反転アンプ考

2008年3月K氏がオリジナルDACを発表。どの方式が選択されるか興味津々だったが、マルチレベルΔΣ型複合補完DAC PCM1794 TI(バー・ブラウン・ブランド)が採用された。 PCM1794 は差動電流出力DACなので、IVCDSC 等に予想通り K式DCアンプが多用されている。 今更『反転アンプ』や『差動アンプ』の考察等は無意味と思われるが、ダイナミックレンジ132dB という途方も無い領域に踏み出す前に、少々基礎勉強をしておく事とする。 モタモタとアップデートしている間に、『無線と実験』誌に、『自作派のためのオペアンプの正しい理解と使い方(著者:河合 一 氏)』の連載が始まり、本『反転アンプ考』でのオペアンプに関する記述は既に必要ないと思われるが、そちらも参考に勉強を続ける事にする。
なお、ここから先はKEWの妖しい解説が続々と展開される恐れがあり、その是非の判断は全て閲覧者の見識にかかっている事をご了承下さい。以下の文献を参考にしました。

参考にしている各誌には著者の意図に反し、編集時の『回路図のミスプリ』、『数値の桁、単位の間違い』等がある事に注意。
最新オーディオ用オペアンプ活用法 徳久誠一氏 無線と実験 MJ 1997 / 4
OPアンプの周波数特性に対する誤解 稲葉 保 氏 トランジスタ技術 1983 / 2
オペアンプのノイズ特性の理解と回路動作(1) 河合 一 氏 無線と実験 MJ 2010 / 2
テキサス・インスツルメンツのオペアンプ OPA604(4)       〃 無線と実験 MJ 2010 / 5
高速オペアンプ OPA627(7)       〃 無線と実験 MJ 2010 / 8
現代アンプ技術展望 vol-5 パイオニアの無帰還アンプ技術SLC 柴崎 功 氏 無線と実験 MJ 1989 / 5

・(非)反転アンプの閉ループ利得 ・OPアンプのデータ例と解説? ・開ループ利得と位相
・IVCのノイズゲイン ・ノイズ計算 ・DSC考 ・BGA &CM ・Current DSC
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ANF

では反転アンプと、非反転アンプのクローズドループゲイン(閉ループ利得)を得る方法として、K氏風?に示したつもりであるが、世間一般では、もっと簡略な方法が主流のようである。
にオペアンプ(OPerational amplifier 以下、OPアンプ)での反転アンプ解説例を抜粋。

反転アンプ

『OPアンプは入力インピーダンスが非常に大きい為、RS に流れ込んだ IS は、そのまま RF に流れ込む。
よって、ISIF 。→ IS=(VI − VN )/RS=(VN − VO )/RF =IF 。・・・・式壱
一方、非反転入力と反転入力の差分をオープンループゲイン(開ループ利得 A )倍したものが出力VO となり、
VOA×(VP − VN )。 → VN =VP − (VO /A )。A は非常に大きいので、VN =VP 。
VP =0 より、VN =VP =0 。 式壱に代入すると→ VI /RS =− (VO /RF )。 → VO /VI =− (RF /RS )。』

VN =VP と仮想する事を、イマジナリショート(ヴァーチャルショート)等と呼ぶが、確かに簡略計算するには有用な考え方だ。OPアンプのオープンループゲインが大きい程、誤差も少なくなる。

この手の解説では、RS から RF に流れ込んだ IS のその後の記述はないが、その答えは単純だ。
ある瞬間、上図の矢印の方向に電流が流れた場合、IS はOPアンプが吸収するしかない。更にOPアンプは次段の負荷 RL に応じた電流の吸収も請け負う事になる。 一方、矢印が逆方向になる瞬間では、OPアンプが(RF 及び、RL 双方に)所定の電流を吐き出す必要がある。 表現を変えると、『VN =VP =0 (イマジナリアース)達成の為、OPアンプが頑張って電流を供給している。』という事になる。

反転アンプの応用編である IVCでは電流源が反転入力端子に直接接続されているが、電流源の出力インピーダンスが反転アンプのRS に相当し、基本的には反転アンプと変わらない。しかし、S/N(Signal to Noise ratio)を上げる為に最新DACでは、高出力電流、高出力インピーダンスが当たり前となっている。 RF の値を少量にできるのは、後述の抵抗の熱雑音(Thermal Noise,Johnson Noize )対策には有用だが、OPアンプ自体の電流供給能力が以前より高いレベルで求められている。

OPアンプの電流供給(耐負荷抵抗限界)能力については、各データシートから読み取るのだが(耐負荷容量も含め)、データシートのグラフから推測となる場合が多く、実態の把握は結構難しい。
取り合えず、新旧OPアンプの基本となるデータを、汎用から高級品まで適当に並べてみた。

