秘密

私には、秘密があります。
誰にも話すつもりのない秘密です。
きっと、誰よりも愛する妻にさえ告げないと思います。ああ、でも察しのよい彼女は私の秘密に気がついているかもしれません。もっとも知られたからといって、私に疚しいことは何一つないのですが。
何故に秘密にしているかというと、気恥ずかしいからです。
それに、うっかり誤解しそうな人もいることですし。秘すれば花とは、よく言ったものです。ぐふふ。大体、あの人は他人の言うことを真面目に聞きやしないんですから…と。話がずれますね。
私には、妻の次に大切にしたい女性がいるのです。正直にいうと、妻のことを思い出すまでは、彼女が一番、大切でした。別に変な意味じゃないですよ?そのまんまの意味です。


初めてあったとき、彼女は14才で、私はだめ男でした。もっとも彼女は試験におちて、私の試験は満点だったのですが。それは知識の差、ということで仕方のないことでしょう。あのとき、私は満点をとってなおラックの試験に落ちたなら、冒険者の道を諦めるつもりでした。努力しても、運だけはどうしようもありません。案の上、私は、まただめ男でした。でも、諦めるのは止めました。居合わせた彼女が、私のために怒ってくれたからです。三ヶ月間、誰も私の運命に憤慨してくれませんでした。私自身さえも。でも、彼女は怒ってくれたのです。
そのとき、どれほど私が嬉しかったことか!決して表には出さなかったから、誰も気づかなかったでしょうが。
無意識だったにせよ、彼女は私をどん底から助けだしてくれたのです。それをきっかけに、私は彼女につきそうことにしました。
どうみても彼女は子供で、さらに子供の保護者で、側にいるのは頼りになりそうもない優男とお調子者。誰か一人くらい、知性派が必要だと感じたのです。優男とお調子者は、いずれ彼女を置いていくと思ってましたしね。


でも結局のところ、まだ私たちは一緒にいます。凸凹パーティーを組んで、それなりに頑張っています。私の冴え渡る知性が貢献していることは、いうまでもありません。
彼女も成長しましたが、私からみればまだまだ子供です。人と人とのつながりが、離れてしまえば終わってしまうと考えてるふしがありますしね。離れても、変わらないものもあるのです。それが、家族であるなら尚のこと。私と、妻のように。夫婦もれっきとした家族ですから。
いつか、彼女が理解してくれればいいと思います。
私は彼女たちを、自分の家族だと思ってます。そう思ってるから、幸せを願うし、離れても大丈夫だと考えてます。もっとも今は、離れる気はさらさらありませんが。
家族を無くしてしまった彼女に、もう怯えなくていいと伝えられたらいいのですが。それは、きっと私の役目ではないでしょう。
どちらでもいいから彼女を幸せにしてくれることを、願ってやみません。もっと甲斐性のある第三者でも、ぜんぜん構わないのですが。彼女が幸せでいてくれるなら。
私がこんなことを思ってるのは、当然、秘密なのです。