Fanfic

異界の者に想いをはせて

「はやく羽根を渡せ。」

蓮王の首に刀を突きつけたまま、羽根が使用されている塙明城の全ての機械が集まっているメインコンピュータールームの者に言う。

蓁蓮国には魔法の力が使える者がいず、他国から魔法的な力での干渉を恐れた。

魔法から国を守るため、羽根の力を利用して国の周りに防護壁をつくっていた。

羽根は全てのコンピュータに魔力を供給している。その全てのシステムを遮断させ、羽根を取り除く。

「ほらよ。」

小狼は羽根を受け取ると。それを大事そうに抱きしめ、なくさないように羽根を懐にしまう。

「・・・さて。」

黒鋼は蓮王に向き合い、首に突きつけていた刀を持ち上げる。

「ま、まて!!助けてくれ。羽根は渡しただろう!!」

蓮王は全身から冷や汗をながしながらに懇願(こんがん)する。

「悪いな・・命令はお前を『亡き者に』だ。忍びにとって主の命は絶対だ。」

そう言うと高々と刀を振り上げた。

「主の命は絶対?良く言うわ・・うら・・」

「黙れ!!」

蓮王が全てを言い終わるまえに黒鋼は刀を振り下げた。

「お疲れ様です、頭領。」

国境では、瑚泉達と帰りの式神が待機していた。

「どうしたんですか頭領?不機嫌そうな顔をして。」

「黒たんはいっつも不機嫌そうな顔じゃん。」

ファイはからかうように言ったあと、いつものように鋭いつっこみがくるとおもったが、それがなかったので、すこしつまらなく感じた。

〈黒りんなんでか、蓮王と話した後から機嫌が悪い、という何かに怒ってるというか、ず〜と眉間に皺をよせてるんだよね〉と。ファイは密かに瑚泉に耳打ちする。

瑚泉は何かに気がついたように目を見開くと、そのまま黙ってしまった。

「?」

そんな瑚泉の態度を疑問に思ったが、あまりにも思い詰めたようね顔をしているので、ファイはそのままそっとしておく事にした。

「黒鋼さんといい、瑚泉さんといい、一体どうしたんでしょうね?」

小狼も不思議に思いファイに話しかけるが、「わからない」という返事しか返ってこない。

「お帰りなさい、黒鋼。皆さん。」

城の入り口には黒鋼達の無事の帰還を喜ぶ知世達の姿があった。

「お帰りなさい、小狼君!」

サクラも蔓延の笑みで小狼たちの帰りをよろこんだ。

「ただいま戻りました、サクラ姫。・・・これを。」

小狼は懐から羽根を取り出すとサクラに渡す・・・というより、羽根はサクラの中に取り込まれた。

サクラの頭の中に沢山の記憶がよみがえる。当然そこに小狼の記憶の思い出はないのだが・・・

「うん。沢山昔の事を思い出せた・・・ありがとう。小狼君。」

小狼は嬉しそうに微笑むが、少し・・・悲しそうな笑顔だった。

「首尾はどうでしたか?」

「夕珀を捕らえろ。あいつが蓁蓮に情報を流していた。それと、おまえの式神の邪魔をしていたものも取り除いた。まぁ蓮王は死んだし、しばらく刺客は来ないだろうから式神を送る用もないだろうが・・・」

「夕珀・・そうですか。彼が・」

知世はとても辛そうな顔をする。官吏の中に自分の命を取ろうとしている裏切り者がいるのはとても辛かった。

「蘇魔、夕珀を・・・・皆様本当にお疲れ様でした。今夜はゆっくりとお休み下さいませ。」

蘇魔に夕珀の捕縛を命じると、黒鋼達に向き直り、少し辛そうな笑顔で言った。

「瑚泉・・・話がある。」

皆が部屋へ帰っていく中、黒鋼は瑚泉を呼び止め、自分の部屋に来るように言った。

「何かようですか?」

「部屋で話す・・・いいから来い。」

何が話されるか分かっているのだろうか・・・瑚泉はそれ以上何も言わずに、顔を伏せたまま黒鋼の後を歩いた。

〜黒龍の間〜

「何の話だか分かるか?」

黒鋼の声音は少し怒りを含んでいるようだ。

「・・・・はい。」

瑚泉がそう答えると黒鋼は腰に差していた刀を抜き、瑚泉の顔の前に突きつけた。

「まさかてめぇが情報を蓁蓮に流していたとはな。」

鋭い眼光で瑚泉をにらみつける。刀を突きつけられたというのに、瑚泉は顔色一つ変えずに、黒鋼の目を真っ直ぐに見返す。

「忍が主君の御身を危険にさらすか・・・知世姫もまさか忍のなかに裏切り者がいるとは思わなかっただろうな!」

黒鋼は低い声音で吐き捨てる。本当に怒っている・・そしてすこし辛そうだ。

「そうですね・・・知世様は俺の事を疑ってなかった。だから、情報を得るのも楽でしたよ。」

瑚泉の顔には笑みもなく、無表情だった。これが本当に黒鋼の知っている瑚泉なのだろうか?瑚泉は若いながらに忍としての誇りを持っており、知世のことをとても大事にしていた・・・それなのに、瑚泉は知世を裏切ったのだ。