・電圧帰還型オペアンプのデータ例
Operational Amplifier 4558
BIP (2)
5532
BIP (2)
AD797
BIP (1)
LF356
FET (1)
OPA2604
FET (2)
OPA627BP
FET (1)
LH0032
FET (1)
Input offset Voltage(VOS ) 0.5mV  0.5mV  0.025mV  3mV  1mV  0.1mV  2mV 
Input Bias Current (IB ) 25nA  200nA  250nA  30pA  100pA  1pA  10pA 
Input Impedance (RI ) 5MΩ 0.3MΩ 7.5kΩ 1TΩ 1TΩ 10TΩ 1TΩ
Open-Loop Gain (AV ) 100dB  100dB  146dB  106dB  100dB  120dB  70dB 
Common-Mode Rejection 90dB  100dB  130dB  100dB  100dB  116dB  60dB 
Power Supply Rejection 90dB  100dB  130dB  100dB  100dB  120dB  60dB 
Input Voltage Noise (en ) - 5 0.9 12 11 5.2 -
Gain Band Width Product 3MHz 10MHz 110MHz 5MHz 20MHz 16MHz 70MHz
Slew Rate (SR ) (V/µS) 1 9 20 12 25 55 500
Settling Time - - 0.8µS
to 0.0015%
1.5µS
to 0.01%
1.5µS
to 0.01%
0.55µS
to 0.01%
0.3µS
to 0.1%

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同名OPアンプのデータが複数存在し、値が一部違う事例まであり、あくまでも参考データという事に注意。
以下、一部項目の簡単な(妖しい)解説を記述する。

BIP,FET,(1),(2)
OPアンプ初段素子の種類。BIP(バイポーラ・トランジスタ)か、FET(表例の場合は、J-FET)を示す。
(1)はシングル(一回路)、(2)はデュアル(二回路)OPアンプを示す。

Input Offset Voltage(入力オフセット電圧 VOS )
無負荷状態で OPアンプ出力がコモンアース電位になるように、反転・非反転入力間に加えられた電圧。
反転・非反転両入力端子をコモンアースに接地した際の出力電圧を、開ループ利得で除算した値と等価。

Input Bias Current(入力バイアス電流 IB )
反転・非反転各入力端子の直流入力電流の平均。BIP では、nA(ナノ・アンペア)オーダーとやや大きい値。
FET では pA(ピコ・アンペア)オーダーと小さい値だが、BIP の場合、温度上昇で hfe の微増により IB が減少傾向なのに対し、 J-FET では温度上昇で増加し 4.5K の上昇毎に、およそ2倍の IB 値となる。

Open-Loop Gain(開ループ利得 AV )
開ループにおける差動利得。近年の OPアンプでは低周波領域で、100dB(10万倍)以上が普通。
単なる倍率ではなく、高域では位相遅れを伴ったベクトル値となる。(虚数での表現はここでは封印。)

OPA2604_OPEN-LOOP GAIN/PHASE

図のが、OPA2604の開ループ利得(AV : Open-Loop Gain)。
理想OPアンプと違い 300Hz付近を境に、-6dB/oct で減衰している。オクターブ(音楽用語でオクターブ上⇒周波数が2倍)毎に−6dB(ゲインが1/2に減衰)となる領域では、−90°と一定の位相遅れである。
このまま、AV =1(0dB)となる周波数まで一直線だと、余裕でユニティゲインOK(ボルテージフォロワ動作可)なアンプとなるのだが、残念ながらMHz(メガ・ヘルツ)辺りから次の位相変化が生じている。 内部位相補償で、少々ゴウインにユニティゲインを確保している?かに見える。

表例の中では新しい?部類の高級OPアンプ OPA627BP は、120dB(低域)とよりハイゲインとなり、20Hz付近を境に、-6dB/oct(位相遅れ −90°一定) が一直線に続き、 AV =1(0dB)となる 16MHz でも −105°の位相遅れである。
一方、広帯域OPアンプの老舗 LH0032 では、70dB(低域)と控えめな開ループ利得(Open-Loop Gain)となっているが、200KHz付近まで 70dB がキープされている。 10MHz 手前から次の位相変化が生じる為、 ユニティゲイン動作可とするには外部位相補償が必要となり、その際は 20KHz付近から減衰が始まる。

双方とも所定の条件内(極端な容量負荷等ない場合)での閉ループ利得(Closed-Loop Gain)の位相は安定しているが、我々自作派がディスクリートでオーディオアンプを組む場合には、後者よりの設定が妥当と思われる。 闇雲にハイゲインを求めず、必要なクローズドループゲインANF (帯域も含め)に応じて、ある程度のループゲイン(AV β)がキープできる様に、オープンループゲインAV を設定する事が重要となる。
こちらの図は大雑把なアンプ特性を知る上で結構重要だ。

Gain Band Width Product(利得帯域幅積 GBW )
FT (開ループ利得 AV =1(0dB)となる周波数。)と等価。』と解釈したいのだが、実際には、10kHz での開ループ利得(Open-Loop Gain)から算出する事が多い。
OPA2604での算出方法は不明だが、GBW =10kHz ×2000 (約66dB )=20MHz という値なら図も理解できる。 電圧帰還型アンプは、(GBW の制約から)クローズドループゲインを大きくする毎に、帯域(高域限界)の方が制限されてゆく宿命を持っている。

