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コードIF 忠節のトウカ

奪われた仮面

午後の陽気に包まれる学園を歩く刀花。その心には枢木スザクの存があった。

数日前、転校生としてやってきた彼に刀花はすぐさま接触を持った。自分たちにとって利用価値が高いのは明白だった。彼の幼少から、これまでの複雑な経緯についてはそれなりに知っている。一筋縄ではいかない人間だと想像していた。だから、刀花は驚いた。

彼は純粋で真っ直ぐな性格の人間だった。堂々と正義を信じる心、それは、刀花に強い光とそれによって生じた影を胸に焼き付けた。

「スザク君、きみはどうしてそんな風に・・・」

言葉を口に出したその時、

「ふあああああああああ!!」

ルルーシュの、普段では絶対に聞かれない叫びだった。何事かと思う間も無く、一匹の猫が刀花の前に立ち止まった。

「にゃうん」

刀花は凍りついた。その猫は、ゼロの仮面をつけていた。

「な、なあ!」

思わず声を荒げると、猫は驚いたように走り去ってしまった。

「刀花!」

二階の窓からルルーシュが身を乗り出していた。

「あの猫を追ってくれ!」

刀花は獲物を狙う豹のように地面を蹴った。

姿を捉えた刀花は一直線に駆ける。単純な脚力なら負けなかったが、ゼロ猫は塀に飛び乗ると、反対側へと姿を消した。

「しまった!」急いで塀の終わりまで走る。途中、校内放送があったような気がしたが、構っている余裕はなかった。一秒でも早く、ゼロ猫の姿を見つけようと塀を曲がる。すると、

「今の放送!刀花さんのキスもあるんですか?!」

男子生徒数人が壁となって立ちはだかった。

「えっ、えぇっ!?」

「今校内放送で、ミレイ会長が猫を捕まえた人には生徒会のメンバーのキスがもらえるって」

ミレイ、という単語で全て理解した。男子生徒たちの目は光り輝いている。

(ああ、自分はこんなにも男子から人気があったんだなぁ)

意識が遠のく。悪い気はしない。しかし、

「だ、駄目です。絶対駄目です」

一番近くにいた男子生徒と自分が唇を重ねるところを想像した。顔の表面が沸騰したように熱くなった。自分の唇をささげる相手はすでに決まっている。他の人間に上げるなど、ありえないことだった。

「すいません!」

壁の隙間から縫うように足り抜けると、再びゼロ猫の捜索にかかった。ますます自分の手で見つけなければならなくなった。

ゼロ猫は見つけられなかったが、代わりに別のものがあった。刀花は並んで走った。

「ルルーシュ。なぜ猫が仮面をつけている?!」

吐き出したかった言葉をぶつけると、ルルーシュはしかめた。

「仕方ないだろ。事故だ」

「そんな理屈で納得しろと?おかげで私の唇がっ」

「唇?そういえば言っていたな。お前のが目当てなんて、ずいぶん物好きが多いんだな、この学園は」

ルルーシュが特有の見下すような笑みを浮かべた。

「うるさい、私だって驚いている」

「万が一のときは、俺が責任をとってやるよ」

「お前の責任などいるか!」

「二人とも」

後ろから声がした。いつの間にか枢木スザクが二人のすぐ側まで来ていた。刀花はまったく気づかなかった。

「どうしたんだい、ルルーシュ?そんな言い争って」

「いや、なんでもない。それより、猫は」

スザクはクラブハウスを指差した。

「さっきあっちに行くって話を聞いたんだ」

「それなら直接追えば・・・」

そこまで言って刀花は口をつぐんだ。スザクはルルーシュに知らせに来たのだ。彼はそういう男だ。

クラブハウスへ足先を定める三人。だが、彼らの横を一陣の影が通り抜けた。鈴火だった。手には木刀を携えている。

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