青春の影

俺を勇気づけてくれたのは、何時だって君だった。
でも俺は、君の心にどうすれば近づけるのかわからなかった。諦めてしまった方が楽だと、何度も何度も思った。何しろ、恋敵は俺の親友で幼馴染だったから。
君が、俺を男として見れくれないことは。正直、悲しかった。力いっぱい否定されたときは、何だかもう、笑うしかなかったような気がする。あの頃、君が欲しかったのは「特別な相手」じゃなくて、「家族」だったのに。
そんなことを気にかける余裕もなかったんだ。
あの頃は、辛いこともあったけど素晴らしい日々だった。一日がとても長くて、充実してたと思う。振り返ってみれば、あっという間に感じるんだけど。


君が恋をしたのは、俺じゃなかったね。
あいつは、俺の自慢の幼馴染だから。悔しかったけれど、仕方ないと思った。あいつを選んだ君は、見る目があるとも思ったよ。俺は、いつだって臆病で…君に告げることさえ、できなかったから。
君が好きだ、と。
叫べたら、どんなに良かっただろう。
俺は叫べなかった。でも、あいつは叫んだんだ。その声に、君は振り向いた。完敗だった。恋の喜びを知って、君はとても綺麗になった。幸せになってほしいと、心から願った。
それから、俺は自分の夢を追うことにした。
騎士として生きるために。


幸せになって欲しいと願ったのに。
再会した君は、どうして幸せに見えなかったんだろう。
君の隣に、あいつはいなかった。
君は、ただ涙を風にあずけていた。
愛の厳しさに怯むことなく。
少女だった君は、女になっていた。


君の家に続く道を、足元に確かめる。この道が、君の心にも続いていて欲しいと願い、今、君を迎えにゆこう。俺たちは「特別な相手」にも「家族」にも、なれなかったけれど。これからも、なれない訳じゃないはずだから。
迷っても、何度でもやり直そう。今の俺は、ただの男にすぎない。君が、ただの女であるように。
君を幸せにする――そう誓いを立てよう…自分自身に。


※「青春の影」SONG BY チューリップのイメージでした。