パラレルメイドネタ2

友達なんかじゃないって、気づいたのは何時だったろうか。
顔を洗ってた俺に、タオルをかぶせてくれたとき?
噴水ではしゃいだとき、スカートのすそから覗く白いふくらはぎを見たとき?
馬小屋の二階の干し草の山にシーツを敷いて、二人してうたたねをしたとき?
いくら考えても、わからない。ひょっとしたら、初めてあったときから、ポップは俺の友達じゃなかったのかもしれない。俺は、最初からポップが欲しかったのかもしれない───自分で、気づいてなかっただけで。
ポップは、馬丁見習いの俺を笑ったりしなかった。獣臭いとか、学がないとか、そんなコトは些細なことだと笑ってくれた。最初から、俺、という個人を認めてくれたのだ。馬丁見習いのダイでも…竜騎公爵の一人息子ディーノでもなく。
ポップは、父さんの城の招待客付きの小間使いだった。大抵の客人の小間使いは、鼻持ちならない。城のメイドや侍従に、自分たちの仕事を平気で押しつけたりする。そういうワケで大抵の客人付きのメイドや小間使いは、城の者達から敬遠されていた。でも、ポップは違ったんだ。
ポップは、働きものだったのだ。「うちの奥方さまは、手がかからないんだ」って、軽く笑ってたけど。ポップは、いつだって奥方さまの身のまわりに気をつかって、ドレスの支度や洗濯物とか繕い物とか、きっちりと自分の手で仕上げていた。城のものたちに仕事を頼むときも、礼儀を忘れなかった。だから城のものたちは皆、ポップを気に入っていた。またポップの高評価は、仕える奥方さまやお嬢様の評価UPにもなっていた。だから、父さんもランカークス男爵夫人や、令嬢を丁寧に扱うようになったんだ。話してみると意外にも趣味があって会話が弾んで楽しいって、父さんが言ったのは驚いたけど。
俺は、母さんのことを覚えていない。物心ついたときには、田舎のデルムリン牧場に預けられてたから。そこで、ブラス爺ちゃんに育てられた。馬が大好きなのは、あの頃のおかげだと思う。それが理由ってわけでもないけど、父さんが再婚したいなら、反対する理由はない。でも、それってポップに俺の正体がばれちゃうって…ことなのかな?
ポップは、俺をみてくれてる。それは、わかってる。でも、ポップは貴族があんまり好きじゃないみたいなんだ。ラーハルトにリネン室に引きずりこまれたとき、そう言ってラーハルトを蹴り飛ばしたんだって。俺が釘をさしたとき、ラーハルト本人が教えてくれたから間違いない。
…ポップは、貴族で苦労したことがあるのかもしれない。ポップみたいに可愛い小間使いが、無垢でいられるのって難しいはずなんだ。しみじみとメイド頭が教えてくれたから。もしも、ポップが誰かに何かされたら。俺は、そいつを許さないだろう。
俺の夢は、親友のゴメちゃん…ホントはゴールデンメタル号っていうG1連勝中の競走馬だけど…を中心にした牧場をつくることなんだ。
ポップに、漠然とそういう話をしたら「すごい!」って喜んでくれた。俺が、きちんと話したらポップは俺の夢の実現に力をかしてくれるだろうか?身分差なんて、俺はどうでもいい。ポップが気にしても、俺は気にしないし。頭の固い父さんが反対したら、駆け落ちでもなんでもしてもかまわないんだ。
でも、ポップは…俺をどう思ってるんだろう?