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Input Impedance(入力抵抗 RI (差動モード))
反転・非反転入力端子の一方をコモンアースに接地した際、他方の入力端子の入力抵抗(開ループ時)。
閉ループ時、『電圧帰還アンプ』の入力インピーダンスの値は、
反転アンプでは、RIF =RS +(RF / AV )と、ほぼ RS となる。
非反転アンプでは、RIF =RI ×(1AV β)+RF //RS と、ほぼ RI のループゲイン(AV β)倍という途方もない値になるのだが、 そのままではノイズ等に敏感に反応するので、一般に所定の入力抵抗を非反転入力端子に並列に配置する。従って、その入力インピーダンスは並列付加された外部入力抵抗に近似する。

Common-Mode Rejection Ratio(同相電圧除去比 CMRR )
反転・非反転入力端子双方に同じ入力電圧を加えた際、出力に現れる電圧比と差動利得との逆比。

Power Supply Rejection Ratio(電源電圧変動除去比 PSRR )
電源電圧変動があった際、出力電圧に現れる変動を入力換算した値の逆比。

Slew Rate(スルーレイト SR )
ステップ信号を入力して定格出力電圧を振らす際、単位時間当たりの出力電圧の最大変化量。 単位は、V/µSが良く使われる。あくまでも立ち上がり速度の表示であり、LH0032 が 500V を出力する事はない。

Settling Time(セトリングタイム ts )
ステップ信号を入力して、出力がある規定範囲に落ち着くまでの時間(当然、立ち上がり時間を含め、オーバーシュートやリンギングが収束するまでの時間を含める。)を表す。 マルチビットDACの階段状の電流出力や、ΔΣ型DAC等の高周波に大きいノイズが含まれる場合は、値が大きいと IVCで変換誤差が生じる。

AUDIO-CDレベルの 44.1kHz、8倍オーバーサンプリングの例を示すと、
セトリングタイムが変換レート Tr =1 /(44.1kHz ×8 ) =2.83µS を超える値の場合、正確な値に収束する前に次のデータが届いてしまうので半分以下の値が望ましい。 これでステップ応答の時間軸は良いのだが、ステップレベルの縦軸からみると16ビットでは、16 =65536165536 =0.0000152587・・・ =0.0015% の精度が必要となる。
Settling Time to 0.0015%
 での値が上記の条件を充たす必要がある。 表例では、AD797OPA627BP 等がクリアしているが、(測定条件に依存する部分が多々あるので)単純な比較は難しく、また、旧OPアンプのデータでは、Settling Time to 0.0015% での値を推測する事自体難しい。 OPA2604 は、LF356 の2倍以上のスルーレイトであるが、セトリングタイムは、ほぼ同じ値であることに注目。

必要なスルーレイトは、出力 2Vrms = 5.7Vpp の環境で、SR =×(44.1kHz ×8 )×5.7V =12.6 VµS となるが、実質の要求は少し甘くなり、最新OPアンプで問題になるケースは少ない。

Input Voltage Noise(入力換算雑音電圧密度 en )
信号源抵抗がゼロの際、アンプから発生する雑音を入力換算した雑音電圧。

en_freq

という表現では余りに判り難いので、先ずはノイズ(雑音)の基礎的な内容から始めてみる。この項目では、取りあえず外部からのノイズ(雑音)入力に関しては触れない事とする。
では、OPアンプ内部から発生するノイズ(雑音)と、入力換算したノイズ(雑音)には、どういった関係があるのだろうか?
簡単に表現すると『入力換算雑音』とは、あたかもノイズ(雑音)が入力端子で発生するかのように仮定して、出力されたノイズから逆算した値である。アンプ内部から発生するノイズが、どの部分でどれくらい発生するか特定するよりも、その方が取り扱い易いのだ。当然、入力換算したノイズは相応のゲインで増幅(ノイズゲイン倍)されて出力される。
表例での単位は nV/√Hz であるが、単位周波数辺りの雑音電圧密度(1kHz基準)に関して示しているだけであり、他の種類のノイズ(雑音)については、別途に考察する必要がある。

図のOPA2604データから電圧性ノイズの低周波領域に注目すると、-10dB/dec(-3dB/oct)で傾斜している部分がある。こちらを、ƒ ノイズ(Flicker Noize)領域と呼ぶ。また、より高域の変化のほとんどない部分を、ショットノイズ(Shot NoizeWhite Noize)領域と呼ぶ。
各帯域の雑音を実効値に換算して、二乗平均(Root-Sum-Squares 各値の二乗の和の平方根)したものが、電圧性総合ノイズとなるが、OPアンプではƒ ノイズ(Flicker Noize)よりもショットノイズ(Shot Noize、White Noize)が支配的になるので、簡略的には、入力換算雑音電圧密度(1kHz基準)から必要帯域幅で実効値変換することで実際の値に近似した値となる。

