平成15年 北海道行幸啓

 

天皇皇后両陛下は、7月1日より5日まで北海道に行幸啓を賜わりました。

両陛下の行幸啓は、

平成元年  第44回国民体育大会御臨席 (稚内市、豊富町、札幌市)

平成5年  北海道南西沖地震に伴う被災地お見舞い (奥尻町)

平成11年 北海道南西沖地震災害復興状況及び地方事情御視察 (奥尻町)

以来、今回で4度目であります。

今回は、有珠山噴火災害復興状況及び地方事情御視察並びに

第23回国際測地学・地球物理学連合2003年総会歓迎式御臨席のため御来道となりました。

 

「行幸」とは、天皇陛下がお出かけになることで、「行啓」とは、太皇太后・皇太后・皇后陛下、皇太子殿下・同妃殿下、皇太孫殿下がお出かけになること。
 今回は両陛下のお出ましなので「行幸啓」という。

 

第1日目 7月1日(火)  東京→千歳市→虻田町

天皇皇后両陛下は、午前9時皇居を御出門、羽田空港より全日空特別機で

午前11時新千歳空港に御到着。高橋はるみ北海道知事をはじめ、

空港ターミナルビルに溢れんばかりの道民の奉迎をお受けになられました。

 

 

両陛下は、ターミナルアネックスビルにて高橋知事より道勢概要を御聴取された後、

御昼食をおとりになり、午後1時20分虻田町へ向かわれました。

 

 

 

午後3時36分、虻田町役場御到着。両陛下は大勢の町民から奉迎をお受けになられました。
虻田町役場では、岡田弘北海道大学教授の御説明により有珠山噴火記録映像を御覧のあと、北海道及び、
伊達市虻田町、壮瞥町の災害復興状況を御聴取になられました。また、災害復興に尽力した消防団員、
自治会関係者が拝謁し、両陛下からねぎらいの御言葉を賜わりました。

午後6時、洞爺湖温泉地区の災害遺構を御視察。虻田町長より、熱泥流により
焼けただれた山肌や、災害遺構として保存されている町営浴場を御覧になられました。
午後6時20分、桜ヶ丘保育所を御訪問。同保育所は、噴火で大きな被害を受けた
泉北地区、洞爺湖温泉地区の住民に対し建設された、町営のぞみ団地の一角に
移転改築されている。
両陛下は、子供たちに優しくお声をかけられたほか、お迎えに集まった町民に親しく
お声をおかけになり、励まされました。
天皇陛下から「大変でしたでしょう」とお声をかけていただき、感極まって涙ぐむ姿も
見られました。
午後7時過ぎ、お別れを惜しむ町民らに、両陛下はお手を振られながら保育所を
あとにされ、お泊所のホテル万世閣へ向かわれました。                         (写真:BNNより転載)

 

第2日目 7月2日(水)  虻田町→札幌市

北海道での第一夜を洞爺湖で過ごされた両陛下は、
ご朝食をおとりになり、有珠山西山火口を御遠望の後、
午前10時御出立。
両陛下は従業員にねぎらいのお言葉をかけられ、万世閣より
道都札幌へと向かわれました。
お車の列は道央自動車道を経由して札幌入りし、午後1時過ぎ
北海道知事公館へ到着、山本邦彦副知事、上田文雄札幌市長、
武市憲一札幌市議会議長のお出迎えをお受けになられました。
御昼食のあと、札幌市で開催されている「第23回国際測地学・
地球物理学連合(IUGG)総会」の地球科学展示会場(ホテルロイトン札幌)にご来場になり、
海洋化学技術センターなど五ヶ所の展示ブースを御視察されました。
右上の写真の手前の船は、昨年、紀宮殿下が進水式に御臨席された「ちきゅう号」の模型。

両陛下は御視察後、午後4時過ぎ、札幌でのお泊所になる札幌パークホテルにお入りになりました。
札幌パークホテルは皇族方のお泊りが多く、先帝昭和天皇も昭和43年の行幸啓の際お泊りになった由緒あるホテル
である。
ホテル前には両陛下の御到着を待つ数百人の市民。両陛下がお車から降りられ、お手を振られると大歓声が響き、
日の丸の小旗が鮮やかに打ち振られたのでした。札幌への行幸啓は15年ぶりで市民の歓迎も最高潮に達しました。

ホテルで執務、休憩をおとりになった両陛下は、「第23回国際測地学・地球物理学連合(IUGG)総会歓迎式典」御臨席
のため午後6時40分札幌コンペンションセンターへ御到着。IUGGは地震や火山など地球科学を研究する各学会を
網羅する国際学術団体。
歓迎式典のあと歓迎レセプションに御臨席された両陛下は、各国の出席者と親しく御歓談されました。
(写真:BNNより転載)

式典における天皇陛下のお言葉。

地球環境を良好な状態に保ち、人々の生活の安全を確保するために地球科学が果たす役割は、

ますます重要なものとなってきております。総会が、参加者の間の国境を越えた研究協力のさらな

る進展をもたらし、地球科学の進歩に貢献する実り多いものとなることを願います。

 

