビニである。

場所は初芝家から歩いて1分もかからない。

何せ目の前にあるのだから。だからこそ、外出を許可したのだ。

それなのに帰りが遅い事には余計心配だったのだ。

「・・・小僧は?」

「李君ならもうお休みになりましたわ」

「・・・そうか」

その頃、さくらは―――。

全身黒ずくめの男性に連れ去られようとしていた。

「やっ・・・」

必死に抵抗するさくら。しかし、恐怖から逃(のが)れる事が出来ないでいた。

「いちいちゴタゴタ言わないでさっさと乗れ!」

「ふえ・・・」

思わず泣き出しそうになる。

(怖いよ・・・誰か助けて・・・)

すると、突然景色が変わった。

「!?」

驚く暇もなく黒ずくめの男性はあっさりと倒されてしまった。

「・・・え?」

突然の出来事にさくらは目が点になった。

「大丈夫かい?」

メガネを掛けた男性がそこに立っていた。

「は、はい!」

いまいち状況がつかめないが、この男の人が助けてくれたという事ははっきり理解できた。

「こんな夜遅くに女の子一人だと大変だぞ」

「大変って?」

「また、さっきのようなおぢさんに遭うかも知れんぞ」

「だ、大丈夫です。歩いてすぐのところですから!」

さくらはある事を思い出した。

「あ、あの…」

「何だい?」

「あの・・・名前教えてください」

「名前?」

メガネを掛けた男性は不思議そうに問う。

「あの・・・えっと・・・助けて下さって有難うございました」

そう言ってお辞儀をする。

メガネを掛けた男性は笑顔で答えた。

「おぢさんは〝羽柴〟って言うんだ」

「羽柴さん・・・ですか」

「ああ。今日はもう遅いから送っていくよ」

(でも・・・)

さくらは悩み抜いた末、羽柴に送ってもらう事にした。

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