「貴様!」

黒鋼は手に力を込める、殺す気はまだない。だが、知世を・・・・自分たちの主をそのように言われては、何もせずにはいられない。

刀は瑚泉の肩をかすめる。傷口からは血が流れ、床を汚す。

瑚泉は一瞬顔をしかめたが、また無表情で黒鋼を見る。

「裏切り者には死を・・・忍の心得です。昔の貴方なら俺を殺すことを躊躇わなかったのに・・・貴方は旅に出て弱くなった。」

「黙れ・・・忍びの心得とは良く言ったものだな。裏切り者には死を・・・その前にはなんと教えられた?いかなる時も主君に逆らうべからず・・・裏切るなと教えられただろ!?」

瑚泉は黒鋼を見るのをやめ顔を伏せる、拳を堅く握りしめ、瞳に涙をためて・・・

「俺だって・・・別に知世姫を死なせたいわけじゃない。姫の御身が危険にされされるのは分かってる、だが死なせるつもりはなかった!!」

語尾はだんだん強くなり、涙は遠慮なくその黒の瞳から流れ落ちる。

「どういうことだ?じゃあなんで敵に情報を流した!?」

瑚泉は口を閉ざした。言いたくない・・・そう言うように。

黒鋼はそんな瑚泉の態度を見て、ある事を思い出した。瑚泉が姫を裏切る理由がないわけでもない。

「・・・憐抄か?」

瑚泉は小さくうなずく。

ほとんど知られていないが、実は瑚泉と憐抄は兄弟だ。

幼少のころ、敵国の国境近くにあった瑚泉達の村は戦いに巻き込まれ焼かれた。

村の生き残りであった2人は、先代の頭領であった黒鋼の父親に保護された。

白鷺城にきた2人は本人達の希望もあって城の忍として育てられた。

2人とも強い忍に育った。しかし、憐抄は蓁蓮の使者として送られ、死んだ。

もしかしたら、その命を下した知世を恨んでいるかもしれない。

「馬鹿にするな!憐抄が死んで知世姫を恨んでるんじゃない。・・・・蓮王が、憐抄は生きてる、情報を流せば憐抄を返してくれるって・・・・」

「馬鹿かお前は!んなもん嘘に決まってるだろう!」

「わかってる、わかってるけど・・・もし生きてるんなら帰って来て欲しかったから。でも、死んだんだな・・・」

瑚泉はあきらめたように肩を落とした。

「・・・はぁ。気の毒だが忘れるな、お前は姫の忍だ。私情で姫を危険にさらした、頭領としてお前を許すわけにはいかねぇんだ。」

黒鋼は再び刀を瑚泉に向ける。

「はい。姫を裏切ったときから覚悟は出来てます。」

罰を受けますというように、瞳を閉じ顔を上げる。黒鋼は刀を引き、瑚泉を貫くため力を込める。

「おやめなさい!」

制止をかける声の主を黒鋼は確かめる。

「知世・・・」

「私の許可なく何をしているのですか?」

知世には珍しく本当に怒っている。黒鋼を睨んだまま2人に近づく。

「知世、こいつに近づくな。」

黒鋼は知世に制止をかけ、自分の後ろに下がらせる。

「一体何があったんですの?」

黒鋼の行為を止めたのはいいが、知世は今の状況を理解していない。

何故黒鋼が瑚泉を殺そうとしていたのか、何故瑚泉に近づいてはいけないのか。

「夕珀ともう一人・・・こいつが蓁蓮に情報を流していた。兵が出払っている時に刺客が来ただろ?あれもこいつの仕業だ。そして、俺らが蓁蓮に忍び込んだ時に敵が襲ってきたのもな!」

「そんな・・・」

知世は驚いたように瑚泉を見る。瑚泉は否定も肯定もせず顔を伏せる。

「だからといって何故瑚泉を殺そうとしたのです?」

「裏切り者には死を。忍の掟だ。」

知世は辛そうに黒鋼と瑚泉を見る。

「私は許しません。瑚泉を殺すだなんて。」

黒鋼の刀を握っている腕を捕まり、刀をしまえと命じるが黒鋼は従おうとはしない。

「私の命ですよ。止めなさい黒鋼!」

「悪いが従えない。危険な芽は早めにつまねぇとな。」

「黒鋼・・・」

そうは言われたものの知世は納得せず、黒鋼の手を離そうとはしない。

「いいんだ姫様。俺が貴方を裏切ったのは事実だ。こうなることも分かってた。」

薄く微笑みまるで知世を安心させるようにうなずく。

「いいえ、なりません。・・・実は私、気づいて・・・いえ、感づいておりましたの。」

知世は黒鋼の手から刀を取ると、それを鞘にしまった。今度は黒鋼も抵抗をしようとはしない。

「感づいてたって、じゃあなんで瑚泉を側においたんだ!」

「蓮王から憐抄の事でなにか脅しをかけられてるであろうことは安易に想像できましたわ。・・・憐抄に帰ってきて欲しいのは私も同じです。」

知世は黒鋼と瑚泉ににこりと優しく微笑みかけた。

「もう一度言いますわ。瑚泉を殺すことは許しません。」

黒鋼は知世が意外と頑固なことを知っている。これ以上は何を言っても無駄だろう・・・

瑚泉も情報は流していたものの、知世の命は守っていたし、忠誠は今も知世にあるようだ。

「・・・わかった。瑚泉にはしばらくの間見張りをつける。もし次何かあったら、誰の命であっても許さんからな。」

「あ、ありがとうございます。頭領、姫様。」

瑚泉は深々と頭を垂れた。

▲Page Top(T)

←Back(B)

© 2003-2006 sarasa