ファントム・キングダムネタ─背徳者サロメがポップだったら

*元・勇者シードルと背徳者サロメの関係をダイポプにしてみると*
大魔道士ポップ。勇者のパーティの一人だったにもかかわらず、冥府魔道に堕ちた背徳者。
絶望していた魂を気まぐれに魔王ゼタに拾われ、弟子となったにもかかわらず袂をわかったと言われている。今では、己の魔界を統べる魔王の一人となっていた。
かつての師匠の危機に、ようやく重い腰をあげたらしくついに姿を現していた。
「ようやく…来たんだ」
ゼタの側で、竜魔王と称されるダイが口元をゆがめて嗤った。ダイもまた、冥府魔道に堕ちたる者だった。かつては竜の騎士と謳われ、人間界を守った勇者だったはずなのに。何の因果か、魔道に迷い込み…今では死者を統べる冥界の主となっていた。
「久しぶりだな、ゼタ。また、すげー姿になっちまって」
軽口を叩きながら現れたポップは緑色の服をまとった少年だった。
「我を笑いにきたのか」
「笑ってほしいなら、笑うけど」
不機嫌なゼタの声をものともせず、ポップはゼタ本の側に歩み寄る。そのとき、不意に引きつった笑い声が辺りに広がった。
「きっと現れると思ってたよ、ポップ」
ダイの声には、計り知れないほどの憎しみが込められていた。
「ご苦労なことだな、ダイ。わざわざ俺を待ってたのか?」
「お前が、ゼタの窮地を見過ごすはずはないからな。そうだろう?」
低くわらいながら、ダイはしたたるような悪意を込めて言葉を続けていた。
「俺は、お前のことなら何でも知ってるよ。お前だけを、追い続けてきたんだから」
一触即発状態でにらみあう二人に、プラムがわってはいる。
「何してるのよ、あんたたち!」
「──興がそがれるな。ポップとの決着は、誰にも邪魔されたくない。俺はひくよ…またね、ポップ」
「ごめんだね」


「なんで、あんたはポップを憎むのよ?」
いらだたしげにプラムが問えば、ダイはあっさりと答えていた。
「俺は、ポップに一度殺されたんだよ。俺がまだ勇者だったころ、数人の仲間と一緒に旅をしていた。その中に、ポップもいたんだ。俺とポップは親友だった──でも、俺はポップが好きだったんだ」
想像もしていなかった告白に、プラムが驚いた顔をする。本であるゼタも同じように。ダイはさらに続けた。
「だから、俺はポップを力ずくで自分のものにした。でもポップは俺を受け入れず──俺を殺したんだ。勇者だった俺をね」
「……それって、自業自得じゃないの?」
「まったくだ」
プラムとゼタは同じ感想をもらすが、ダイには聞こえていないに違いなかった。
今明かされる勇者パーティの痴情のもつれ。それが二人の魔王を生みだした…そう思うと、純粋に力だけを求めて魔王になったプラムとゼタは遠い目をするしかないのだった。