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コードIF 忠節のトウカ

志藤流推参

「さようなら。クロヴィス・・・」

「ま、待て!ルルーシュ、待ってくれ」

恐慌するクロヴィスにルルーシュは笑みを作る。これが第一歩になる。そう確信したルルーシュの耳に、背後ですれるような足音が届いた。振り返ると、一人の男が立っていた。奇妙な男だった。

短くまとめられた黒い髪に黒い瞳、イレブンだ。だが、奇妙なのはその格好だった。ハカマ、と呼ばれるズボン、浴衣のような上半身の服。右手には刀が握られていて、左手には木の丸い箱を抱えている。

「・・・サムライ?」

クロヴィスが呟く。そうだ、以前テレビで見たことのある侍と呼ばれる者の姿にそっくりだ。だが、なぜここに。ルルーシュはゆっくりと銃をクロヴィスから、侍の男に向けた。

「お前は何者だ。なぜここにいる?」

男は無言だった。どうやら答える気は無いらしい。ならば。ルルーシュは目に力をこめた。不安の芽は早々に摘み取るに限る。

「ルルーシュ・ヴィ・」

ブリタニア、と言う前に男は動いた。頭を下げ、突進しながら刀を下から振り上げてきた。ルルーシュはとっさに後ずさった。刀はわずかに体をかすめたが、手放した銃は宙空で真っ二つになった。

(ギアスに反応した?!)

男は体勢を戻すと、再びルルーシュを見た。下手な真似をすれば斬る、言葉に出さず代わりに全身で警告していた。

「クロヴィス・ラ・ブリタニア殿ですね」

男がはじめて口を開いた。低く、透き通り、何の感情も含まれていないような声だった。男の問いにクロヴィスはうなずいた。

「い、イレブンだな」

「はい」

クロヴィスは両手で頭を押さえ、椅子の上に丸くなり震えだした。

「お願いだ。殺さないでくれ。お前たちにしたことは謝る。私が悪かった。だから頼む。まだ死にたくない・・・」

消え入りそうに頼むクロヴィスに、男は刀をわずかに下ろした。

「わかりました。貴方を殺しません」

クロヴィスは正面に向き直り、涙が流れそうな瞳で男を見つめた。

「代わりにお願いがあります」

「なんだ!なんでも申してみよ」

「椅子に座りなおし、真っ直ぐ私を見つめてください」

ウンウンと頷くと、クロヴィスは椅子に座りなおし、男を正面に捉えた。

「これでいいか?」

男の腕が素早く動いた。銀色の光が首元を走る。次の瞬間、クロヴィスの頭は地面に転げ落ちた。

「正弥さん。遅いですね」

志藤刀花の言葉に、高津が顔を上げた。

「飯田が心配か?」

いえ、と口を結ぶ刀花に、毬尾が明るく声を上げた。

「大丈夫だ。志藤流は無敵。そうだろ、刀花」

「はい」

横に座っていた鈴火がポケットから何かを取り出した。

「これ。昨日、ミレイ会長にもらったチョコ。制服のポケットにそのまま入っていた。よかったら食べて」

ふぅ、と唇をゆがめて笑った。普段気の弱い幼なじみが、こんな時は不思議と頼もしく見えて可笑しかった。

「ありがとう。鈴火。いただくわ」

刀花が手を伸ばした。その時、毬尾が声を上げた。

「おい!飯田だ。戻ってきたぞ」

「クロヴィス・ラ・ブリタニア。しかと仕留めてまいりました」

毬尾が渡された首桶を開くと、鮮血の匂いが立ち込めた。刀花の背骨を嬉しさが激しく伝った。

「やった!」

鈴火は両手を上げて叫んだ。毬尾に「こらこら」とたしなめられると、恥ずかしそうに頭をさすった。

「始まりましたね。志藤流の、我々の第一歩が」

刀花の言葉に、皆が力強い頷きで返した。

帰りの車中、隣に座った正弥が刀花にだけ聞こえる声で呟いた。

「クロヴィスの部屋に、もう一人客人がいた」

客人、刺客という意味だと刀花にはわかった。

「年は刀花と同じぐらいだと思う。わからないが、得体の知れない力を感じた。名前はたしか、ルルーシュと自分で名乗っていた」

ルルーシュ・・・。刀花の瞳孔が大きく開いた。

〜第1景・完〜

飯田 正弥

24歳。志藤流の師範。無口で無表情だが、剣技においては門弟随一の腕前を誇り、戦闘における天性のセンスも持ち合わせている。

毬尾 彦一

26歳。志藤流の師範代。明るくムードメーカ的な存在。剣技は上だが、他では疎い飯田を裏から支え、実質的に志藤流を動かしている。

高津 孝太郎

26歳。志藤流の門弟。剣技より頭を使ったことに長けている。他の門弟に比べ、どこか冷めた言動が見られる。

近藤 鈴火

17歳。志藤流の門弟。生徒会所属。刀花と同時期から志藤流を学んでいるが、実力を大きく開けられていて、それがそのまま二人の力関係となっている。

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