入力換算雑音電圧実効値 VN
 VN =11 nV/√Hz ×√{20 kHz} =(11 ×10 -9 V/√Hz )×√{20 ×10 3 Hz} =(1.1 ×10 -8 )×(1.414 ×10 2 )
 VN =1.56 ×10 -6 Vrms =1.56 µVrms
OPA260420kHz 帯域での実効値は上記になる。あくまでも入力換算された値なので、こちらをノイズゲイン倍した値が出力される。既に登場済の Input Offset Voltage(入力オフセット電圧 VOS )でも同様だ。

OPA2604の雑音特性

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では、ノイズゲインとはどういったシロモノだろうか?
非反転アンプの閉ループゲイン(Closed Loop Gain)は 1/β と近似できるが、冒頭で記述した通り、こちらが成り立つのはループゲイン(AV β)が十分に大きい帯域だけだ。
この帯域では、ノイズゲインも同じく 1/β(RS+ RF )/RS =1+ (RF /RS ) となる。同じく冒頭の記述から、
この帯域における反転アンプの閉ループゲイン(Closed Loop Gain)は、- RF /RS となるが、ノイズゲインの方は 1/β1+ (RF /RS ) と、非反転アンプと等しくなる。 ループゲイン(AV β)が十分に大きい帯域では、ノイズゲインが『』より小さくなる事は有り得ないのだ。

INVOP

図は、完全対称PRE?その弐冒頭で既に登場済だ。こちらを題材に『反転アンプとノイズゲイン』について考察してみる。 通常の IVC と違って、外付け電流型 1次LPFが繋がった状態の少々特殊例だが、初段のステップ型位相補正の RP を 430Ωに変更した以外は以前のまま( CP は 220pF)だ。
ここまで、まるで 1/β が、1+ (RF /RS ) 等の抵抗値だけで成り立っている様な表現になってしまっているが、モチロン、LPFのように意図的に積分コンデンサーを追加した場合や、反転入力に意図に反して寄生する容量等も含めた要素が 1/β に相当する。 図では非反転入力がコモンアースに直結しているが、こちらに電圧源を封入し、電流源の方は『0mA(未接続と同じ?)』として扱うとどうなるのだろう?

NOISE GAIN

相変わらず、実機より 10dB 近くオープンループゲインが小さいシミュレーションだが、非反転入力基準では、20kHz 以上でクローズドループゲインにピークが存在している。以前の反転アンプとしてのシミュレーションでは単純にLPFの特性を示していたのだが、こちらの値が本来のノイズゲインに近似する。 オープンループゲインの減衰具合が通常の -6dB/oct より大きくなっているのは、電流出力アンプの特徴(『RF とCF の並列接続+1次LPFも含めたRS 』もアンプの負荷となる為)である。

位相余裕のないI/VC

のシミュレーションが少々特殊ケースなので、より一般例を示そうと、RS =1MΩ(DACの出力インピーダンス)とした上で外付け電流型 1次LPFを外し、代わりに『DACの出力容量+反転入力に意図に反して寄生する容量』にあたる、CS を封入してシミュレーションを行ってみたが、あまりに平坦なデータなので割愛する。 図の様に CS を増やし、CF を10分の1にして不安定な状態にしてみる。

不安定状態の『I/VC』

前のシミュレーションと同じく、ケフィスさんのサイトを参考にして、クローズドループゲインは VO ÷VP とし、1/β は VO ÷VN としてシミュレーションした。 前シミュよりオープンループゲインが増えているが、こちらも電流出力アンプの特徴である(シミュでは負荷 RL =82kΩ付き)。
低域においては、クローズドループゲインは 0dB となり、RF =2.2kΩに対して、RS =1MΩとした為ほとんど『ボルテージフォロワ』として動作している。 当然、オープンループゲインとループゲインは重なっている。
問題は反転入力にブラ下がった CS であり、こちらとRF による時定数に応じてゲインが増加する。それを相殺する役目がCF なのだが、効果が働く周波数が高過ぎ、既に手遅れとなったままクローズドループゲインのピーク部分でオープンループゲインと交差している。 この状態では、いつ発振してもおかしくないだろう。

IVC に限らず反転入力にブラ下がったCS はアンプを不安定にする最有力候補だ。 K式DACでは、DAC電流出力とIVC 間を、大胆にもダイエイ20芯ケーブルで空中配線しているが、その意味では正解だ。
問題は、電流出力アンプの特徴『アンプの負荷で、開ループ利得(AV : Open-Loop Gain)が影響を受ける。』という事である。PHONO-EQ やパワーアンプでは逆に利点となっていた特性だが、DSC の設定を含め全体像をシッカリと把握する事が、安定な動作を得る唯一の方法である。 単純に IVC 使用時の『OPアンプのユニティゲインOK設定』と違い、次段の負荷を常に意識する事が重要となる。

なお、高速OPアンプでは、ユニティゲイン動作可とする為、外付位相補正が必要な場合が多く、その方法も機種によって違う為、各OPアンプデータシートを十分に把握する事も必要である。

また、『ボルテージフォロワ』動作が発振し易い事は結構知られているが、先ずは『ボルテージフォロワ』と等価になっている事に気付く事が重要になる。反転アンプの安定度を考察する為には、非反転アンプを意識した考察が必要になってくる。ついつい、反転アンプだから『ど〜のこ〜の』、非反転アンプだから『カレコレ』と考えがちであるが、当のOPアンプ(ディスクリートを含め)自体は、与えられた仕事を普段通り『粛々』と行うだけなのだ。