第3日 7月3日(木) 札幌市→美唄市→滝川市→芦別市→富良野市

午前10時、札幌パークホテルを御出立。晴れ渡る北海道の夏空のなか両陛下のお車は美唄市へと向かいました。
道央自動車道美唄ICから道道美唄富良野線へお入りになったお車は市街地より3kmほど東にある落合町栄地区へ。
市内外から沿道に詰め掛けた5000人余りの人々に、両陛下はお手をふりおこたえになられました。
普段は人影もまばらな道も、この日ばかりは行幸啓を祝う人々の熱気であふれていました。

    

午前11時すぎ、芸術文化施設「アルテピアッツア美唄」に御到着。1時間余りにわたり施設を御視察されました。
同施設は、美唄市出身の世界的彫刻家安田侃氏の作品を常設展示しており、昭和56年に閉校した旧栄小学校の
体育館をアートスペースに、校舎を幼稚園とギャラリーに使用している。
安田氏本人が御案内役となり、両陛下は屋内外の彫刻をゆっくりとした足取りで御鑑賞されていました。
また、両陛下は栄幼稚園の園児が水遊びをしているところにお近づきになられ、「遊ぼう」とはしゃぐ園児らに笑顔で
お応えになっていました。
このほか、300人余りの人々が施設内で両陛下を奉迎しました。           (写真:美唄市より転載)

     

次の文は、同施設の職員さんが記した当日の模様です。                    

「本日は楽しみにして参りました」というお言葉に始まり、「本当に良いものを創られましたね。これからもずっと、この場所を守ってくださいね。」というお言葉を残して1時間余りをアルテピアッツァで過ごされた両陛下のお姿に、何か言葉では言い尽くせない感動を覚えた
貴重な時間でした。
 普段は交通量の少ない沿道にも大勢の市民が詰め掛けて、日の丸の小旗を手に「その時」を待っていました。
アルテピアッツァではおよそ300人が奉送迎の列を成し、いよいよ緊張が高まるなか、栄幼稚園のこどもたちだけはいつもと変わらない様子で、先生から教えてもらった「日本のおとうさんと、おかあさん」の到着を待っています。
 両陛下がお着きになった途端、緊張と高揚が入り混じった不思議な空気が波のように押し寄せて300人の心を呑みこみ、お二人のにこやかな表情、やさしく掛けてくださるお言葉にその場に居合わせた人々が釘付けになり、隣に立つ人の鼓動までが聞こえてきそうな、
どこかそわそわした静けさに包まれました。
 栄小学校の歴史はそのまま美唄盛衰の歴史でもあります。
 彫刻についてだけではなく、炭鉱が栄えていた当時の賑やかだった街の様子にも熱心に耳を傾けてくださり、ここを訪れるみなさんがそうするように白く丸い彫刻をやさしく慈しむように撫で、池と流路で水しぶきをあげて遊ぶ園児に、時には膝を折ってお言葉をかけていらっしゃるお姿が印象的でした。
初夏の陽射しに照らされた彫刻と緑。風のささやき、キラキラと輝く水しぶき、こどもたちの歓声。山の向こうから遠く聞こえてくる蝉の声。
鳥のさえずり。その風景の中に溶け込み、もっとも輝いていた両陛下の微笑み。そのどれもがどこか夢の中での出来事のようでもあり、
けれど今日という歴史的瞬間に立ち会った人々の心に深く、美しく刻まれたに違いありません。

                                                                                      (アルテピアツア便り、より転載)

午後12時10分、アルテピアッツァ美唄をあとにされた両陛下のお車は、再び道央自動車道に入り滝川市へと
向かわれました。

午後12時50分、滝川市役所に御到着。市庁舎前には、近隣及び市民数百人が両陛下を奉迎いたしました。
滝川市役所では御昼食をおとりになり、1時間40分ほど御滞在になられました。
滝川では、市民が「天皇皇后両陛下をお迎えする市民実行委員会」を設立し日の丸の小旗を作成するなど、
市民挙げての奉迎となりました。
午後2時30分、お別れを惜しむ多くの市民に親しく手を振られた両陛下は、途中「芦別市青年センター」で
御休憩をとられたあと富良野市へと向かわれました。(芦別市においても市民挙げての奉迎がなされています)

  ※滝川市の「広報たきかわ」で当日の模様が伝えられていますので紹介します。   リンク

富良野市街に入り沿道を埋め尽くした市民の奉迎のなか午後7時過ぎ、両陛下はお泊り所である
新富良野プリンスホテルに御到着されました。
この日富良野では両陛下のお出ましは無かったのですが、近隣市町村からは両陛下を真心で奉迎しようという
人々がホテル近隣の公園に参集しました。ホテルからは遠方ですが両陛下は祝提灯の灯火を御覧になったことと
思います。

        

 

第4日 7月4日(金) 富良野市→中富良野町→美瑛町→旭川市   

午前7時、早朝のさわやかな北の夏空のなか両陛下は富良野市の隣町の中富良野町へと向かわれました。
御訪問先は、ラベンダー畑で全国的に有名な「ファーム冨田」。

 

つづく

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