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コードIF 忠節のトウカ

立ち上がる時

事件の第一報を亮二が知ったのは天津本社での会議室でだった。

「河口湖のホテルで人質を取った立て篭もり事件が起きました!」

秘書の浪川の報告を受けると、会議は一気に活気付いた。

ブリタニア軍はどう動くか、犯行グループの正体は、人質の数は、ホテルと警備契約していた自分たちの社会的責任は、現時点で自分たちしか知りえていないこの情報をどう活かすか、混濁する会議室の中で、亮二は一人渡された人質のリストを読んでいた。

「この情報を提供して、ブリタニアにポイントを稼いでおきますか」

隣にいたメガネの白髪幹部が亮二に耳打ちした。

「どうかな。ポイントよりも、発生を防げなかったことを非難されるかも。そうなると、目標としている再契約も遠のくよ」

現在、天津警備会社はブリタニア軍との契約を打ち切られている。打ち切ったのは現総督のコーネリアだ。

(いずれこの情報は公になる。ルルるんはその時、どう動くのかな)

渡されたリストの最後のページを開いた。そこに見覚えのある名前があった。ミレイ、ニーナ、シャーリー・・・。

亮二が立ち上がると、その場の全員の視線が注がれた。その一つひとつを確認するように見回し、亮二は言葉を発した。

「みんな聞いてくれ。この事件は、俺たち天津警備会社で解決する」

事件が公表され各放送局で特別番組が編成された頃、亮二と刀花は大きな廃工場にいた。

亮二は腕時計を確認した。液晶画面に指定された時間が映し出されると、それを待ちわびていたかのように建物の奥から巨大なトレーラーが現れ、二人の前に停車した。

「いい車だねぇ。買ったのかな?」

「いただいたのさ」

亮二の独り言に答えたのは、トレーラーから出てきたゼロだった。

日が暮れ始め、やっと亮二は車で河口湖へと向っていた。運転手は浪川だ。

「話し合いをしていたら、すっかり遅くなっちゃったね」

ゼロと彼が新たな創設した『黒の騎士団』。亮二は今回の事件についてある取り決めを彼らと行なった。

「ところでいいの? コーネリアには会うけど、ちょっと話する程度だと思うよ」

横にいる刀花に聞いた。志藤流の門弟たちを呼び、この事件のために亮二が書いたシナリオを説明すると、ボディーガード役に刀花が手を上げた。理由は「コーネリアに会いたいから」だった。

「かまいません。直にこの目で見られれば充分です」

今刀花は黒のスーツを着込み、僅かだが化粧をしている。化粧をしてぐっと大人びた色気をもつようになったことに、亮二は素直に驚いた。もちろん、腰には大小の刀が差し込まれている。

闇夜が目につく時間に、車は報道陣に囲まれた事件現場に到着した。

「じゃあ、これ。手はずどおりに」

降り際、亮二はポケットに入れていたディスクを浪川に渡した。浪川は頷くと、「お気をつけて」と一言残し、その場から離れた。

「コーネリア総督に会わせてほしい。私は犯人たちと仲間だ。説得の許可をもらいたい」

警護の兵士に亮二はこう言った。最初、兵士はいぶかしんでいたが、亮二の身元がはっきりすると、コーネリアのいる司令室へと通された。

「坂田CEOだったな。犯人たちと仲間だというが、どういう意味だ。お前も日本解放戦線のメンバーということか?」

司令室で、コーネリアは椅子にすわり亮二と刀花を睨んだ。周囲には銃を持った兵士が取り囲むように立っている。

質問に、亮二は首を横に振った。

「いえ。私は解放戦線のメンバーではありません。日本人です」

コーネリアの眉間に皺がよる。そして立ち上がると同時に長銃を腰から抜いて構えた。

「貴様。契約を切られた腹いせに嫌がらせに来たか?」

それを追うように兵士たちが銃口を向けた。亮二は少し困った様子で頭の後ろをかき、刀花はゆっくりと身をよじるようにして、刀の柄に手を掛けた。

「コーネリア総督。あちらでも人質事件が起きているのに、こちらでも人質事件が起きるのは大変でしょう。ですからやめましょう。こんなことは」

人質、という言葉をあえて亮二は使った。客観的に見れば、この状況でそれにあたるのは亮二と刀花だ。だが、

「おためしになられますか。どちらが速いか」

刀花が言い、金属音がしたとき、コーネリアの表情が変わった。どうやら気づいたらしい。

刀花とコーネリアの距離は、目算で五メートル。刀花の居合いなら充分に射程となる距離だ。

「くっ!」

悔しげな声を漏らす。そう、この場合で人質とはコーネリアの事なのだ。

「ご安心ください。コーネリア総督。この事態、私に任せるのがもっとも上策なのです」

亮二は特上の笑みを作ると、突如左右の足を大きく開き、右手で脇を押さえ、左の手の平を天にかざすように高く掲げ、顔は憂いを帯びるかのように斜め下に向けた。

「説明しよう。坂田亮二はオタクである!

オタクとは元来争いを好まぬもの。しかし人が人である以上、争いが起きてしまうのも事実。オタクはそのような現実《リアル》に対し、争いを回避または和らげる術に長けるよう精進してきたのである!

今回のように力を振るわず対話にて解決に導くという事態。その事態にオタクを用いるということは、氷のモンスターに炎の魔法を浴びせるがごときのこと。

そう、つまり大好物《クリティカルヒット》なのである!」

亮二の立ち姿。それは世に言う『ジョジョ立ち』であった。

その場にいた、亮二以外の全員がポカンと口を開いた。

浪川 剛

36歳。亮二の秘書であり、良き理解者。100キロを超す巨漢で、亮二と同様にオタク趣味を持つ。

ただ、ロボット系や特撮系が好きな亮二に対して、萌え系や美少女系といったものを浪川は好む傾向がある。

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