INV_VCA

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Input_Voltage_Noise&Current_Noise

『入力換算雑音』の話で、入力換算雑音電圧実効値 VN しか記述していなかったので続けてみる。
上記表には、入力バイアス電流ノイズ(Input Bias Current Noise)という項目があり、電流性ノイズが入力換算雑音電流密度として表示されている。単位は fA/√Hz なので、電圧性ノイズと同じように 20kHz 帯域での実効値を求めてみる。
 IN =6 fA/√Hz ×√{20 kHz} =(6 ×10 -15 A/√Hz )×√{20 ×10 3 Hz} =(6 ×10 -15 )×(1.414 ×10 2 )
 IN =8.5 ×10 -13 Arms =0.85 pArms
入力換算雑音電圧実効値 VN は、『反転入力』『非反転入力』のどちらか片方と考えれば良いが、入力換算雑音電流実効値 IN の方は『反転入力』『非反転入力』双方に存在する。

非反転アンプは入力抵抗RIN が非反転側 IN + に繋がる。電圧換算すると、VN (電流性)=IN + ×(RIN // r ) 
RIN // r は入力抵抗と、信号源の出力インピーダンスとの並列合成値)となり、ノイズゲインは1+ (RF /RS ) となる。 上図の IVC の例では、『非反転入力』がコモンアースに直結している為、IN + 側は無視する。

反転側 IN -  から電圧換算すると、VN (電流性)=IN - × RF となり、そのノイズゲインは 1 となる。
 VN (電流性)=(8.5 ×10 -13 Arms )×(1 ×10 3 Ω )=0.85 ×10 -9 Vrms =0.85 nVrms 。
 VN (電圧性)=1.56 ×10 -6 Vrms =1.56 µVrms に比べて電流性ノイズは微小レベルである。
各ノイズを総合すると、
 VNO =GN ×√ ((0.85 ×10 -9 Vrms ) 2 +(1.56 ×10 -6 Vrms ) 2 ) =GN ×(1.56 ×10 -6 Vrms ) で、二乗平均の値は入力換算雑音電圧実効値 VN (電圧性)とほぼ同じになる。 通常 IVC では RF =1kΩ以下、RS =100kΩ以上なので、ノイズゲインGN =1+ (RF /RS ) =1 と扱うと、出力ノイズは1.56 µVrms となる。

ここまで扱ってこなかった RF の熱雑音(Thermal Noise,Johnson Noize )についても含めてみる。
抵抗器の熱雑音は NR =√ {4kTBR} である。それぞれ、k :ボルツマン定数[1.38 ×10 -23 joules/°K ]、T :絶対温度[K ]、B :帯域幅[Hz ]、R :抵抗値[Ω ]を表す。 ここでの計算は簡略式を使用する。
 NR =0.13√ (R[kΩ]×B[kHz]) [µVrms ]。RF =1kΩの場合、抵抗熱雑音は0.58 µVrms になり、そのノイズゲインは 1 となる。 RS の方は、ノイズゲインがRF /RS と百分の一以下となるので省略。
総合ノイズは、
 VNO =√ ((1 ×0.85 ×10 -9 Vrms ) 2 +(1 ×1.56 ×10 -6 Vrms ) 2 +(1 ×0.58 ×10 -6 Vrms ) 2 ) 
 VNO =√ ((0.72 ×10 -18 ) +(2.43 ×10 -12 ) +(0.34 ×10 -12 )) =1.66 µVrms 。
1 ×]が各ノイズゲインにあたる。OPA2604 自体のノイズが1.56 µVrms であることを考えると、IVC はノイズの影響が少ない事が分かる。 このままでも、2 Vrms 信号基準で121.6dBS/NR(Signal to Noise ratio)が得られる。

ついでに帯域を 100kHz として計算すると、(共通項の√BW に注意。)
 VNO =√{100kHz}×√{ (11 nV/√Hz×(1+ RF /RS )) 2+ (6 fA/√Hz×RF ) 2+ 4kTRF + 4kTRS×(RF /RS ) 2}
 VNO =3.16×10 2 ×1.17×10 -8 =3.70×10 -6 =3.70 µVrms と増加し、S/NRは114.7dBになる。
この際のOPA2604 自体のノイズは3.48 µVrms であり、120dB前後のS/NRは、最新DACと低ノイズOPアンプを選択した IVC では、比較的簡単に達成できるようだ。

RS (DACの出力インピーダンス)が大きい方がノイズ面で有利であるのに、PCM1702(1704) では何故1kΩと低い出力インピーダンスなのだろうか?

