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コードIF 忠節のトウカ

緑のきみ

志藤流との盟約からちょうど一週間。その日、刀花とルルーシュは生徒会室へと続く廊下を歩いていた。

「おい、あれ」

ルルーシュは前を指差した。向こうから二つの影が歩いてくる。刀花は、その姿に声が出た。

「坂田さん、ミレイ会長!」

互いが目視できる距離になると、亮二以外の三人は等しく驚いた。

「アッシュフォードは天津と警備契約をしててね。今日は理事長と話し合いをしにここに来たんだ」

場を察した亮二が刀花とルルーシュに説明した。

「あの、彼らは生徒会の人間なんですけど。坂田さんとお知り合いなんですか?」

ミレイの言葉に、亮二はあっさりと認めた。

「刀花は、知り合いが天津と関係してまして。ルルーシュは・・・、いわゆる同好の士です」

「えっ?!」

ミレイは驚きで口元を押さえると、まじまじとルルーシュを見た。どうやら、亮二はオタク、ということを知っているらしい。

「まあ、人は見かけによらないっていうか・・・。でも、ルルがねぇ。裏では『萌えぇ!』とか言ってるのかしら」

「違います会長!そいつの言うことを真に受けないでください」

「わかってる。わかってるわ、ルル。シャーリーとナナちゃんには秘密にしておくから」

「それじゃミレイさん。理事長によろしくお伝えください。私は、三人とちょっと話してから帰りますので」

口を挟む間もなく、亮二と会釈を交わし、ミレイは去ってしまった。「本当にわかったのか?」ルルーシュは溜め息をついた。

「最初から仕組んでいたのか?」

三人はクラブハウスへとやって来た。

「まさか。全部たまたまだよ、ルルるん。順番からいえば、アッシュフォードの契約が最初。次に刀花で、最後が君だもん」

「天津は今日本でもっとも勢いのある警備会社だ。いろんな所と契約しているから、こことそれがあってもおかしくないわ」

刀花がルルーシュに説明した。天津は日本の警備業界で現在三位の地位にいる。上二つは、以前から日本にあった会社で、統治前から現在でも続く金融や行政の重要拠点の警備にあたっている。

「いろんな所、という部分にブリタニアも含まれているわけか」

ルルーシュの言葉は正確ではなかった。天津の契約の大半はブリタニアが関連している。上位二社に比べ、ブリタニア関連のシェアで天津は群を抜いている。

理由は経営システムにあった。天津警備会社は、ブリタニアから生まれた経営のシステムを積極的に取り入れている。亮二のCEOという肩書きもそれに由来するものだ。ブリタニア人からすれば「自分たちの優れた手法を取り入れた優良な企業」と映るはずだ。

「ずいぶんと面白い仲間がふえたようだな。ルルーシュ」

緑色の髪をした女がクラブハウスに入ってきた。

「C.C.!なぜここにいる。部屋にいろ」

その言葉に、亮二が素早く反応して立ち上がった。

「え、なに!ルルーシュ、部屋に女子連れ込んでんの?スゲェ、まじスゲェ。昼はブリタニアと戦い、夜はベッドの上で戦いかよ。『戦場が俺の帰る場所だ』かよ。ギアス能力より八倍ぐらいすげぇ」

鼻息荒く語る亮二を目に、C.C.は椅子に腰を降ろし、ぼそりとこう呟いた。

「童貞か」

その瞬間、亮二の顔が急速に引きつった。

「どどどどど、童貞ちゃうわ!!」

刀花にとって亮二は志藤流の人間以外で初めて頼れると思えた男だった。いつも明るくユーモアを忘れない、しかし胸の奥には冷徹なまでの計算と相反する熱い心をもつ。飯田とはタイプが異なるが、それでも等しく好意をもつ相手。それが今は・・・、

「証拠は?証拠はあるんですか。俺が童貞だっていう証拠はあるんですか。何日の何時何分何秒にそうだといえる根拠があるんですか」

涙目になりながら、必死の形相で口を動かしている。初等部の頃、こういう風に女子と喧嘩する男子がいたなぁ、とぼんやり刀花は思い出した。

「なんだ、図星か」

C.C.の言葉に、また亮二は感情を高ぶらせた。

「違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!俺は違うんだぁ」

両手で頭を抑え、テーブルに突っ伏すと、身体が小刻みに揺れ始めた。なんだか怖い。

「あの、坂田さん?」

刀花が心配になって声を掛けた。すると亮二の揺れは収まり、瞬間空気を振るわせる音と共に起き上がった。

「ははーん。わかったぞ。童貞はあんただろ」

刀花は固まった。意味不明だった。

「童貞であることを見破られたくないから、他人を童貞だとけなすことで、自分の注意をそらすってわけだ。ったく。そんな戦術、初歩の初歩なんだよ、この童貞女!」

刀花は外の雲を眺めた。童貞女、そんな日本語はあるのかな?

亮二の口撃はさらに続いていた。

「だいたいな『グラップラー刃牙(ばき)』では、童貞を捨てる、ってのは、初めて人を殺す、ってことなんだよ。でも俺はオタクだ。オタクだから人は殺さないんだよ。たとえ相手が自分を殺そうとしたって自分は相手を殺さない。それが人間ってもんなんだよ!ええ、どうだまいったか」

「なあ、刀花」

ルルーシュだった。目が虚ろだ。

「坂田ってさぁ」

「ええ。多分ね」

それ以上言葉にしなかった。空しすぎる。

「見苦しいから部屋に戻る」

C.C.は椅子から立ち上がると、亮二を見もせずにクラブハウスから出て行った。

亮二はその後姿に何もいえなかった。そして、

「く〜〜〜そ〜〜〜〜!」

テーブルに頭をうずめて、しくしくと泣き始めた。

はたして自分はこれからもこの人と一緒でいいのか、そんな想いを刀花、そして多分ルルーシュも胸に抱いたはずだった。

いつまでもむせび泣く亮二を見ながら、二人の心は不安でいっぱいだった。

〜第5景・完〜

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