Fanfic

コードIF 忠節のトウカ

二つの花

サイタマゲットー。このコーネリア・リ・ブリタニアが広げた戦場に、ルルーシュは立っていた。硝煙と埃臭さのなか、ルルーシュは空を見上げた。ある女の気配を感じてだ。

(刀花。お前はここにいるのか?)

志藤流の目的を知った時、ルルーシュは「コーネリアには聞きたいことがある」と自分より先に殺さないよう、刀花と約束した。だが、実際に彼女がそれを守るか、確信が持てなかった。

「最悪、敵は二つになるかもな」

ギアスを使うか、殺すことになるか。どちらにしても覚悟をする必要がある、とルルーシュは思った。

コーネリアの指令艦に潜入した刀花は、二つのことで悩んでいた。一つは、内部の構造がわからないことだ。天津はブリタニア軍との契約を打ち切られ、多くの情報を失ってしまった。この指令艦も、クロヴィスのものと一見似通っているが、細部が違い、それがそのまま罠となるように作られている。どの道が目的へと通じるのか、まったく検討がつかなかった。

もう一つは、ルルーシュとの約束だった。今の刀花にそれを守れると断言できる余裕がなかった。もし、一度でもチャンスがめぐってきたら、迷わず斬らなければならない。

友達との約束。守りたい、けれど守れないかもしれない。刀花はむしろ、こちらのことで頭を悩ませていた。

今回の一報が入った時、真っ先に志願したのは刀花だった。コーネリアが行なう虐殺に怒りを覚えたわけではない。ただテレビで顔を見たとき、何か惹かれるものを感じたからだった。嫌悪と親近感、虫酸と会いたいという欲求。その心のままに、刀花は立ち上がった。

刀花は勘を頼りに歩き続け、広々とした倉庫のようなところにたどり着いた。そこには、一体の巨大な存在があった。

ナイトメアフレーム、サザーランド。両刃の剣を装着しているのを見ると、コーネリア部隊専用の機体のようだった。辺りは人の気配も多い。どうやらここはNFの保管庫のようだ。

「お、また一つやった」

「さすが親衛隊だな。イレブンなんて目じゃない」

物陰から覗き込むと、モニターを鑑賞する二人の整備士らしき男がいた。刀花は目を移すと、そこには巨大なランスで串刺しになったサザーランドが映っていた。

(ルルーシュが、負けてる)

即座に、刀花は戦況を把握した。持っていた刀を握り締める。だが、今はどうにもできなかった。

「全員、コックピットから顔を出し、名前とIDを言え」

コーネリアの命令を聞いたとき、刀花の背筋が凍った。クロヴィスに戦いを仕掛けた時、あれほど華麗に決めた男が、今こんなにも基本的な確認行為で追い詰められている。信じられなかった。

次々と、サザーランドから出てくる人間を見ながら、刀花は願った。どうか、ルルーシュは自分の想像を超えた人間であるよう、この中にはおらず今はコーネリアの喉もとに射程を合わせられる距離にいるようにと。だが、

「あのサザーランド。なんか、反応がないな」

モニターには、石のように動かないサザーランドが映し出された。

(ダメだ、あの中にルルーシュが・・・)

ここで行動すればコーネリアの首は奪取できない、だが黙っていればルルーシュの命は無い。刀花は迷った。だが、行動は一瞬だった。

飛び立つように地面を蹴ると、男の一人の頭に強烈な掌を打ち込んだ。事態に気づいたもう一人が振り向く。その瞬間を狙い、あごをかすめるような一撃をあたえた。その攻撃は、あごを支点として脳が頭蓋骨のなかで何度もシェイクする効果となる。こうなれば、まず起き上がれない。

刀花は巨大な鉄塊を見上げた。

「誰だ。サザーランドに乗っているのは!?」

周りから雑音のように整備士たちの声が聞こえる。それを跳ね飛ばすように、ランドスピナーを起動させた。

「待っていろ! ルルーシュ」

火花を巻き上げ、サザーランドは一直線に突進した。

外に飛び出すと、見えたのはルルーシュのサザーランドに手を掛けたグロースターだった。

「はっ!」

体勢を低くすると、装着していた剣を抜き、グロースターの両足を切断した。轟音、土煙と共にグロースターは倒れた。

「今すぐコックピットに戻れ」

太い命令が聞こえた。だが、刀花はランドスピナーを片足だけ使い、コンパスのように機体を回転させ、周囲の機体全ての足を切断した。

「ルルーシュ。聞こえるか!」

「・・・! その声、刀花か」

「逃げるぞ」

ルルーシュは、後ろを向き逃げの体勢を作った。その時、一体の機体が指令艦から躍り出た。

「逃がすか!」

女の声だった。巨大なランスが向ってくる。刀花は横にかわすと、持っていた剣を高く持ち上げた。志藤流『剛剣』の構えだ。コックピットごと両断するつもりだった。だが、

「待て、それはコーネリア機だ!」

ルルーシュの言葉に、刀花は動きを止めた。そして、後ろを悠々と振り向き、ランドスピナーを起動させ、並んで機体を発進させた。

「姫様、ご無事ですか!?」

「・・・大丈夫だ」

しかし、コーネリアの全身は生ぬるい汗にまみれていた。あの機体が剣を振り上げた瞬間、コーネリアは自分の体が縦に割られるイメージを見た。戦場を駆ける身、それゆえ何度も死を意識した瞬間がある。だが、今ほど強く、しかもはっきりと意識したのは初めてだった。

(いったい、何者だ。そして、あの構え)

その瞳には、あの剣を高く持ち上げた姿が焼き付いていた。

「完敗だ!」

「そうね。悔しいけど」

刀花とルルーシュは、下水道を走っていた。

「戦力差さえ埋めれば、勝利はあった」

「でも、それが一番のネックでしょう。私たちの場合」

ルルーシュは今の敗戦に強く憤っていた。刀花の心は別にあった。コーネリア。わずかしか刃を交えていない。しかし、もう一度交えたい、そして交えるような、そんな気持ちだった。

「作ってやるよ。俺だけの軍隊を!」

刀花が振り向く。そこには強い決意を秘めたルルーシュがいた。

〜第7景・完〜

スライサー

小説オリジナル武器。ランスロットの装備であるMVSの一つ前のタイプの両刃の剣。接近戦における効果は高いが、稼動時間が短く、コストも割高なため標準装備とならなかった。

コーネリアの部隊のサザーランドには装備されているが、これは実戦的な意味合いより、他の部隊との差別化の理由が大きい。

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