簡略等価回路

DACの出力段は元々ユニポーラ動作をしており、この点は現在でも同じである。PCM1702(1704) のカレント・セグメント部分は吸い込み方向であり、0〜−2.4mA の範囲で動作する。これを、0mA 基準(±1.2mA)にシフトするのが BPO(Bipolar Offset) 回路である。 BPO 端子に繋がった1kΩが BPO(Bipolar Offset) 回路の出力インピーダンスと思われる。
上図はあくまでも簡略等価図であり、1kΩの他端が BPO-DC(Bipolar Offset De-Coupling) 端子に直接繋がる事はないが、PCM1702(1704) 電流出力が出力インピーダンスである一因と思われる。 より古いPCM 63P では、BPO 端子が IOUT 端子と独立している為、外部 BPO(Bipolar Offset) 回路使用で高出力インピーダンス化が可能だが(内部 BPO は 670Ω)、内部で接続されている PCM1702(1704) では、これが唯一の欠点となっている。

カレント・セグメント方式の音質的優位性は、現在の PCM1794 でも応用されている。PCM1794 は片電源で動作するが、データシートではマイナスの出力電流と表記されている。 構造上、吐き出し方向の電流出力となるのだが、IV 変換後は負の出力電圧になるので、そういう記述になっているのかもしれない。
ユニポーラ動作のままの電流出力ではあるが、逆相の出力もあるので、IV 変換後 DSC で相殺(差動入力)すれば、コモンアース基準(バイポーラ)の電圧出力になる。資料はないが、元々カレント・セグメント方式は差動出力に向いているようだ。
ただ、ユニポーラ動作のまま、比較的大きい電流が流れ込む(冒頭の記述通りOPアンプ入力に流れる訳ではないが) IVC では、負電源側の電流供給能力が問われる事になる。

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DSC

DSC (Differential to Single Converter)の表記は、TIBurr-Brown Products from Texas Instruments )のデータシートでは使われているが、一般的には『差動増幅器・差動アンプ(Differential amplifier)』等と呼ばれる。 回路の一部分を指して、『差動増幅回路(K式では初段、二段目の回路。)』と呼ぶ場合もあるが、ここでは『OPアンプ』等の動作仕様の一つとして扱う。

図より四つの抵抗で成り立っている事が分かるが、『R 1 =R 2 =RS 』、『R 3 =R 4 =RF 』とした場合は、
 VOUT =(RF / RS )×V 2 − (RF / RS )×V 1 =(RF / RS )×(V 2 − V 1 )が、出力される。
確かに二つの入力の差を増幅している事になり、差動出力が入力された場合2倍の出力となる。

主に、バランス伝送(当然、差動出力。)の受け側としての回路で、途中経路で混入したノイズ成分は同相になる事から、差動動作でノイズを相殺し信号のみを増幅するのが役目となっている。 しかし、『反転アンプ』と『非反転アンプ』の各弱点も含んでいる回路なので、少々考察してみる。

DSCの考察

MJ (2008/3)NO.196 の IVC/DSC を『OPアンプ』表記してみた。PAGE38〜39[図8、9]では、DSC への接続が逆相になっているが、カラー写真(PAGE28)と、MJ (2008/4)のPAGE46〜47[図16、17]を見る限り、実際には上図の接続と同じになっている。 IVC の定数は、TI の PCM1794A データシートの4.5 Vrms 信号基準例と同じ値だが、モノーラル動作を利用する為、各『反転入力』に本来右チャンネル用の出力(17、18)も接続されている。

電流出力の並列接続は何の問題も生じないが、無信号状態でも12.4mA がRF に流れ込み、A 点、C 点は-10.168V と大きく負側にシフトいている。また、『非反転入力』はコモンアース以外に、AGND3L(27)、AGND3R(16)にそれぞれ接続されているのが気になる。 ステレオ・モードの NO.206 では、左チャンネルの両 IVC は、AGND3L(27)、右チャンネルの両 IVC は、AGND3R(16)に接続されていて何の疑問もないのだが、実際の所どうなのだろう?
モノーラル・モードは本来、差動出力(バランスアウト)用の設定のようで、(データシート例では)各差動出力毎に IVC/DSC を奢っており、グラウンドの記述自体がない。

IVC 下側(ホット側)に最大値の20.2mA が流れる瞬間には、IVC 上側(コールド側)には4.6mA が流れ、A 点-3.772V 、C 点-16.564V になる。 逆に、IVC 上側(コールド側)に20.2mA が流れる瞬間は、A 点-16.564VC 点-3.772V となる。 ヴァーチャルショートが成り立つ場合、C 点-3.772V の際、D,B 点は-1.886V となり、B→A 間に(16.564V-1.886V)/2kΩ7.339mA が流れ、RF に流れる20.2mA との合計27.539mA を上側(コールド側)IVC が吸収しなければならない。

DSC の定数を、TI データシートと同値にすると、(16.564V-1.886V)/360Ω40.772mA 、合計は60.972mA となる。C 点-16.564V 、D 点-8.282V の場合は、(16.564V-8.282V)/360Ω23.006mA 、合計43.206mA と下側(ホット側)IVC は上側(コールド側)より楽な動作になる。

