私は自分の声に驚き、思わず辺りを見回したが、母は蜜柑の木の向こうで何も気づかない様子。
視線を戻すとウサギは相変わらず綺麗な眼で私を見上げている。
( なんなんだこいつ?! 今、喋ったのか?! )
「 あのですね・・ 驚かれるのも無理ないことですが、急いでいるので申し訳ありません 」
よくみるとそいつは眼にいっぱい涙をためているのだ。 私はそのことに気づくとたまらなく悲しくなって、
( 試しに and 仕方なく and マジっすか! )
「 どうしたの? 」と聞いてみた。
そいつは止まらない涙を小さな手でぬぐいながら
「 実は、家内が難産で危ないんです 」。
「 難産?!( ひぇ〜! )そりゃ大変だぁ・・  」( って、ホンマかい、夢だろ、夢、夢だよこれは )
私はどうしてもそいつに気付かれずに自分の顔をつねってみたかったが、あいにく右手は鍬、 左手はタオルで塞がり、おまけにそいつは私を見つめたまま、瞬きもせず泣いているのだ。
私は顔をつねるのは諦め、
「 それで、私に何かできることがあるの? 」と聞いてみた。
( おいおい、完全に会話が始まってるゾ〜 )
「 私と一緒に来てもらえますか? 」
「 はぁ?行くってどこへ? 」
私の問いにウサギは自分の足元を指差した。
「 えッ、この下?土の中?地面の下?( 何回言っても同じ意味でしょ・・  ) 」