IVC の負荷がアンバランスなので仕方がないが、電流出力アンプでは、各IVC の開ループゲインまでアンバランスになるので、少しでもアンバランスを減らす為 2kΩ を採用しているようだ。
なお、TI のデータシートの4.5 Vrms 信号基準例では、FS(フルスケール)時10.1mA なので、OPアンプの負担は半分になり、一般的な電源電圧±15V でも動作はできる。

IVC の負荷を減らす為に次段の抵抗値を大きくした場合、抵抗器の熱雑音(Thermal Noise,Johnson Noize )はどうなるのだろう?S/NR(Signal to Noise ratio)の内、信号(Signal)の方は9.0 Vrms と大きい値となる。

Johnson Noise

図のVJN-R1 という表記を簡略して NR1 とすると、R1 の熱雑音は NR1 =√ {4kTBR1} となる。
前回の記述が結構煩雑になっているので、整理する為に各ノイズゲインを、もう一度おさらいしてみる。
NR1 は『反転入力』に注入され、ノイズゲインは R3 / R1 となる。(ノイズでは反転の意味合いはない。)
NR3 は、 IVC の項目で既出であり、そのノイズゲインは『1 』となる。
『非反転入力』に繋がった R2 とR4 の熱雑音は、 1/β1+ (R3 /R1 ) のノイズゲインとなるのだが、
NR2 とNR4 の並列合成値からノイズゲイン倍する方が手っ取り早い。
よって、抵抗熱雑音総合ノイズは、
 VNR =√{ (R3 / R1 ) 2 ×NR1 2 +(1 +R3 / R1 ) 2 ×(NR2 //NR4 ) 2 +1 ×NR3 2 } 
R1 =R2 =R3 =R4 の場合、
 VNR =√{ 2 ×NR 2 +2 ×(NR /2 ) 2 +1 ×NR 2 } =√{ 3 ×NR 2 }  となる。
NR =0.13√ (R[kΩ]×B[kHz]) から、R =2kΩの場合、抵抗熱雑音は1.84 µVrms [BW:100kHz] で、
 VNR =√{ 3 ×(1.84 µVrms) 2 } =3.19 µVrms と大きな値になるが、S/NRは129.0dBになる。
ただし、こちらは IVC/DSC を理想OPアンプで構成し他のノイズが存在しない場合の値だ。4.5 Vrms 信号基準では123.0dBとなり、出力が半分になると『6dBS/NRが悪化する仕組みとなる。

 PCM1794 クラスのダイナミックレンジを生かす為には、通常のアンプ動作では全く気にしない『抵抗熱雑音』が問題になる程シビアな設計が要求されるが、このレベルの実装は現状ではかなり難しく、実際問題としては、もっと低次元の、『ノイズを誘発しない電源回路の引き回し』、『ロジック回路の干渉を抑える』等の、遥かに高レベルであるノイズへの対策が重要と思われる。

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EL2030 SLC

上左は、電流帰還型OPアンプの一例。ここまでのでは BIP(バイポーラ・トランジスタ)か FET(例では、J-FET)の違いはあるが、初段は差動増幅回路であった。ところが、電流帰還型はバッファー回路の入力側が非反転入力、出力側が反転入力になっている。 反転入力のインピーダンスが低いところが、電圧帰還型との大きな違いである。 電圧帰還型の様にGBW 値によって、クローズドループゲイン設定(RF 、RS の比率)毎の帯域(高域限界)制限の変化はないが、RF 、RS の値自体がイロイロと制限される。
(参考 ⇒ http://ebyanmo.web.fc2.com/music/2002_08_16_opamp/index.html 残念ながらHPを閉鎖したようだ。

上右は、パイオニアの『スーパーリニア・サーキット』の概念図。こちらは、オールオーバーな負帰還を使用せずリニアな特性を得る為の回路だ。終段のコンプリエミフォロは無視して回路を追ってみる。

もし、Q1 とQ2 のVBE が等しければ、I2 = VI / RE 。
同じく、Q1' とQ2' のVBE が等しければ、I2' = -VI / RE 。
またカレントミラーにより、I2 = I5 I2' = I5' 。
VO = ( I5 - I5' ) * RL = 2 ( VI / RE ) * RL 。
ゲインは、VO / VI = 2 ( RL / RE )  と、抵抗値比のみで決まる。

VBE を揃える(I2 = I1 I2' = I1' )為にも、カレントミラーを利用しているところがミソだ。 なお、こちらは概念図であり、そのままでは動作しない。実際には、上側 RE は負側にシフトした電源に、下側 RE は正側にシフトした電源に繋がり、それぞれの電源はDCサーボも兼ねているようだ。

両回路共、初段?バッファーの電流変化をカレントミラー(ワイドラー型)で次段に受け渡している。

IVC BGA&CM

上記の影響かどうかは思い出せないが、初めてのCDP、YAMAHA (BB PCM 54HP DAC) を改造した際、I/VC 回路に採用したのが上一番左だ。K氏が、再生プリアンプ終段にコンプリエミフォロを使用していた頃の定数を使い、その出力にあたる部分を反転入力にしたものだ。当時は『ウィルソン型カレントミラー(NFCM)』を、全く理解していなかった為、A606+A798C959+C1583等の選択をしていた。三つのTのIが揃う事で理想的な動作ができる事を知らなかった訳だが、YAMAHA オリジナル方式の、BB PCM 54HP 内臓の専用IVC(OPアンプ?)使用状態よりは、ましだったように記憶している。

こちらの IVC も、 BPO(Bipolar Offset) 回路経由後のコモンアース基準(バイポーラ)の電流出力動作で成り立ち、 構造上吐き出し方向の電流出力となるユニポーラ動作の PCM1794 では上段の回路はハングアップしてしまう。で、下側回路だけを眺めてみると、近頃どこかで見た事がある。BGA&NFCM である。

この手の、オールオーバーな負帰還を使用しない回路に不安を感じる方は多いだろう。しかも、K氏からウィルソン型カレントミラー(NFCM)は、こちらの回路ではダメ出しを受けている。

そもそも、カレントミラーの考察はバッテリードライブの限られた電源を有効に使用する前提で進化ている。一番の問題は、送り出し側Tが十分な振幅をリニアに確保できるか?にかかっている。この時点ではウィルソン型カレントミラー(NFCM)が最も優れていた。しかし、BGA&CM では、送り出し側Tのコレクタがコモンアース電位固定となり、ミラー効果が発生せず、ミラー効果を助長する筈のエミッター抵抗が、純粋にカレントミラー誤差吸収の役目を担う。案外優れた回路かもしれない。

NO.219 Current Buffer

上図は、MJ (2012/4)NO.219 で登場のカレントバッファーである。Q1 がベース接地アンプとして動作し、ベースを D1 経由で接地している為、入力となるエミッター電位はコモンアースに近似する。
Q1 のコレクター出力を、D2,Q3 によるワイドラー型カレントミラーで出力に導き、基準電圧を D3 とした、Q2,Q4 による定電流負荷を各段に設けることで、バイポーラ動作となっている。

上図右側の P-type は、K氏の回路図とは一見違うようだが、『負電源が上方にあると、KEWは逆立ちせずにはいられない性格』の為こう表現しているだけで、中身は一緒である。こちらから、Q2,Q4 による定電流回路を取り外し、PCM1794 の『差動電流出力』を接続すると、BGA&CM となる。つまり、BGA&CM の成果を汎用として応用したのが、MJ (2012/4)NO.219 と思われる。

通常バッファーと呼ばれる物は『ハイインピーダンス入力、ローインピーダンス出力、入出力電圧は等しい。』と、なるのだが、カレントバッファーでは『ゼロに近いローインピーダンス入力、ハイインピーダンス出力、入出力電流は等しい。』となる。どちらも電力増幅を行っている訳だが、カレントバッファーを少々考察してみる。

事の始まりは、反転型パワーアンプの RS (1kΩ)をプリアンプ出力にブラ下げて、『電流伝送』を謳った事にある。確かに、電流モードでは接点による劣化が電圧モードより優れているが、伝送ラインの容量がパワーアンプの反転入力にブラ下がる状況は、パワーアンプ自体を不安定にする可能性が大きい。また、マルチアンプを構成する際にも、1kΩの出力インピーダンスでは、電流型フィルターへの自由度が著しく下がってしまう。

カレントバッファーを封入することで、RS (1kΩ)は純粋に V/I コンバーターとして機能し、電流型フィルターは現実的な質の良い値を選択できる。ただし、反転型パワーアンプのRF 可変によるゲイン調整は、一筋縄ではいかないと思われる。

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NO.220 Current DSC

MJ (2012/6)NO.220 から、PCM1794 の『差動電流出力(ユニポーラ)』をコモンアース基準(バイポーラ)のシングル電流出力に直接変換する上図の Current DSC が採用されている。BGA&CM がNO.219NO.220 と進化応用された流れである。

出力には、 Power IVC (パワーアンプの反転入力)、マルチアンプシステムの場合は前述のカレントバッファーを接続する。従って『 I OUT 』の電位はコモンアースに近似する。『 LEVEL 』は分流型アッテネーターに相当し、省略する場合は固定抵抗で分流する必要がある。

電流型 1次LPFを差動モードで使用している所が鋭いが、I =6.2 mA を基準に、i =±3.9 mA の最大振幅となり、低域では抵抗(270Ω)による電圧ロスも最大2.727 Vp となる為、npn ワイドラー型カレントミラーのRE 値が小さくなっている。 上側 pnp カレントミラーのRE 値は、制約の少ない分若干大きめである。

ワイドラー型カレントミラーのRE 値は、ある程度大きい方が精度が良くなるが、バッテリードライブの場合は致し方ないだろう。Power IVC を反転増幅パワーアンプと解釈すると、RS は(820Ω)(3300pF)(220Ω)で構成される低域では約 1kΩにあたる部分で、こちらの値が大きくなる程、上下ワイドラー型カレントミラーの合流点の振幅が大きくなり、カレントミラー自体の精度が悪くなる。『 LEVEL 』の値を記述していないが、小さいほど歪は減り、逆にノイズ面では不利になる。

電源電圧の見直し、素子の選択等が今後の課題と思われる。

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